契約の認証制度と大学:新展開

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2005年6月

1.大学の活用

2003年9月10日委任立法276号第8編(2003年2月14日法律30号5条の実施規定)は、学説の主張を受け、イタリアの法制度に初めて認証制度を導入し、公私の高等研究機関および大学の財団のもとに、そのための機関(以下、「認知所」という)を設置することを定めている。

認知所を置くにあたり、認証手続きの実施について権限をもつ主体の中から大学が選ばれたのには多くの理由がある。

まず、労働関係の認証に関する実験的措置が初めて実施されたのが、まさに大学機関のもとであったことである。2000年にはすでに、マルコ・ビアジ(注1)の功績により、モデナ・レッジョエミリア大学の国際比較研究センター(現在では、マルコ・ビアジ国際比較研究センターと呼ばれる)において、エミリア・ロマーニャ州との協定の範囲内で、労働関係の任意の認証に関する実験的な措置が実施されていた。

こうした初期の試みとしては、他に、ボローニャおよびラヴェンナのモンテ財団による「高齢者プロジェクト」を挙げなければならない。これは、2001年12月から開始されたもので、政府による2001年10月3日の白書の指摘に従い、行政的および手続的認証制度の成文化の主張を考慮したものである。これにより、現行法および現行労働協約と完全に調和させることを目的として、「障害者および家族に対する補助者」と名づけられた職業形態に関して、労働関係の任意の認証制度が導入された。「高齢者プロジェクト」の中で定められた認証モデルでは、2003年委任立法276号と同様に、認証は大学(モデナ・エミリアロマーニャ国際比較研究センター)で行うとされていた。

他方、同プロジェクトでは、個別の労働契約の認証手続きに効力をもたせ、また、プロジェクトに参加する企業からの信用を得るために、労働者は、認証を経た契約のコピーをモンテ財団の指示する組織のもとに預託しなければならないとされている。預託先として指定された組織は、具体的には、認証制度を「戦略的に」批准した組合の中から労働者が選択する。この組合が、労働者と第1のコンタクトをとり、認証制度の機能と契約が遵守されなかった場合の権利について情報を提供することになる。

しかしながら、こうした「沿革的な理由」以外の点からも、大学を認証手続きに関わらせるのが合理的なことは明らかである。実際、認証に関する権限は、各大学ではなく、助言活動を行うフルタイムの労働法教授に付与される。この意味で、2003年委任立法276号76条は、「もっぱら、1980年7月11日大統領令382号66条に定める常任の労働法教授との協力関係の範囲内で、また、その実施する助言の範囲内で」大学に権限を与えると明示しているのである。

認証委員会は、協力・助言協定に大学の学長、学部長、学科または機関の長が署名することによって機能することになるが、1980年大統領令382号66条は、研究・助言契約および研究協定の締結にあたり、まず、大学と常任労働法教員が、「科学的および教育的機能の遂行の妨げにならない」ことを条件としてかかる活動を遂行することができると定めている。次に、同条6項で、第3者によって実施される活動から生じる収益が、大学規則の定めに基づき、一部は当該活動を行った教員個人ではなく教職員全体に、残りは大学の「一般経費」、「給付実施のための経費」、「教育および科学に関する物品の購入」または「契約および協定を遂行した学科、機関またはクリニックの業務に関する経費」として、大学の収入に組み込まれることを明らかにしている。したがって、大学において認証委員会の設置を促進すれば、教員個人は、研究熱心な若手を確保し、教育大学研究省からは十分な予算の下りないこの分野に目を向けさせられるだけの財政を、大学の機関に移していることになる。労働法教員側も、企業の世界で助言・補助活動を大学での活動と同時に遂行できるので、自らの経験を豊かにすることができるというメリットがあることを看過すべきではない。これは、近年、調停および仲裁の機能に関して組合活動が望んでいた労働市場に対する積極的な支援モデルなのである。

最後に、認証に関する権限を大学に付与することは、ビアジ改革が目的とする「大学と労働市場との連関」という構想の1つの表れである。2001年10月の白書はすでに、大学に新制度の原動力としての役割を与えることで、就業能力に関する地域的な協定という新たな段階を推し進めていた。また、白書は、すべての学生に就業の機会を保障するために、大学に特別の努力をするよう求めている。すなわち、学校から労働へのスムーズな移動の手助けである。労働に関する指針を設定し、企業とのより緊密な対話を行うという新しい役割が容易に果たせるように、ビアジ改革は、大学に3つの主たる役割を与えた。つまり、職業紹介、見習労働における高等教育、そしてここで問題になっている労働契約の認証である。まさに、こうした3つの制度を介してこそ、法律と教育との複雑な関係のうちの戦略的な部分、すなわち、国の周辺的な行政と労働者の利益を代表する組織、そして地域の経済生産システムとを実際に結びつけることを想定して設定された戦略を大学システムに適用しうるのである。

しかし、立法者が大学に認証委員会を設置するとしたのには別の理由もある。実際、大学以外に設置される認証委員会の権限は、労働社会政策省が労働契約の性質に関する用紙の形式で示した基準および指針の適用に限定されているから、大学のもとに設置される委員会の寄与の方がより特別で体系的である。つまり、大学が、法律学の適切な解釈、すなわち統一的な指針の形成、そして制度を正しく機能させるための支援に関して、他のすべての認証委員会にとって、詳細かつ信頼の置ける機関となることが期待されているのである。

2004年6月14日省令4条が明らかにしたように、労働社会政策省は、認証活動の遂行を認められた主体に関する所定の名簿への登録に関連して大学の委員会が作成した研究成果を目録として保存している。これによって、研究・リサーチのためのアクセスの容易さをすべての人に確保し、労働契約および請負契約の性格付けに関する慣行や指針を明らかにするのである。

2.大学および大学財団の認証委員会:要件および手続き

2003年委任立法276号76条2項の規定を明確にするために、2004年6月14日省令は、「法的意義をもつ資格公布につき法的に認められ許可された国立および非国立の大学(大学財団を含む)のもとに設置する認証委員会に関する情報名簿を、労働社会政策省に」置くとした。同名簿に関する管理および責任は、労働社会政策省の労働条件保護総局局長に委ねられる。同局は、名簿の保持、登録申請の受付および関連文書提出に関する措置について権限を有する。

同省令は、大学が認証活動を実施する際の名簿登録義務を定めている。この登録にあたっては、必要な文書を保存したロッピーディスクを添付して、書留郵便により申請を行わなければならない(2004年6月14日省令3条1項)。

労働契約の認証に関する資格を得るには、前述した1980年大統領令382号66条にいう協定を提出しなければならない。2003年委任立法276号76条1項c)の規定と1980年大統領令382号66条1項とが相俟って、認証委員会を設置する権限をもつ教員は、常任でフルタイムであることが要求される。実際、1980年大統領令382号66条は、所定の協定ないし契約の実施が「通常は学科に、これが設立されていない場合には、大学の機関もしくはクリニック、またはフルタイムの教員個人に委ねる」としている。一方、2003年委任立法276号76条1項は、協力関係および助言について、1980年大統領令382号66条で「通常は」とされている学科ではなく、労働法の教員個人に言及している。ここから、(学科を介する場合にも)常任でフルタイムの教授のみが、認証所の設置を申請する権限を有すると解される。しかしながら、前記の協定の範囲内で、担当教員が、フルタイムでない他の教員や当該問題に関する専門家等と協力することは妨げられない。

さらに、登録のために、大学は、登録時およびその後6ヶ月ごとに、労働社会政策省が挙げる労働契約の性格付けに関する法律学の指針や基準を示した研究成果を送付しなければならない。また、登録を維持するためには、遂行した認証活動に関する報告書の送付も必要である。

先に示したように、大学区のもとに設置された認知所による研究成果は、名簿の保持について責任を有する労働条件保護総局によって目録化される。この目録は、研究・リサーチ目的で参照することが可能であり、また、2003年委任立法276号78条4項にいう不使用条項や同84条2項にいう慣行や指針を明確化するのにも有効である。

省令は、認証活動の遂行方法について定めを置いていないので、2003年委任立法276号によって定められた手続規定を遵守して、委員会内部の規則により規律されることになろう。

ただし、協力および助言に関する協定の中で、認証委員会の構成について明示することは必要である。同委員会の構成は、常任の労働法教員1名でも可能であるが、他の助言活動のため、または、弁護士活動の遂行のために、活動を両立しえない状況に置かれている教員を含むことはできない。

3.マルコ・ビアジ国際比較研究センターの認証委員会

マルコ・ビアジ国際比較研究センターは、2005年1月10日提出の申請が許可され、名簿への登録が認められた結果、労働契約および見習労働に関する活動を遂行できることとなった。

エミリア大学の認証委員会の機構は、異なる権限を付与された2つの委員会からなる。その1つは、文字通りの認証活動を行う委員会であり、もう1つは、契約当事者への積極的な援助を行い、前記委員会の実施する認証の準備をする予審委員会である。

予審委員会は、11人の通常委員からなり、そのうち2人は大学の教員、5人は弁護士である。この11人の委員のうち1人は秘書である。予審委員会は、ヴィチェンツァ(ヴェネト州の都市)の県産業協会に拠点を置いている。これは、エミリア大学の認証委員会の特異な点である。実際、マルコ・ビアジ国際比較研究センターは、労働社会政策省への申請提出と同時に、1980年大統領令382号66条の定めに従いヴィチェンツァの県産業協会と協定を締結し、同協会に労働契約の認証に関する支援を行うこととしている。こうして、この2つの機関の間で、次の2つの異なる機能をもつ認証モデルが決められた。すなわち、ヴィチェンツァ県産業協会が示す企業に対し助言と支援活動を行うこと(マルコ・ビアジ国際比較研究センターの教員とヴィチェンツァ県産業協会の協力員からなる予審委員会が遂行)と、企業から委ねられた契約案の認証活動を行うこと(認証委員会が遂行)である。

認証委員会は、モデナに拠点を持ち、7人のメンバーと委員長から構成されるものである。このメンバーのうち、2人は大学の常勤労働法教員である。また、1人は秘書であるが、これは予審委員会と同じ者が兼任する。これにより、予審委員会との継続的な関連性が確保されるわけである。

マルコ・ビアジ国際比較研究センターについて許可申請した考案者の意図は、所定の協約を締結することで、他の有資格者とともに、認証に関する統一的な委員会を促進することである。大学の認証所が他の認証所にとっての見本となるようにという立法者の要請を受けて、エミリア大学が、認証に関する模範的な機能を遂行する意図があることは明らかである。しかし、こうしたことは、他の認証主体が、所定の協定を締結する際に、そのモデルを受け入れた場合のみに可能なことではある。

4.認証行為の効力

いずれにせよ、認証行為による成果は、契約の認証を実行する組織がなんであれ同じである。このように、大学に作られた委員会のもとで実施される認証行為は、労使相互組織や県労働局ないしは県のもとに作られた委員会の行うものと法的効果に違いがない。

実際、2003年委任立法276号79条では、どのような認証所で実施されようとも、認証行為は、これと異なる判断が裁判所でなされるときまでその効力を保ち続ける。とくに、認証行為は、認証の対象となる契約を締結した当事者だけでなく、80条で定められた救済措置の1つをとることが認められた第3者をも拘束する。換言すると、認証行為は、反対の効果を認める裁判所判決が下されるまでは、第3者を拘束し、第3者が行為の内容に異議を唱えるのを妨げるという特別な効力と安定的な効果を契約に授ける権限をもっているのである。

法律が言及している第3者とは、労働関係法の適切な適用に関する監視活動を遂行する権限をもつ主体のことであり、たとえば、社会保障機関、税務署および労働社会政策省の県の機関などである。したがって、これらの主体は、正規の方法で認証された契約に対して、確認および監視の権限を遂行することしかできない。ただし、当該関係の性質に対する異議申立てを前提とした自衛行為を行うことは妨げられない。したがって、使用者が社会保険料の納付を怠った場合、これを埋め合わせるには、行政裁判所による取消または契約の本来の性質付けに関する通常裁判所の修正および労働者の社会保障法上の地位に関する正規化について使用者に非があるという判決が必要である。

認証主体に関する概観に続き、法の掲げる目的について簡単に触れておく。その目的とは、認証の役割を付与することによる大学と企業界、さらには省庁との接近である。いずれにせよ、認証に関する規制は実験的な性質をもつので、こうした野心的な目的をも掲げうるということはある。

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