フレキシキュリティに関する非公式の政労使三者会合

カテゴリー:労働法・働くルール労使関係

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  • 国別労働トピック:2006年11月

2006年10月20日、フィンランドのラーティで非公式の加盟国代表会合が開催され、それに伴い、EUの政労使によるソーシャル・サミットが開催された。この会合には、フィンランドの首相、労働・社会保障担当の大臣、欧州委員会委員長、雇用・社会問題・機会均等総局コミッショナーらや、ソーシャルパートナーとして、欧州労連(ETUC)の会長や事務局長、欧州産業経営者連盟(UNICE)の会長も出席した。また、次年度の2つのEU議長国からドイツの副首相やポルトガルの首相も参加した。テーマは「フレキシキュリティ(注1)と今後の欧州労働市場」で、その主旨は欧州に良質の仕事を増やすためにフレキシキュリティを通じた変化を引き起こす必要があるというものであった。

欧州はグローバル化に対応した競争力の強化と人口構成の急激な変化への対応という2つの課題に直面している。前者は、欧州より高い経済成長率を達成している中国やアメリカを意識したものであり、後者は高齢化の進展や人口構成の変化を意識したものである。2つの課題を踏まえると、リスボン戦略が掲げる目標を達成するためにはいくつかの変革が必要不可欠である。欧州域内の仕事を増やして、就業率を上昇させ、生産性を向上させて、競争力を強化することが求められている。そのためには知識とイノベーションが鍵となるという議論がなされている。広範なイノベーション政策は、フレキシキュリティの議論と密接に関連する。というのは、知識とイノベーションを基調とする経済を構築するためには、労働市場の機能や適応性と、仕事の質や企業の競争力などが重要であるからだ。

フレキシキュリティに関する共通理念の確立についての議論は、2006年3月の欧州理事会に、欧州委員会、加盟国、ソーシャルパートナーが招かれた際にも行われている。現段階では、フレキシキュリティに関する共通の認識は確立しておらず、定義の明確化について話し合われた。ラーティでのサミットはフレキシキュリティについて議論する初めてのハイレベルの会合となった。

労働市場や労働関係、労働組織(work organization)の柔軟化に関係すると同時に、雇用の保障や社会保障とも関連する議論である。1つの仕事から他の仕事へ、転職や再就職に関するフレキシビリティとセキュリティのバランスをどのようにとるのか、職業生活の質の向上と労働市場の効率性の両立、職業生活、教育、社会保護システムについて労使が求めるシナジー効果を生み出す方法について議論された。

参考

  • EU議長国(フィンランド)ウェブサイト

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