ニューヨーク市の地下鉄・バス全面スト、3日で終結

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12月21日付けニューヨークタイムス紙の報道によると、12月20日未明、ニューヨーク市の地下鉄やバスを運行する都市交通局(MTA)と都市交通労組(TWU)の労働条件をめぐる労使交渉が決裂、組合は25年ぶりとなるストライキを敢行するに至った。

都市交通局の職員は公務員であり、ニューヨーク州法では公務員のストライキ権を認めていない。ニューヨーク市のブルームバーグ市長は20日の記者会見で違法ストを実施したTWUを強く非難した。市当局の発表によると、ストの影響を受ける利用者は1日あたり約700万人、また年末商戦を控え、観光客も多く訪れるこの時期、経済損失は約4億ドル(約460億円)に上るとされる。

CNN.comの報道によれば、ブルームバーグ市長とパタキ・ニューヨーク州知事は、裁判所に対し、州法に基づいた厳正な対応を求めた。これを受けて州最高裁は20日午後、2度にわたる裁判所の禁止命令を無視したスト実行は、法廷侮辱罪に当たるとして、組合に対し1日あたり100万ドル(約1億1700万円)の罰金支払いを命じた。また翌21日、ニューヨーク州最高裁は、労組幹部に対し裁判所への出廷を求め、スト終了を拒否すれば組合幹部を収監する可能性があると警告した。

21日のニューヨークタイムス紙は、労組幹部の発言を引き、労使交渉の主要な争点は年金問題であると指摘している。MTAの退職者に対する年金は、25年間勤続すれば55歳の引退時から年収の半額を支給されるという恵まれたものである。MTAは今後採用する労働者について、年金支給開始年齢を62歳へ引き上げることを提案したがTWU側は、今後採用する労働者にも同等の年金受給権利を求め、対立していた。また、賃上げも争点の一つになっており、使用者側は1年目には前年比3%、2年目は条件次第で2%を引き上げる2年契約を提示したが、労組TWUは向こう3年間に各年8%の賃上げを要求していた。決裂前最後の交渉で、使用者側は年金支給開始年齢引き上げを断念し、一方で健康保険の従業員負担分を現在の2%から6%に引き上げるとの提案を行ったが、労組側はこれを拒否、ストライキに突入した。

組合側の要求について、21日付ウォールストリートジャーナル紙は、次のように分析している。ニューヨーク市のバス運転手の平均年収は6万3000ドルで、民間の同分野の従業員よりも25%高い。また組合側が求める賃上げはインフレ率の3倍に上るほか、健康保険の従業員負担率のわずかなアップに関する使用者側の提案も、労組は一蹴したなどと一連の組合の対応の妥当性に懐疑的な姿勢を見せている。

ニューヨーク市のバスと地下鉄は市民生活にとって重要な足であり、市民はストライキにより氷点下のマンハッタンで徒歩での通勤を余儀なくされるなど、直接的な打撃を被った。市民のストに対する反感の高まりや、罰金支払いによる組合の財政状況逼迫などを考慮し、組合幹部は22日午後、投票により賛成多数でストライキ解除を決定した。

23日付けニューヨークタイムス紙によると、労使双方は22日、ニューヨーク州調停委員のあっせん案を受け入れ、スト解除後に年金などの主要問題について交渉を再開することで合意した。25年前の1980年に行われたストライキは11日間、その前の1966年のストは12日間続いたが、今回は実質3日で終結した。

参考

  • 12月21日、22日、23日付ニューヨークタイムス紙、21日付ウォールストリートジャーナル紙、ニューヨーク市ホームページ

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