解決しない不法滞在就労問題
―外国人労働者の違法雇用に最高額の罰金

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年7月

台湾における不法滞在外国人労働者の急増を受け、外国人労働者を違法に雇用した使用者に対して、75万NTドル(2万3070米ドル)の最高罰金額を科すことを、行政院労工委員会(CLA)は4月21日に発表した。

さらに、外国人労働者の違法な就職を斡旋した人材仲介業者にも、今後50万NTドル(1万5380米ドル)の最高罰金を科すとCLAは強調している。

CLAによると、6カ月以上台湾に不法滞在している「行方不明」外国人労働者が当局に拘束された場合、不法滞在の外国人労働者に対しても15万NTドル(4615米ドル)の最高罰金を科すことを決めた。CLAでは、違法外国人労働者に対して、警察に自首するよう勧めるとともに、不法就労では、法律や健康保険による保護が受けられないために、労働者は常に危険にさらされていること、雇用者やブローカーに搾取される場合が多いことから不法就労にはメリットがないことなどをマスコミを通じて指摘している。

CLAの雇用・職業訓練局(BEVT)は、不法滞在外国人労働者が自首した場合には、厳しい処罰は避けられ、できるだけ速やかに帰国できるよう、母国の台湾駐在交易事務所が支援すると強調している。

BEVTは、不法滞在外国人労働者に対して、病気にかかった後で道路上に放置されていた不法滞在外国人の例を挙げ、台湾でお金を稼ぐことよりも平和で安全な生活を第一に考えるよう呼びかけている。

台湾で違法に就労している外国人労働者に対しては、今後、罰金刑と本国送還を強制するのみではなく再入国も禁止することを決めている。

ただし、BEVTは、外国人労働者が、使用者の虐待や搾取のために「失踪」した場合には、取り扱いに際してこの点を考慮し、本国への送還はみあわせるとともに、台湾で働く権利を保障すると強調している。CLAでは、現在までに、支援を求める外国人労働者のための無料ホットラインを開設している。

内政部警政署(警察庁:NPA)によれば、2月現在での台湾の不法滞在外国人労働者数は、1733人と過去最高となり、合計2万3574人である。NPA高官は、不法滞在外国人労働者は毎月平均500人~600人のペースで増加していると述べている。この数字から不法滞在で就労する外国人労働者の問題が極めて深刻であることが伺える。これは、また不法滞在、不法就労の問題だけではなく、台湾社会の治安上の問題でもある。

NPAでは、違法外国人労働者の多くは、不法就労のために雇用者に搾取されており、その怒りが噴出した場合、治安を乱す行動をとる可能性が高いと指摘している。

他方、就業サービス法第63条は、「いかなる者も、就労のために違法に外国人を滞在させてはならない」という規定に違反した者、「労働許可を持たない外国人、労働許可の期限が切れた外国人、又は他の雇用者に違法に雇用された経歴のある外国人を雇用した雇用者」、及び「他の雇用者のために就労する外国人を雇用した雇用者」は、初回であれば、15万NTドル(4615米ドル)以上、75万NTドル(2万3070米ドル)以下の罰金に処すとしている。さらに、同法第64条は、「いかなる者も、違法に外国人を就労のため他者に仲介してはならない」という規定に違反した場合には、初回であれば、10万NTドル(3076米ドル)以上、50万NTドル(1万5380米ドル)以下の罰金を科すると規定している。

実際のところ、不法滞在外国人労働者の雇用に対する15万NTドル~75万NTドルの上記罰金額は、地方政府が状況に応じて決定している。そのため、同法に違反した使用者の多くに対して、地方政府が科す罰金は最低限度の15万NTドルに過ぎない。

CLAが不法滞在外国人労働者の雇用に対する罰金の引上げを決定したもうひとつの理由は、不法滞在外国人労働者が治安悪化の一因と考えられるなか、蘇貞昌行政院長(首相)が半年以内に治安を改善すると約束した公約を実現するためでもある。

4月21日以降、罰金が引き上げられているが、5年以内に2回違反した場合には、就業サービス法63条の規定は、3年の懲役、又は120万NTドル(3万6900米ドル)の罰金を科すことを定めている。

現在のところ、不法滞在外国人労働者の大半は、ベトナム、フィリピン、タイ出身者である。CLAの統計によれば、ベトナム、フィリピン、タイからの不法就労者数は、それぞれ、1万人、3000人、2000人である。CLAでは、不法就労外国人労働者が搾取や虐待を受けている場合、失踪するのではなく、CLAに申し立てるべきだと注意を促している。

また、内政部(MOI)は、台湾に現在滞在する33万人以上の移民労働者の約7%は、「失踪者」に分類され、不法外国人労働者であるとみなしている。違法外国人労働者によって生ずる治安問題に対処するため、NPAは、4月8日から一連のキャンペーンを実施し、違法外国人労働者を摘発している。MOIも、4月19日までに1929人の不法外国人労働者を発見したと発表している。

不法就労外国人労働者の摘発通報への報奨金を増額

CLAは不法就労外国人対策として、不法滞在労働者の逮捕につながる情報に対する報奨金を3000NTドル(94.22米ドル)増額することを決定した。4月24日以降、報奨金は2000NTドル(60.9米ドル)から、5000NTドル(157.04米ドル)に引き上げられている。BEVTによれば、報奨金引上げの決定は、不法就労外国人の通報を促進することを目的としている。この報奨金増額に加え、CLAは4月20日以降、不法就労外国人を雇用、またはその雇用を手配した者に対する罰金を以前より大幅に引き上げることを既に発表している。BETAでは、政府としては不法就労外国人に対して、自ら出頭して処分に服するよう促していると述べた。また、BETAでは不法就労外国人が雇用者の搾取や虐待の対象となることが多く、また、法の保護や健康保険の対象とならないことから、極めて不安定な状況に置かれている点を指摘し、政府としては不法就労外国人の可能な限り速やかな帰国に向けて最善の努力を払うと強調している。

政府は、不法就労外国人を発見した際に違法状態にある原因が悪質な使用者による虐待である場合でも直ちに本国に送還することを表明している。

不法就労外国人をめぐる一連の流れの中で、労働人権協会は、5月上旬に抗議活動を開始し、政府に対して虐待を受けた不法就労外国人への寛大な措置と本国送還の回避を要請している。これに対して、BEVTは、現行法で労工委員会に認められるのは、虐待を受けた不法就労外国人が逸失利益の回復を試みる場合にこれを支援し、虐待を行ったものを処罰することのみだとしている。不法就労外国人問題は自国民労働者、合法外国人労働者の雇用機会への悪影響ばかりでなく、治安や税収入減など政府の歳入にも悪影響を及ぼしていると述べている。

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