経済社会の最近の動向と企業経営者が抱える課題

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係統計

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  • 国別労働トピック:2005年5月

最近の経済社会動向

2004年のマレーシアの国内総生産額(GDP)は、7.1%を記録した。この数字は、2003年の5.3%よりも2%近い伸びを記録したことになる。世界的な原油価格の高騰による米ドル低下にかかわらず、マレーシア経済は強固な経済基盤によりその影響を直接うけることなく安定を維持することができた。ただし、輸出に関しては、電気・電力部門が足を引っぱるかたちで低成長を記録している。

2005年は、民間部門が経済成長の機動力となり、6%の成長を見込んでいる。貿易収支については外国直接投資の緩やかなリバウンドにより貿易黒字となることが予想される。ただし、物価上昇率については2.5%の上昇が予想される。中国経済のハードランディングや外国直接投資フローの減速により米国が3%、欧州連合や日本が2%の経済成長と予想される中、マレーシアはそういった国際経済の影響を直接うけることは少ないといえる。

雇用就業状況については、2004年の失業率は3.5%であった。労働市場参加率は2003年が67.3%であったところ、2004年は68.2%と上昇しており、女性の労働市場参加率が向上していることが特徴である。2004年1月から7月の間に1万3693人がリストラされた。その6割が製造業、3割がサービス業であった。

生産性向上については、従業員一人当たり労務コストと製造業における単位労務コスト(賃金)の緩やかな改善の傾向が見られる。2004年のマレーシアは、IMD国際競争力年鑑において世界60カ国の中で単位労務コストが上位6番目であった。

労働生産性は、製造業で13.1%上昇しているが、それは輸出産業、主に高付加価値産業の国際的下請け需要によるものである。製造業での生産高は18.6%の伸びを示し、セールスも18.6%の伸びを示している。その結果、労働者の実質賃金も5.1%上昇している。政府は、主要パフォーマンス指標を設定し、生産性拡大に貢献している。また、生産性連動賃金は生産性改革のひとつの方法として普及しつつある。

2004年は1月から7月までに3万3446人の不法外国人労働者が国外強制追放になった。2005年2月28日に終了したアムネスティー計画の下で、さらに40万人の不法滞在外国人が存在していると国務省は発表している。

最近の労使関係の動向

マレーシアでは、政府、労働組合、経営者による三者協議が行われ、協調的労使関係構築の努力が続けれられているが、2004年の労使紛争状況は、ストライキ件数そのものは前年より1件増えたにとどまるものの、紛争参加人員が前年の57名から279名に増えるなど大規模化していることが目立つ。また、労働損失日数も114日から3262日に増加しており、長期化していることが指摘される。

2001年から2004年の労使紛争状況
  2001年 2002年 2003年 2004年
ストライキ数(件) 13 4 2 3
ストライキ参加人数(数) 2,209 506 57 279
労働損失日数(日) 5,999 1,638 114 3,262
ピケ等(件) 26 21 23 20

経済社会の発展と経営者の役割

マレーシアでは、未解決の問題の解決をいかに処理していくかをめぐり、人的資源省労使関係部および産業裁判所などに労使がそれぞれ提案を行っている。経営側は、マレーシア経営者連盟(MEF)がこれにあたる。MEFは、マレーシアにおける労使関係の改善のために、経験豊かな労使関係専門官を配置する必要性を提案し続けている。また、2005年度予算協議を含む大臣や政府機関との対話や全国労使関係委員会に参加を通じ、マレーシアの国際競争力確保の側面からどのようにビジネスを実施すべきか、外国人労働者の登用と生産性連動賃金制度の実施、失業保障の問題等についても意見具申を行っている。

人的資源管理の側面でも、MEFは、高等教育省および全国生産性機構に対して提言を行っている。また、労働市場における需要と供給のミスマッチ、競争力の確保、訓練と失業者の保障など国内の問題に積極的に取り組んでいる。Tn Hj Md Jafar Abdul Carrim MEF会長は第三次産業基本計画の中、人的資源管理部会の部会長を務める。

MEFは、マレーシアでは実態に即して労働法を見直す必要があると考えている。労働法見直し委員会を設置し事例研究を積極的に進めている。この委員会では、急速な産業化と国際化による発展のための2020年将来ビジョンを議論している。

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