変化する社会に対する労働者の声

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2005年7月

今、台湾では大規模な経済社会構造改革が進展している。多くの制度は見直され、行政機関や関係機関は大きな改革と改良の促進に直面している。そういった変化の中で、最近、あらゆる階層の労働者からさまざまな声が上がっている。以下では、ここ一カ月の間に労働者などから上がった声を紹介したい。

1.医療労働者

台湾全域の地元に根ざした病院と診療所の2万人に及ぶ医療関係者が、包括予算プログラムに対し、このプログラムは自分たちの医療事業を排斥するものだとして異議を唱えた。このプログラムの下、これまで行政院衛生署は地区の病院と診療所に、国の保健医療制度の対象になっている患者の治療費をカバーするため毎月または四半期ごとに定額を払い戻している。この制度は、住民が、大規模な医療施設や地域病院ではなく、小規模な地元に根ざした医療施設で初期治療を受けるように奨励してもきた。その結果、小規模な診療所では、政府から支払われる被保険者負担額は増えないまま、患者数が増大した。こういった診療所は、このプログラムの不公平を助長する措置を増やしたとして、健康保険担当官たちを批判した。

2.教師

何千人もの教師が街頭で抗議し、労働組合を組織する権利を要求した。教師の団体と地元の労働組合は、労働組合の組織は基本的人権であり、教師を例外とすべきではないと述べた。教師の組合を禁止する規定は、76年前に施行された労働組合法第4条で定められている。教師は、独自の組合を通さなければ労働権を得るために戦うことはできず、教師の労働条件が良くなければ子供たちは良い教育を受けることができないと考えている。したがって、上記の条項を廃止すべきであり、立法者は法を修正して教師に全面的な権利を与えるべきであると考えた。実のところ、すべの政党の立法者が支持した労働組合法修正案が3月に立法院で審議されたが、第4条をめぐる意見の対立を一因として、可決されなかった。

3.学生

約30人の大学生団体の代表が、長年取り上げられることがなかった最低時給に反対し、行政局労工委員会(CLA)への抗議行動を起こしている。現在、最低月給は15,840ニュー台湾ドルであり、したがって、日給は528ニュー台湾ドルである。この額は、行政局が承認し、労働基準法第21条に基づき、1997年10月16日にCLAが発表したものである。学生は、労働市場の平均時給は80-100ニュー台湾ドルほどであり、上記の最低時給のために、使用者がこれより高い時給を支払うことが制限されてきたと考えている。学生は政府に対し、最低時給を66ニュー台湾ドルから95ニュー台湾ドルに引き上げるように強く要請した。しかし、政府は、最低時給の引上げは使用者の全体的労働コストと労働者の生活水準に関する最低月給とのつながりが非常に強いため、賃金調整委員会(Wage Adjustment Commission)が労働基準法に基づき必要な調査をした方がよいと考えている。

4.テレコム労働者

およそ650人の中華テレコムの部課長が、500人の従業員に出勤しないよう説得するために正面玄関を封鎖しようと、同社の本社前に集まった。ストライキは午前7時に始まり、2時間程続いた。民営化に向けた第一歩として、中華テレコムは3年ほど前から株式の売却を開始し、それ以来政府所有株式は65%に減少した。同社のこの株式は2002年に富邦金融持株会社(Futon Fianacial Holding Co.)とキャセイ生命保険会社(Cathay Life Insurance Co.)に売却された。中華テレコム労働組合(CTWU)は、同社が民間会社に引き継がれる前の同社従業員の権利と利益を守るため、民営化前に労働組合との「団体契約」の署名を同社に義務付けている議会で決議された規定に従っていないと主張している。

CTWUは昨年12月にストライキ権を獲得した。このとき1万7000人以上、すなわち労働組合員の60パーセントが、組合にストライキ権を与える決議を可決した。

5.銀行労働者

16の国内銀行の5000人ほどの組合員が、労働条件の改善と利益の保護を求めて戦うために集まった。彼らは、政府が台湾の金融部門の整理統合のペースを強化しているため、労働条件と利益が犠牲になっていると考えている。労働組合は、より多くの銀行を合併して大規模な金融持株会社にしようとする政府の最近の動きを激しく批判している。2004年10月20日、総統経済顧問団の会議で、陳水篇総統は台湾金融部門の将来の青写真を紹介している。この計画は、国有銀行の総数を2005年までに6行に削減し、金融持株会社数を2006年末までに現在の14社から半分の7社に減らすことを要求するものであった。

抗議する銀行労働者は、銀行の合併、金融モニタリング、銀行従業員の労働条件、労働組合と使用者間の団体間交渉の実施の4つの重要な問題を中心とする、4件の主要な訴えと14件の提案を含む請願を行政院にした。

6. 国際労働デーの労働団体

何千人もの教師、労働者、障害者が国際労働デーを祝うために街頭に繰り出した。全国教員協会(National Teachers' Association)の傘下の小学校から大学までの教師が労働組合組織権を要求した。これは1991年から彼らが戦いを続けてきた訴えであった。抗議行進をリードしたのは、多くの障害者を含む全国宝くじ従業員組合であり、障害を持つ数百人の従業員が車椅子で行進した。彼らは、現行販売制度を変えないことを要求した。宝くじを運営する金融機関、台北富邦銀行は、既存の障害を持つ小売業者に与えられた販売権を取り戻し、代わって、協同組合のような組織を採用し、この組織が雇用する従業員だけに宝くじスタントの運営権を持たせる計画である。

一方、主としてさまざまな県の労働組合連合(Federation of Trade Unions)で構成される労働者団体は、政府の労働政策に不満の声を上げた。彼らは、今年7月1日にスタートする新しい労働者年金制度は、臨時労働者、派遣労働者、契約労働者の増大を促進するだけのものだと批判した。

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