激変する企業の年金制度

カテゴリー:高齢者雇用労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年2月

年金改革に伴う規制の導入を目前にして、確定給付型の企業年金制度である「最終給与比例制度(ファイナルサラリー年金)」を廃止する企業が相次いでいる。

ファイナルサラリー年金は、最終給与と勤続年数によって給付額が決定される確定給付型の年金であり、これまで広く普及してきた。しかし2001年以降の株式市場の低迷を契機に、同制度を見直す企業が増えてきた。この動きをさらに加速させたのが一連の年金制度改革(注1)である。

2006年4月以降、企業が年金に関する大幅な条件変更を行う際、従業員および労組に対し2カ月前に通告することを義務付ける制度が導入される。ファイナルサラリー年金から確定拠出型年金へ移行した場合、給付額が大きく減少するため従業員からの反発を受けやすい。一方、株式資本に対して年金の資金不足が大きく膨らんでいる企業にとって、ファイナルサラリー年金の継続は大きな負担になる。このため、現在多数の企業が駆け込み的に年金制度を変更しようとしている。

企業年金に関する労使紛争の増加

マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング社によれば、2005年現在、株式市場が堅調であるにもかかわらず、FTSE350社(注2)の年金不足額は前年費25%増の930億ポンドに達しており、株式市場の回復では年金財源の不足を穴埋めすることができなくなっているという。

全国年金基金連合会(NAPF)のクリスティン・ファーニッシュ会長が「確定給付型を採用する民間企業は5年以内になくなる可能性がある」と述べるなど、企業年金の確定拠出化が今後さらに進むとみられている。(注3)

FTSE 100企業にランキングされているレントキル・イニシャル社も、2005年に入ってファイナルサラリー年金の中止を発表した企業のひとつである。同社が4年にわたるコントリビューション・ホリデー(確定給付型企業年金において、運用成績の向上により積み立て超過が生じた場合、超過額に応じて掛け金を減額または停止する制度)を取っていたことが従業員からの反発を招いており、今後労使対立に発展する懸念も高まっている。

レントキル・イニシャル社の例に見られるように、年金に関する労使紛争は2002年以降、確実に増加しており、英国労働組合会議(TUC)ブレンダン・バーバー書記長もファイナルサラリー年金の中止や退職金削減といった動きには強硬に反対する意向を示している。しかし、年金をめぐる労使紛争の結果はまちまちである。2003年にアミカスが実施したストライキでは、ロールスロイス社からファイナルサラリー年金の継続を勝ち取った。また輸送一般労組(T&G)のストライキを受けてブリティッシュ・ペトロリアム社は、提案していた確定拠出型年金を断念、ファイナルサラリー年金制度で合意した。

一方、2005年12月にガス・電力大手であるセントリカの子会社ブリティッシュ・ガス社における労使紛争の際には全国都市一般労組(GMB)を加えた交渉の末、ストライキは回避されたものの、新入社員を対象としたファイナルサラリー年金の中止措置自体の撤回には到らなかった。

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