中国における女性労働の実情
―企業管理協会、ILO共同調査報告を中心に

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2006年8月

「世界の工場」として経済の急成長を実現する中国では、労働集約的産業での操業の半分を女性労働者が支えている。中国では、女性の就業に関する法律・法規がまだ充分に整備されているとはいえない中で、女性の就業環境は改善の兆しを見せ始めていることが、中国企業管理協会と国際労働機関(ILO)との共同調査でわかった。

この調査は、2004年9月から2005年12月にかけて、黒龍江省、折江省および上海の2省・一都市で、製造業、交通・運輸業、卸売・小売・飲食・サービス業、金融・保険業、教育・文化・放送・映画業を対象にアンケートと聞き取り調査として実施されたものである。

調査の結果、女性の就業分野は拡大し続けており、今回調査した3地区・5業種では女性従業員の平均比率は約6割で男性従業員より高く、女性はマネジメントの領域でも重要な役割を果たすようになっていることがわかった。

調査対象の97%の企業では、各担当業務の性質に応じて、男女それぞれ従業員を採用しており、女性差別はかなり解消されているたとえば、賃金の決定要素は、実績86%、職務83%、業務経験80%、学歴75%となっており、男女の性差はあまり影響されない。女性企業を積極的に採用する企業の多くは、女性は仕事が細やかで責任感が強く、賃金待遇に対する要求も高くないとその理由を説明している。建設業などでは女性の採用は少ない一方、アパレル産業、衣料品加工業、小売業などでは大量に女性を採用している。

ところで、中国では、現場労働者の8割は女性労働者であるが、現場労働者の労働条件は依然問題が多い。特に臨時雇いの場合には、企業との労働契約の締結率が低い。そういった中で、現場女性労働者の収入水準や業務の位置づけも低いという現状は解消されていない。ちなみに今回調査の結果によると、1カ月の賃金は、上海1040元、折江省747元、黒龍江省580元である。これらはいずれも2004年の最低賃金(上海635元、折江省520元、黒竜江省390元、)を上回っているが、各地域の都市住民の一人当たり月間可処分収入(上海市1400元、折江省1275元、黒竜江省623元)に比較するとかなり低い水準である。

今回調査の企業からの聞き取りでは、経営者は「労働法」「女性権益保護法」、「女性従業員の労働保護規定」を理解しているが、「女性従業員が避けるべき労働の範囲に関する規定」や「女性従業員の保険業務規定」に関する理解はあまり進んでいないことも明らかとなった。

中国企業において、経営者は、人事管理面の実績に基づく評価を重視する反面、労働関係管理に関しては関心が薄く、法令順守の点にも問題が多いことが今回調査では指摘されている。

そういった中、今年7月、遼寧省労働社会保障部、総工会、企業連合会は、「女性従業員の特殊権益と集団契約に関する暫定法」を公布した。この法規は、女性就労者の権益の範囲と内容、法的効力と実施主体を明確にし、女子従業員特殊権益に関する集団協約の内容、協議代表者の権利と義務、協議の手続、契約の締結、審査および紛争処理等について詳細を定めたものである。

遼寧省では、女性現場労働者の就労に関する集団契約の締結率を少なくとも25%増加させること、すべての企業が女性就労者の権益保護を重視するよう経営者の意識を改善させていくことを目標としている。

参考資料

  • 経営側海外委託調査員レポート7月号
  • 遼寧省総工会ウェッブページ

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