WTO加盟で迫られる国内産業の再編

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年11月

ベトナムはドイモイ政策 の開始以降、海外直接投資(FDI)をけん引役として、年平均7%という順調な経済成長を続けてきた。しかし自国産業に目を向けると、縫製、製靴といった労働集約型の産業が発展しているに過ぎず、その多くがマネジメント力や労働技能水準に問題がある中小・零細企業によって営まれているのが現状だ。米ブルームバーグ社が「ベトナム縫製会社の半数がWTO 加盟2年後に倒産する可能性がある」と予測するなど今後、ベトナム企業が国際競争にさらされ、相当な影響を受けるのは確実とみられている。

WTO加盟後に数年内に発展するとみられている主な分野は、縫製、製靴といった労働集約型の工業、建設業、運輸、サービス業など。また、サービス業のうち、実際に雇用が増えるとみられているのは、個人営業かつ零細な食堂、小売業、修理業、配達業、家事手伝い業──などの業種が多いとみられている。

今後、国内企業の国際競争力向上に向けて、政府は国営企業改革、民間企業育成を柱とする国内企業の再編を迫られており、競争力を持つ産業に合致した労働力の育成を内容とするアクション・プランの策定が予定されている。

所有形態別に見たベトナム企業の状況

ベトナムの企業を所有形態別に見てみると(1)国営企業(2)非国営企業 (3)外資企業の3つに区分することができる。

  1. 国営企業

    社会主義体制下における経済主体であった国営企業は、ずさんな経営管理、老朽化した設備、余剰人員などの問題を抱え、収益性の上でも問題にも関わらず、ドイモイ政策(注1)開始後も長期にわたって政府の保護を受けていた。

    2000年に入ると、政府は国営企業の民営化を一層促進する方向に政策転換し、国営企業の株式会社化を進めている。しかし株式会社化されたビナミルクなど、高い収益性を有する国営企業はごくわずかである。

  2. 非国営企業(民間企業、自営業を含む)

    国営企業に対する優遇と相反し、非国営企業に対する規制は厳しかった。非国営企業に対しては許認可が厳しいなどの理由で、企業数は増えなかった。その後、2000年企業法施行に伴う、非国営企業に対する大幅な規制緩和が行われた結果、1年で14000社の企業が新設されるなど、民間企業の数が激増した。その一方で非国営企業の多くが小規模経営、とりわけ近隣地域をビジネス圏とする零細な店舗・工房・サービス業に留まっている。

  3. 外資企業

    1990年以降、海外投資の増加に伴い、企業数が増加しており、数千人規模の工場設立ラッシュが起こっている。ベトナム全土に約120カ所ある工業団地と輸出加工区で働く労働者のうち、70%が農村部からの流入であり、また、60%が女性である(注2)

    2006年2月には最低賃金の引き上げを発端とする大規模な山猫ストが発生するなど、違法なストライキが多発している。職業訓練を受けた労働者には法定最低賃金プラス7%の支給が義務付けられているにも関わらず、初任給を最低賃金に設定するなど外資企業で労働条件に関する政策・法令が正しく適用されていないことも労使紛争の原因となっている。

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