19年ぶりに採択へ「石綿(アスベスト)の使用における安全に関する条約」(第162号)

カテゴリー:労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年9月

過去に石綿を製造したり、取り扱っていた事業所の従業員や周辺住民にアスベストによるとみられる健康被害が多発していることが複数の企業から公表され、アスベストによる健康被害について国民の不安が高まっている。日本政府は、アスベスト(石綿)による健康被害から労働者を保護するため、「石綿の使用における安全に関する条約」の批准登録を8月11日に行った。

同条約は、1986年にILO第72回総会で採択され、89年に発効した。8月1日現在、批准国数は27カ国である。日本に対して同条約が発効するのは批准登録後1年を経過した06年8月11日となる。この条約は、アスベストによる健康被害から労働者を保護するために、(1)アスベストの代替化促進と使用禁止、(2)特に危険性が高い、クロシドライト(青石綿)やその含有製品の使用禁止、(3)アスベスト吹付け作業の禁止、(4)アスベスト含有設備の取壊し時、建築物からの石綿除去時の適切な対策実施、(5)ばく露基準の設定、使用者による作業環境測定、(6)保護具の提供、(7)労働者に対する健康診断、情報提供、教育の実施――など必要な措置を各国政府や使用者に対し求めたものである。

日本政府は国内法未整備を理由に、国会上程を19年間見送ってきたが、2004年10月に労働安全衛生法を改正し、石綿製品の製造・使用を原則禁止したことによって批准の環境が整ったと説明している。実際、国内で青石綿が使用禁止になったのは95年。より広く流通しているクリソタイル(白石綿)が原則使用禁止となったのは2004年10月で、除去時の特別の配慮などを定めた「石綿障害予防規則」が施行されたのは05年7月1日である。なお、アメリカやEU諸国は1990年代前半までに使用禁止に踏み切っていた。

厚生労働大臣は8月8日、現在は例外的に使用を認めているアスベスト製品について、2008年までに全面使用禁止にする方針を明らかにした。国内では、アスベストの製造や使用は昨年までに原則禁止となったが、化学プラントの配管接合部分で液体漏れを防ぐためのシール材など、代替が難しいごく一部の製品に限り、使用が認められている。連合は、8月9日、環境省に対し、アスベスト(石綿)対策に関する11項目にわたる要請を行った。内容は、1)被害の拡大防止のため、建築物の解体現場や解体後の廃棄物(廃アスベスト)の飛散予防措置徹底、2)環境に配慮した廃棄のための情報公開、3)既に原則として禁止されているアスベストの製造・新規使用の早期全面禁止、安全な代替化の促進、4)実態把握の強化と国民の不安への対応――などである。日本政府は8月25日、アスベスト(石綿)による健康被害問題で、労災補償を受けずに死亡した従業員や、労災補償の対象外となる家族、工場周辺住民を救済するための新法を制定する方針を決定。2006年の次期通常国会への法案提出を目指している。

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