世帯と就業状況
―フランスにおける四半世紀の間の変化

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2005年4月

2005年1月、INSEE(国立統計経済研究所)は、フランスにおける「世帯と就業状況」に関する分析結果を発表した。主な内容は、以下の通り。

世帯ごとの就業状況の変化

  1. 概観

    就業可能な者(15歳から59歳で、学生および年金受給者以外)が少なくとも1人以上いる世帯のうち、就業し得る家族全員が就労している世帯の割合は、増加傾向にある(1975年は56.8%、2002年は67.8%)。

    一方、有業者が皆無の世帯(無業者 のみの世帯)も増加している。1975年には6.3%であったのが、2002年には12.2%へと倍増した。また、失業者(注1)の増加・失業の長期化などにより、失業者のみの世帯(注2)の割合も1975年の0.9%から2002年には3.5%へと大幅に増加した。

    なお、有業者と無業者が混在する世帯については、減少傾向にある。これは、先進諸国で共通にみられる現象とされる。

  2. 片親世帯

    片親世帯に限ると、有業者が皆無の世帯の割合が、大幅に増加している(1975年は9.6%、2002年は25.8%)。特に、小さい子どもがいる世帯で、その傾向は顕著である。3歳未満の子どもがいる片親世帯で、有業者が皆無の世帯の割合は、1975年には12.9%であったのに対し、2002年では、59.1%にまで増加している。3歳から5歳の子供がいる片親世帯では、有業者が皆無の世帯の割合は、1975年が8.9%で、2002年には36.8%となっている。

  3. 共働き世帯

    夫婦とその子供から成る世帯のうち、就業可能な家族全員が働いている家庭(多くは夫婦が共働きの世帯)の割合は、1975年の45%から2002年には63%へ上昇した。しかし、小さい子供のいる家庭では、「夫婦のうち一方が働き、もう一方が働かない」という世帯の割合が、かなり増えている。また、子供が多ければ多いほど、夫婦のうちどちらかが就労しないというケースが多い。子どもがいる夫婦では、「仕事」と「育児」という役割を、夫と妻で分担していることがわかる。

  4. 学歴と世帯の就業傾向

    失業統計と同様に、学歴や年齢により、世帯ごとの就業の傾向が異なる。

    子供がいる夫婦世帯のうち、夫婦とも無業者である世帯の割合は、中学校卒業以下の学歴の場合、1978年から2002年の間に、3.1%から9.5%へと急増。それに対して、バカロレア(大学入学資格)以上の学位所持者がいる家庭で、夫婦共に無業の世帯の割合は、常に3%を下回る水準である。低学歴の夫婦は、雇用状況の悪化の影響を大きく受けており、低学歴と失業(無業)の繋がりの強さもうかがえる。

  5. 女性と世帯の就業傾向

    1970年代には、無業の女性のうち95%が、「就業の意思のない」者であり、「失業者」にあたる者はわずか5%であった。しかし、2002年には、無業の女性のうち21%が「失業者」である。

    また子供がいる夫婦世帯のうち、片稼ぎ世帯すなわち夫婦の一方しか就業していない家庭についてみると、1975年にはその98%が、「夫が就業し、妻は働かない(主に専業主婦)」ケースであった。この割合は、徐々に減少し、2002年には、88%となっている。

    さらに、片稼ぎの原因をみると、「失業」がその原因である世帯の割合は1975年にはわずか6%であったが、この割合は、徐々に増加し、1987年には22%、1994年には、30%を超えた。ただしその後、この割合は減少。その理由として、政府による補助金の1つである養育手当の受給条件が変わったことより、女性が労働市場から退出したことが挙げられる(注3)。

    しかし、長期的にみれば女性の就労意欲は年々高まっており、労働市場の情勢が厳しいことや、夫との役割分担上、やむを得ず家事労働に従事している者が多いと、INSEEは分析している。

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