NHLの労使紛争終結へ

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年8月

北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)労使は、7月13日に新労使協定の締結について基本合意したと発表した。NHLは昨シーズン、北米プロ・スポーツでは史上初めて、全試合が中止されるという事態に陥り、泥沼化した労使紛争は昨年9月以来およそ10カ月の間続いていたが、ようやく終結するに至った。

協定締結の焦点は、「サラリーキャップ制(全選手の年俸に上限を定める制度)」の導入である。昨シーズンの労使協定交渉では、選手会側がサラリーキャップ制の導入を拒否し、オーナー側に代替案を逆提案したが、オーナー側が選手会の要求を受け入れず、交渉が決裂するに至った。(昨シーズンの労使協定を巡る交渉の経緯については、本欄2004年12月の記事を参照されたい。)

今回妥結した新労使協定では、「サラリーキャップ制」が導入され、選手会側が減俸を受け入れたものとなっている。合意内容の大枠は以下の通り。

  • 選手会側は、6年間の新労使協定の4年目以降に再交渉を行う権利がある。
  • 全選手の年俸は、現在の年俸より24%減額される。
  • 年俸総額はリーグ収入全体の54%以下に設定される。
  • チーム毎に、サラリーキャップ制が導入される。2005-06年のシーズンは、1チームあたりの最高は3900万ドル(42億9000万円)で、最低は2150万ドル(23億6500万円)になる。
  • いかなる選手もチームの年俸総額の20%以上の年俸を得ることはできない。そのため、2005-06年のシーズンの場合、780万ドル(8億5800万円)以上の年俸を一選手が受け取ることはできないことになる。
  • 年俸の一定分は、シーズン終了後にサラリーキャップ額が確定されるまで預託される。
  • 新人選手の年俸最高額は、85万ドル(9350万円)である。新人選手は入団7年後にフリーエージェント(FA)権が取得できる。
  • 選手のFA権取得可能年齢は2005-06年のシーズンは31歳に据え置かれるが、2007-08年のシーズン終了後に27歳に引き下げられる。
  • 収益の高いトップ10のチームは、下位の10チームに対して予算配分を行う。
  • 労使双方が年俸をめぐる仲裁申し立ての権利をもつ。以前の協定では選手側のみが仲裁申し立ての権利をもっていた。
  • 選手は2006年のトリノ冬季オリンピックへの参加が認められる。

今回の労使合意の背景には、観客離れについてNHLの労使双方が危機感を募らせたことが最大の要因として挙げられる。北米では、もともとNHLの人気は、4大プロスポーツ(フットボール、バスケットボール、野球、アイスホッケー)の中で一番低い。昨シーズンの中止により、特に選手会側に対するファンの不満の高まりが懸念されてきた。観客の心を取り戻すべく、「新生NHL」は、労使協定の承認と同時にロゴを改めたり、試合ルールの変更を行うなど魅力回復への努力を示し、今年10月に開幕の予定である。サラリーキャップ制の導入により、チームによっては人件費の削減を迫られるため、新たな年俸提示額を不満とする選手の間でFAの動きが活発化するとの予測が広がっている。

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