欧州委員会、人口動態の変化とその影響に関する報告書を発表

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  • 国別労働トピック:2005年4月

欧州委員会は、3月17日、EUの人口動態の変化とその影響に関する報告書(グリーンペーパー)を発表した。報告書によると、EUでは、現在から2030年までの間に生産年齢人口が2080万人(6.8%)減少し、2030年にはおよそ2人の現役労働者(15~65歳層)が1人の高齢者(65歳以上)を支えなければならなくなる。また、子供や若年者の数は、現在より1800万人減少する。これらの影響は、高齢者や年金の問題に留まらず、企業の事業展開、労働組織、都市計画、住宅設計、公共輸送、投票行動、購買力の基礎構造など、生活のほぼすべての面に及ぶ。

人々は、より健康で長生きするようになり、平均寿命が上昇する。ベビーブーマー世代が高齢化するにつれ、2030年までに高齢者層(55歳~64歳)の人口は2400万人増加する。80歳以上の人口は、2030年に3470万人(現在は1880万人)となり、2050年までに180%増加する。

EUの合計特殊出生率は、2003年に人口を維持できる水準以下の1.48に低下した(女性1人当たりの子供の数は2.1人)。報告書よると、EUの人口は、2025年の4億6950万人から、2030年には4億6870万人に減少する。EUの3分の1及び新規加盟国のほとんどの地域においては、1990年代後半に既に人口が減少に転じていた。

2005年から2030年の間に、65歳以上の人口は52.3%(4000万人)増加し、15~64歳層の人口は6.8%(2080万人)減少する。

生産年齢人口に依存して生活する若年者や高齢者の生産年齢人口に対する割合は、2005年の49%から2030年には66%上昇する。生産年齢人口の減少を補うためには、70%以上の就業率が必要となる。

報告書は、これら人口動態の変化が、社会の繁栄、生活水準、世代間の関係について重要な影響を及ぼすとしている。現代の欧州は、出生率の向上なくして経済成長を実現することはできない。出生率の低下は、雇用への遅いアクセス、不安定な仕事、高額の住宅費と優遇措置の欠如など、家族の選択に関する制約の結果である。家族手当、両親休暇、育児休暇、男女均等待遇などの優遇措置は、出生率に好ましい影響を与え、いくつかの国で見られるように雇用、とりわけ女性の雇用を増加させる。

しかし、ユーロバロメーター(Eurobarometer)の2004年の調査によると、男性の84%が両親休暇(育児休暇)を取得したことがない、または権利を与えられても取得するつもりはない、と回答している。報告書は、出生率の低下は政治のみでは解決できず、女性が出産後に「悪い母親」として職場復帰し、「軟弱な男性」のみが子供の世話をするという社会の実態を変えていかなければならないと主張する。

多くの課題が加盟国の責任にかかっているが、それらはEU全体の関心事でもある。欧州委員会は、ワーク・ライフ・バランスや機会均等、移民の管理に関するEUの政策がいかに人口増加に貢献するかについて、7月にブリュッセルに専門家、ハイレベルの政策担当者、市民社会代表を集め、グリーンペーパーに続く討議を行いたいとしている。

出所

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