中高年労働者の雇用機会の拡大と職業能力の向上

カテゴリー:高齢者雇用雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2006年10月

政府は9月13日、コンビ賃金制度、編入助成金を核とした就労促進策、職業再訓練の拡大を盛り込んだ中高年向け雇用対策「イニシアチブ50プラス」を閣議決定した。その目的は、中高年労働者の雇用機会の拡大と職業能力の向上である。中高年労働者がより長く仕事を続けられるよう支援し、高齢の失業者に再就職の機会を提供することが期待されている。

中高年労働者の潜在力の活用

ドイツでは現在、企業の約半数が50歳以上の労働者を雇用しておらず、2005年の55~64歳層の就業率は45.4%であった(スウェーデンは69.4%、デンマークは59.5%)。国際競争力を維持し、社会保障制度の基盤を確保していくためには、中高年労働者の潜在力を活用していくことが喫緊の課題となっている。

こうした状況を重くみた政府は、早期退職のインセンティブを顕著に減少させることを目的とする施策を講じており、その柱は(1)失業手当の最長受給期間を32か月から18カ月(55歳未満は12カ月)に短縮すること(2)現在58歳以上での早期退職を可能としている「58歳規定」(58歳以上の場合、求職活動を義務づけられることなく失業給付を受給できる)を2007年末で廃止すること(3)年金支給開始年齢を2012年から2034年にかけて段階的に67歳に引き上げること――などである。

4つの目標

イニシアチブ50プラスは、中高年労働者の雇用機会の拡大と職業能力の向上のため、(1)2010年までに50歳以上の就業率を55%に引き上げること(2)55歳以上の早期退職率を顕著に引き下げること(3)「コンビ賃金」や「統合助成金」を活用し、高齢失業者の再就職率を改善すること(4)将来の労働市場の要請に適う技能を身につけるための職業再訓練への参加率を高めること――の4つの具体的目標を掲げている。

中高年向けコンビ賃金

コンビ賃金とは一般的に、労働者が得る賃金のほかに公庫から助成金が支給される場合をいう。「イニシアチブ50プラス」によるコンビ賃金は、(1)失業給付I(雇用保険財源による通常の失業手当)の受給期間が120日以上残っている50歳以上の失業者を対象に、(2)失業直前の職より賃金の低い新しい職に就く場合、(3)最初の1年は手取り賃金の差額の50%、2年目は30%を助成するもの。年金保険料についても、以前の賃金に対する保険料の90%が2年間支給される。政府は、このコンビ賃金プログラムにより年間3万人の中高年者に対する助成を行う計画である。

使用者に対する編入助成金

中高年労働者を雇い入れる使用者に対する支援策も強化される。中高年労働者を採用する事業所は、1年を超える雇用契約の場合、少なくとも賃金の30%を編入助成金として受給できる。助成金の支給期間は最長3年間で支給額は賃金の50%を上限としている。この編入助成金はもともと失業給付Ⅰ受給者の労働市場への統合を目的に実施されていたが、今回の改定でこの規定の適用対象を失業給付Ⅱ(稼働能力のある要扶助者に対する最低生活保障。財源は税。)受給者にも拡大したもの。政府は、年間5~7万人の中高年労働者の雇用を支援することを目標としている。

職業再訓練に対する助成

イニシアティブ50プラスは、中高年や低資格の労働者向けに職業再訓練を促進するための施策も盛り込んでいる。これまで従業員100人以下の企業の場合、50歳以上の労働者は、認定された職業訓練コースを受講するための助成金(訓練クーポン)を受け取ることができた。今回の改定ではこの訓練クーポンが従業員250人以下まで拡大されると同時に対象となる年齢が45歳以上に引き下げられた。これにより中高年労働者は、資格取得のための質の高い職業再訓練を自由に選択できるようになる。政府は、労使団体に対しても、職業再訓練を促進するための労働時間制度、休暇制度の整備を呼びかけている。

参考

  • ドイツ連邦労働社会省

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