労働契約法草案、労働者の利益保護を強調

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  • 国別労働トピック:2006年1月

12月に召集された第10回全国人大常委会で、「労働契約法」草案が提出され議論された。1995年に労働法が施行されて以来、中国では労働者の権利保護に関する法規定の問題が課題となっていた。そういった中での「労働契約法」の立法化の動きは、中国の労働関係に大きな影響をあたえるものとして注目される。

2005年12月27日付の工人日報の記事から今回の草案に盛り込まれた具体的保護規定について紹介したい。

  1. 使用者は、労働者に対して担保や担保名義の金品をとってはいけない。また、戸籍身分証やそれに類する書類を根拠に労働者を抑圧してはいけない。使用者がこれを違反した場合、労働者一人について500元以上2000元以下の罰金、および労働者の損害に対して賠償責任を負う。
  2. 労働契約は3カ月以上の雇用をさだめ、また試用期間についても規定している。試用期間も労働契約期間内に含まれる。今回の草案では、未熟練技能工の試用期間の上限は1カ月、熟練技能工は2カ月、高級技能工は6カ月とそれぞれ規定する。また、同一使用者は同一労働者に対して試用期間を1回しか設けてはならない。法改正時にすでに期間を超えて試用期間を実施している場合、使用者は労働者に対して月報酬を基準としてこれを賠償しなければならない。
  3. 職業病や労災により働くことができなくなった労働者、病気や怪我で治療中の労働者、妊娠・育児期間中の女性労働者、平等協議の代表者、法律や行政法規により規定されるその他の者に対して使用者は労働契約を不当に解除することはできない。今回の草案では、使用者は労働契約を解除する場合、まず工会の通知しなければならない。
    工会は労働契約の解除が不適切と判断した場合、これに意見を提出する権利を有する。使用者は工会の意見に対して検討を行い、工会へ対応を通知する。労働者が仲裁や起訴等を申請した場合、工会はこれを支持し支援しなければならない。
  4. 使用者は、労働契約において労働者が職務上の秘密を契約解除後一定の期間内、競業する他社に知らせること、あるいは労働者本人が競業する事業を興すことを制限することができる。草案では、この競業への制限の期間は2年を超えてはいけないと定めている。
  5. 使用者は、暴力や威嚇、脅迫などの手段をもって労働者身体的自由を制限してはいけない、あるいは労働者にとって危険となる作業を強制したり、指示していはいけない。そういった場合、労働者は使用者の通知することなく、即刻労働契約を解除することができる。

一方、草案では、労働者が労働契約を解除する場合には30日前に書面をもって使用者に通知しなければいけないことを定めている。労働契約を解除できる場合とは、試用期間中である場合、労働条件が労働契約書に示されていない場合、安全な生産のための条件が満たされていない場合、労働報酬が適切に支払われない場合、雇用主が社会保険料を納付していない場合、使用者の定款や規則が法律、行政法規に違反し、労働者の権利保護を損なっている場合等であり、草案では、そういった場合について労働者が労働契約の解除を使用者に対し通知することができると規定している。

今後、この草案は、本年3月開催の全国人民代表者大会(全人代:国会に相当)において正式に承認され、「労働契約法」として立法化が図られる予定である。

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