日比経済連携協定正式合意
―看護師・介護士の受け入れは2年間で1000人

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2006年10月

2006年9月9日、アジア欧州会議でフィンランドを訪れたアロヨ大統領と小泉首相(当時)は、日比経済連携協定(EPA)に署名。二国間の貿易と投資をさらに開放するものとして期待されていた同協定は、2004年2月の初交渉から2年7カ月を経て、ようやく正式合意に至った。2004年11月末に「大筋合意」に達しながらも、主に「人の移動」に関する項目の交渉のため、正式合意まで1年10カ月の時間を要したことになる。看護師と介護士の受け入れで労働市場の開放を求めるフィリピンに対し、日本側は当初「200人程度」という人数枠を示していたが、最終的に「2年間で1000人(看護師400人、介護士600人)の受け入れ」ということで合意した。

日本での就労を希望するフィリピン人看護師・介護士は、日本語を流暢に話せる場合を除き、来日後、6カ月間の日本語研修を経て、日本の病院や介護施設などで働きながら看護技術に関するトレーニングを受ける。看護師は3年、介護士は4年の期限内に日本の国家資格に合格できなければ、フィリピンへ帰国することになる。ただし、国家試験に合格すれば、在留資格の更新を繰り返すことで、希望する限り日本で働き続けることができる。受け入れプログラムは2007年4月にもスタートする見通しとされるが、フィリピン国内ではあたかも日本ですぐに働くことができるように謳う斡旋業者がでてきており、労働雇用省(DOLE)や海外雇用庁(POEA)では、こうした違法な斡旋業者に注意するよう呼びかけている。

国内経済をOFWからの送金に大きく依存しているフィリピンでは、積極的に海外へ労働者を積極的に送りだしてきた。これまでに人口の10%にあたる800万人が海外で働き、2005年のOFWからの本国への送金は、107億ドルにも達している。なかでも、看護師は他の職種より比較的高賃金であり、外貨獲得手段のひとつとして、政府は看護師等の専門職の海外での就労を促進してきた。看護師不足に悩むヨーロッパ諸国やアメリカ、中東諸国では、以前から多くの比人看護師が働いている。

現在、世界第1位の看護師輸出国といわれるフィリピンでは、1994年から2003年にかけておよそ10万人の看護師が海外での職を求めて国を去っている。看護師に転身してまでも、海外で働きたいという医師も急増しており、医師や看護師不足で閉鎖を余儀なくされた私立病院は、この5年間で1000カ所にものぼるとされる(注1)。

今回の協定合意の背景には、こうしたフィリピン国内の「医療体制の危機」という問題も存在する。フィリピンにとって日本は、アジアの経済大国であると同時に、高齢化が急速に進んでいる国であり、今回の協定締結による看護師・介護士の市場拡大への期待は大きい。しかし、国内の医療体制の危機を抱えながらの看護師・介護士派遣には、今後も多くの課題が残されそうである。

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