農業部門で外国人労働者受入れを検討
農業部門での外国人労働者受入れの背景
台湾では近年、ハイテク分野やサービス産業の急成長など産業構造の変化、収入の増加教育水準の向上、職業観の変化を背景として労働市場における労働力不足が顕著になっている。そして、台湾では現在、約30万人の外国人の製造工、建設労働者、ホーム・ヘルパー、介護者、さらに漁船乗組員が働いている。
ところで、台湾において農業は、現在経済構造の3%以下にまで縮小しているが、農村地域では約72万人の農業労働力の確保が難しい状況に直面している。そこで、行政院農業委員会(COA)は最近、台湾は外国人労働力を国内農業部門の労働力として移入する必要があると発表した。
他方、行政院労工委員会(CLA)の李応元委員長は、立法院の労働関係の委員会の会合で、COAの上記計画に疑問を呈した立法委員の質問に答えて、地方の農業者の雇用機会は、CLAの見地からして、1月12日の立法院の会期終了前までの数日間における最重要懸案事項であると述べている。
地方メディアの報道によると、李氏は割当管理制度の中の国内労働市場の状況に基づき、台湾の農業部門に移民労働者を迎え入れるという可能性について、COAはなお調査中であると述べている。
CLAは、地方の農村における労働力不足の改善に役立てるために外国人労働者を移入するというCOAの提案に対して台湾労働者の権利と利益に影響の及ぶことがあってはならないという態度を固めている。
外国人労働者受入れ枠拡大は慎重に検討
立法委員会の会合では、一部の立法委員はCLAが独自の割当制限にいかにしてうまく対処できるかという点に大きな疑問を呈している。なぜならば、台湾ではCLAが策定した長期の外国人労働者政策の総管理基準である30万人を超える約32万人の外国人労働者がすでにいるというのに、国内労働市場を外国人労働者向けに広く開放すると決定しているからである。
2005年11月にCLAは、新たに2006年1月から6年間にわたる3D (Dangerous (危険)、Dirty (汚い)、Difficult (きつい))もしくは3K (危険、汚い、苦労)と言われる特定の製造業に最大2万人の外国人労働者の移入を認めると決定している。台湾における外国人労働者の総数は2006年には5000人から1万人は増えるとCLAは推計している。
2006年1月から外国人介護労働者管理に関する改正政策が実施されるが、台湾の家庭では、病気もしくは年老いた家族に24時間の看護が必要であると証明され、国内の介護労働者では間に合わない場合に限り、外国人介護労働者を雇うことができる。さらに、患者の傷害の程度を測るバーテル指数(Barthel Index)(注1)が外国人介護者を雇用する必要があるかどうかを決定する基準として使用されるが、主には、外国人介護者を雇用しようとする家庭は、24時間介護が必要であることを証明するために病院が査定した家族成員がいなくてはならない。
2005年8月の高雄でおきたタイ人労働者の暴動以来、政府と社会、さらに外国人労働者自身でさえも、外個人労働者の管理関係の政策と戦略に多大な注意を向けている。この事件をきっかけに、今後、外国人労働者のいくつかの新しい政策と戦略が策定されるものと予想されるが、さらに時代遅れとなったいくつかの管理手法はCLAの新しい指導方針の下で調整ないし廃止されるものと思われる。
台湾のは外国人労働者政策は、これまで以上に融通性のあるものにかわりつつある。
農業部門での外国人労働者受入れの見込み
このような状況を背景に、数年前に外国人漁船乗組員の移入が可能となったように、農業労働者の移入も、実現される可能性は高い。
農業部門での外国人労働者の受入れが実現するば、台湾では外国人農業者の総数はあきらかに増大し、外国人労働者の管理もさらに複雑になることが予想される。
政府機關の雇用・職業訓練局(BEVT)は、ブルーカラーとホワイトカラーの両方の外国人労働者の労働許可に責任を負うものであることから、外国人労働者の管理または保護の面で従来から次のような基本原則を提示している。
- 基本的な権利:
平等と公正。これには、外国人労働者の所得のような正当な権利をいかなる方法によっても奪ってはならないという意味がある。 - 職業上の権利:
全国一律の処遇。これは、台湾の外国人労働者が皆、労働基準法、雇用保険法、従業員厚生保険法などの関係する法律の保護の下にあることを意味する。 - 生活上の諸権利:
普遍的な原則。これには、外国人労働者が地域社会について一層よく理解できるように助けることと、外国人自身が生活している台湾に適応できるように支援する機構を提供するという意味がある。
農業労働者の台湾への移入に関する事例はなお評価段階であり、台湾中部の農業者団体は外国人農業労働者の受入れという考えには強く反対しており、これが当然の対応策であるかどうかについては関係政府機関が真剣に検討すべきであると主張しているとメディアが報じていることもあり、今後の動向が注目される。
注
- 日常生活動作および移動動作 について、「できる」「できない」を点数化し合計した日常活動指数。
2006年3月 台湾の記事一覧
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関連情報
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