GMとデルファイ、早期退職勧奨制度を導入

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年5月

UAW(全米自動車労組)は3月22日、アメリカの自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)と大手自動車部品メーカーのデルファイ(注1)との間で、時間給労働者(ブルーカラー)の早期退職勧奨制度の導入について合意に達した。両社合計で12万6000人(注2)に上るUAWの組合員が制度の適用対象となる。ある労使関係の専門家は、今回の決定について、経営不振に陥っているGMの財務改善につながるであろうが、消費者にアピールするような魅力ある車を開発できなければ、抜本的な解決にはならないと指摘している。

早期退職勧奨制度の概要

同制度に関する合意内容の概略は、以下の通り。

  1. 勤続30年以上の場合、3万5000万ドルの退職一時金が支給される。退職後は、満額の年金と医療保険等が保障される。
  2. 勤続27年以上30年未満の場合、勤続30年目で退職することを条件に、それまでの間、通常の賃金に加え、勤続年数に応じて毎月2700~2900ドルが支給される。退職後は、満額の年金と医療保険等が保障される。
  3. 50歳以上で勤続10年以上の場合、互恵プログラム(MSR)(注3)により、満額の年金受給権を得る。ただし退職一時金はなし。
  4. GMの従業員に限り、勤続10年以上の場合、14万ドルの退職一時金、勤続10年未満の場合、7万ドルの退職一時金を受け取る。ただし、いずれの場合も退職後は年金や医療保険等の権利が与えられない。
  5. デルファイに所属するGMの元従業員を2007年9月までに5000人を上限としてGMに受け入れる(注4)。

08年までに3万人の削減をめざす

GMは2005年、経営再建のためのリストラ策の一環として、2008年までに3万人の時間給労働者の人員削減や、北米における12の工場の閉鎖等を行うと発表している。GMの広報担当者は、早期退職勧奨制度は3万人という目標値達成に向けた重要な一歩となる、と述べている。退職者の目標数は公表されていないが、デルファイの従業員分のコストも含め、制度実施の費用はGMが負担することとなっており、同社にとって最大で20億ドルのコスト増になると見られている。それでも、GMは、ジョブ・バンク制度(注5)により、自宅待機中のUAW組合員(現在7500人)に対し、他の製造業に比べ高水準の賃金(注6)を支払っており、現在、合計で週あたり9400万ドルにのぼる費用負担を余儀なくされている。本制度の導入で従業員数が削減できれば、GMはトータルで見て財務改善効果があると見込んでいる。

労使の緊張が高まるデルファイ

一方、デルファイは4月末を回答期限として、UAWに対し、大幅な賃金削減案を提示している。同社は2005年10月に米国連邦破産法第11章の適用を連邦破産裁判所に申請し、現在経営再建の途上にある。2006年3月31日には、現行の労働協約の無効を破産裁判所に申し立てており、無効の裁決が出れば経営側は現行の労働協約を破棄できる。こうした事態になれば、組合はストライキも辞さないとの構えを示し、労使の緊張が高まっている。ストライキが実行されれば部品調達の約2割をデルファイに依存するGMだけでなく、トヨタなど日本の自動車メーカーも大きな打撃を受けることは必至と見られる。

参考

  • 委託調査員レポート、3月23日付デイリーレーバーレポート、3月23日、28日付ニューヨークタイムス、4月15日付ワシントンポスト

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