労使がワンストップサービス化開始に合意
―失業者の再就職支援強化をめざす

カテゴリー:雇用・失業問題職業相談・職業情報・職業適性

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2006年6月

首相府の発表によると、2006年5月5日、失業者の再就職活動を支援する職業安定所(ANPE)(注1)と、失業保険制度の運営を行う全国商工業雇用連合(UNEDIC)(注2)は、諸手続きと窓口の一本化、いわゆる「ワンストップサービス化」に関する協定に調印した。同協定は、2008年までに「雇用に関する真の公共サービスを段階的に実施する」ことを盛り込んだ社会統合計画法(2005年1月18日公布)の一環をなすもの。なお、同協定は、ANPEと UNEDICの業務内容を変更するものではない。

フランスの失業保険制度は根拠となる法令がなく、労使の代表(注3)によって定められた協約を政府が承認するという協約制度がとられている。これらが全国レベルで全職域に共通の合意を形成し、その合意を政府が承認する。保険料は被用者と雇用主の双方が拠出し、制度の運営はUNEDICとその地方機関である商工業雇用協会(ASSEDIC)によって行われる。

高失業率問題が深刻化するフランスでは、失業者の再就職促進に力を注いできており、その具体策として失業保険給付と再就職活動の一体化を目指した「雇用復帰支援計画(PARE)」を2001年より実施している。失業者が、失業保険給付を受けるためには、PAREに同意・署名することが要件。同計画に参加すると、失業保険を受給しながら、失業者一人ひとりに個別行動計画(PAP)が作成され、ANPEとの緊密な連絡のもと、個人の状況に合わせた再就職の支援や職業訓練が実施される。

このように、現行制度のもとでは、失業者が失業保険手当を受給するには、まずANPEで求職者登録をしたうえで、給付機関であるASSEDICに出向かなくてはならない。しかし、ASSEDICはANPEとは別の場所にあることがほとんどで、再就職活動を少しでも早く開始したい失業者にとっては大きな負担となっていた。こうした状況の改善を目的に、ANPEとUNEDICは、ワンストップサービス化に合意。段階的に実施し、2006年末までに、地域圏ごとに最低1つの共通窓口を設けることを目指す(注4)。

社会統合計画推進の指揮をとるボルロー社会統合相は、「市場が変化する中、この協定により、求職者の情報・受け入れ・支援を行う機関が、細分化された縦割り行政的な現在のシステムに取って代わることになる」と述べ、同協定が、失業者個々人に適した再就職計画の支援をさらに強化するものであることを主張した。

一方、労組は、同協定が失業者に対する公共サービスの改善につながる可能性をもつとしながらも(注5)、個々人の能力等を無視したポストへの就職を強いられたり、失業認定審査の強化により求職者登録から抹消され失業保険の給付が受けられなくなる――という事態への警戒心をあらわにしている。

フランスの失業保険制度は、1958年12月31日の労使間合意によって生まれた。他の欧州各国にかなり遅れてのことである(イギリス1911年、ドイツ1927年、スウェーデン1934年)。いわゆる社会保障制度ではなく、労働協約として位置付けられている失業保険制度は、法的には完全な自治組織として運営されてきた。このように失業保険制度が社会保障システムのなかに含まれてこなかったことは、フランスの社会保障システムの最大の特徴であるといわれる(注6)。

関連情報