著しい低下を見せる労働者の仕事満足度(10年前比)
10年前と比較して米国人労働者の仕事に対する満足度が著しい低下を見せている。これは、米NPO 研究機関コンファレンス・ボード が5000世帯を対象に行った調査の結果である。1995年の同調査では、約60%の労働者が満足を示したが、現在は50%と10ポイント低下。そのうち非常に満足と回答したのは14%に過ぎない。
通勤や同僚との関係については、大多数の労働者が満足しているが、会社のボーナス制度、昇進システム、教育訓練制度には強い不満を持っている。また、仕事をするのは収入のためと割り切っている労働者は約25%いる、と同報告書は指摘している。
仕事の満足度が低下した主な背景として、技術の急速な変化、生産性向上への圧力、労働者の意識の変化が挙げられる。労働者の意識変化の背景について、同報告書は「ベビーブーマー世代の労働者が大量に退職し、若い労働者の割合が増えた。若い世代は仕事満足度が低く、これまでの労働者とは異なる価値観を持つ。この世代交代によって、企業の人事労務管理に新しい課題が提起されるであろう」と解説している。
仕事満足度は全ての所得階層で下がったが、最も満足度が下がったのは年収25,000ドルから35,000ドルの世帯主で、55.7%から41.4%への低下であった。一方、年齢別に見ると、最も満足度が低下したのは、35歳~44歳の年齢層で60.9%から49.2%に下がった。
従業員の不満が高まる背景として、アウトソーシングや、エンロンやワールドコムなどによる企業スキャンダルの影響を指摘する声もある。従業員の仕事満足度低下に対し、企業が適切な対応を怠ると、長期的には企業経営に支障をきたす恐れがあると、ある専門家は指摘している。従業員が意欲を持って働けるような環境の整備や、従業員を「人的資源」とみなし、教育訓練によって労働者の質を高める措置が企業に求められていることが示唆されている。
参考
- USA Today (February 28, 2005). Half-full or half-empty? 50% of workers satisfied with jobs.
- コンファレンス・ボード ホームページ
- 谷本寛治「CSR経営企業の社会的責任とステイクホルダー」(2004)
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