「1ユーロジョブ」に対する批判
ドイツで長期失業者に働く場を提供する目的で設けられた「1ユーロジョブ」に対し、公共サービス労働者を組織する労働組合Ver.di(ヴェルディ)などから批判が出ている。この制度は、労働市場改革法である「ハルツ第Ⅳ法」の中で規定され、いわゆる生活保護的な意味での「就労機会」の創出を図るもの。主に地方自治体などが、社会福祉、市民サービスなどの仕事の場を提供し、役務提供者は失業給付Ⅱに基づく給付金に加え時間あたり1~2ユーロの手当を受け取る。しかし、実際には自治体の通常業務を肩代わりさせ、「通常の雇用関係を脅かす」ケースが見られるという。
「1ユーロジョブ」制度の目的は、長期失業者が再び労働市場に復帰するための第一歩としての就労機会の提供であり、本来その役務は追加・補助的かつ公益的なものである。類例としては、兵役拒否者が代替として従事する公共福祉サービスがあげられる。
Ver.di役員のヴェッツエル氏は、「ヴエストファーレン・ブラット」紙で、自治体の人員削減と予算不足が「1ユーロジョブの誤った運用を招いている」とし、その対象となる役務があいまいであると指摘。また、失業者に対するケアを伴う、必要かつ意味のある就労機会提供がほとんどないと批判した。
Ver.diが集めた事例では、「1ユーロジョブ従事者が自転車・散歩道の修復をさせられた」(テューリンゲン州)、「40人の1ユーロジョブ従事者がユニフォーム姿で、資源ごみの容器を空けたり公園内の片づけをさせられた」(フランクフルト市)など従事させる役務自体を問題とするケースや、「民間の患者輸送施設会社が、輸送車の専任ドライバーの代わりに病院に派遣されていた1ユーロジョブ従事者を配置した」(グンマースバッハ市)といった、1ユーロジョブになじまない公共業務のケースなどが見られる。Ver.diはこのような事例から、「これまで全国で創出された11万4000の1ユーロジョブの半数以上が不正労働と認められる」としている。
連邦経済労働省はこのような批判に対し、1ユーロジョブに相当する追加・補助的業務は「意味のある公益的な仕事だ」と述べ、さらに若年失業者に対しては職業教育が同時に組み入れられるとしている。クレメント経済労働相はかつて、長期失業者の20%(少なくとも60万人に相当)に1ユーロジョブを提供できるとしていた。しかし、長期失業者対策としての同制度を軌道に乗せるには、自治体の運用実態のチェックなど、課題が横たわっているといえそうだ。
参考レート
- 1ユーロ=135.28円(※みずほ銀行ウェブサイト
2005年4月28日現在)
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