英国航空で山猫スト
2005年8月11日、英国航空(BA)向け機内食供給会社ゲート・グルメの従業員約670人の解雇が発表されたことを受け、一部のBA従業員が地上業務を放棄、支援ストを実施した。このストは事前投票を行っていないいわゆる「山猫スト」であったため、ゲート・グルメ、BA両社を傘下とする輸送一般労組(T&G)は、BA従業員に対し、ストを中止し業務に戻るよう促したがこれに従わず、ヒースロー空港におけるBAの地上業務は24時間停止され、翌日までの全便が欠航になるなど、約7万人の乗客に影響が出た。
その後ゲート・グルメ社とT&Gの協議が開始された。同ストで総額4000万ポンドの損失をこうむったBA社も早急な和解を求めてゲート・グルメ社への支援策を発表するなどの介入の姿勢を示した。しかしゲート・グルメ社は山猫ストを行ったBA従業員に不満感をあらわにし、自社従業員の解雇を撤回しないと主張、協議は難航した。8月28日には、希望退職者を募るということで一定の合意に達したものの、T&Gは解雇者全員の職場復帰を求めており、今後も協議が継続される見込みである。
2004年の労働争議件数、過去最低の130件に
争議の件数・日数とも減少の傾向
夏季に4年連続でストに見舞われたBAだが、英国全体で見ると労働争議発生件数、労働損失日数、参加人員のいずれも1980年代以降、長期的な減少傾向にある。英国国家統計局の発表によれば、2004年の争議件数は1980年代の約10分の1の130件に激減、争議に伴う平均損失日数も、1970年代の約9日から2000年以降の約2.5日へと縮小している。
争議件数の減少の理由について専門家は、保守党政権によって実施された「組合弱体化政策」の影響が未だに尾をひいていると分析している。
1979年に政権についた保守党は経済再建、中でも企業の競争力回復を緊急の課題としていたが、そのためには労組の影響力を弱める必要があった。このため、サッチャー、メージャー両政権は労使関係法制の見直しを行い、労働争議に関しては、争議行為の事前投票制義務化(1984年労働組合法など争議行為に伴う不法行為に対する法規制を強化した。この結果、労組の既得権が大幅に制限されたことから労働争議は減少、組織率の低下、組合員数が生じたとされている。
また、1970-74年には9.03日であった損失日数は2000-04年には2.68日まで短期化した。(注1)これは産業構造の変化に伴う勤務形態の多様化によって、1週間を超えるストライキを支持する労働者が少なくなっていることが背景にあると考えられている。
期間 (注2) |
発生件数 (件) |
労働損失日数 (日) (注3) |
参加人員 (千人) |
規模 (人) *2 |
31日以上の労働争議件数 | 2日以下および31日以上の労働争議の割合 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2日以下 | 31日以上 | ||||||
1970-74 | 2917 | 9.03 | 1573 | 539 | 93.4 | 30.7 | 3.4 |
1975-79 | 2338 | 7.31 | 1656 | 708 | 99.8 | 32.0 | 4.3 |
1980-84 | 1360 | 8.95 | 1130 | 830 | 58.6 | 45.9 | 5.3 |
1985-89 | 750 | 5.02 | 783 | 1044 | 33.8 | 57.8 | 3.8 |
1990-94 | 334 | 3.71 | 223 | 667 | 28.0 | 65.1 | 7.4 |
1995-99 | 213 | 2.66 | 172 | 807 | 16.6 | 65.3 | 6.6 |
2000-04 | 163 | 2.68 | 349 | 2141 | 5.4 | 66.0 | 3.3 |
出典:統計局の資料をもとにPeter Ingramが作成
注
- 一方で、31日以上続く長期間のストライキの割合がそれほど変化していないことを示している。1970年代初期にはストライキ全体の3.4%であるのに対して、2000年以後はストライキ全体の3.3%である。
- 平均継続日数は、参加人員あたりの労働損失日数。
- 規模は、労働争議あたりの参加人員数。
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