新労働者年金制度と急増する労使紛争
年金口座の残高チェック機能強化策と新制度の普及促進
2005年7月1日から実施されている新しい労働者年金制度の加入者は、現金自動預払機(ATM)によっていつでも年金口座の残高をチェックできる「労働者保護カード」を申請することができるが、行政院労工委員会(CLA)は、11月に新生年金カードを開始すると発表した。
新生年金カードを発行するのは、台湾土地銀行、富邦商業銀行、玉山商業銀行、台新国際銀行の4行で、台湾全域に合計4067台のATMが設置されているため、年金加入者は自宅や職場近くで容易にATMを利用して年金口座の残高を照会することができる。年金加入者は、労働者保護カードとこの4行のクレジットカードまたはキャッシュカードのいずれか、あるいはその両方と組み合わせることができる。
新しい労働者年金制度では、労働基準法の適用を受ける会社は被用者の賃金の一部(6%以上、通常は6%)を天引きして、CLAの労工保険局(Bureau of Labor Insurance:BLI)または公認保険会社に設けられた個人年金口座に振り替えなければならない。新労働者年金制度の下では、被用者がその後転職したり、勤務先の会社が倒産や廃業した場合でも、個人年金口座はそのまま移管することができる。
CLA は、労働者保護カードの発行により、労働者が自分の雇い主が毎月月給から法定比率に基づく金額を実際に預託したかどうか知ることができるようになることで、その利便性から新年金制度へ労働者の参加増加が促進されると強調した。
さらにBLIによると、現在すでに労働者年金制度に登録しているのは371万人で全被用者の約70%を占めるようになっているが、約30%はいまだ労働者年金法に基づく旧来の退職給付制度に留まっていると報告される。
増加する労使紛争の背景に年金支払いをめぐるトラブル
CLAが1週間前に発表した統計報告によると、労使紛争件数は今年の最初の3四半期で1万807件という記録的な数字に達した。この数字は前年比30%増であるが、最も重要なのは、主としてこの急上昇は労働者年金の支払いを巡る紛争が急増した結果だということである。労使紛争の年間件数は1990年代には1000件から6000件の間であった。2000年以降一貫して増加を続け、国内失業率が5%を超える記録的高さとなった2002年には1万4000件に達した。2002年の労使紛争件数は、第3四半期ですでに1万417件に達していた。しかし、これを除き現在まで1月から9月までの期間に1万件の大台を超えることはなく、2004年は、第3四半期で8099件の労使紛争が登録された。
CLA は、2005年の1月から9月までの期間に労使紛争件数が昨年より40%増加したと発表した。その内容は、大部分が労働契約をめぐるトラブルで、そのほとんどが退職金の支払いと賃金支払いの不履行に集中している。2005年同時期、年金の支払いをめぐる労使紛争は2004年同時期を70%上回る620件の報告があった。
労働専門家は、最近の年金めぐる紛争の急増の原因は、労働者に移管可能な年金制度を認め、雇用者に労働者の月給の一定率を毎月労働者の年金口座に支払うことを強制する労働者年金法の施行が原因であると指摘している。さらに、労働専門家は、CLA はこの状況を直視し、ますます不安定になる労使関係を調査しなければならないと提案、政府にとって最も重要なのは、労使紛争で不利な立場になりがちな賃金労働者を保護するために現状に対処する効果的措置を採用することだと強調している。
2006年1月 台湾の記事一覧
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