2005年経済社会発展のための政府政策目標
第10期全国人民代表者会議第3回会議報告より

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2005年4月

2005年3月3日から14日までの12日間、中国の国会にあたる全国人民代表者会議(全人代)が開催された。全人代は毎年1回3月に開催されるもので、間接選挙で選ばれた全国各省、直轄市からの2900名以上の代表者により、当該年度の法案、予算、国家の最重要政策などが議論され、決定される。

今年の全人代では、台湾問題で「反国家分裂法」を成立させるなど政治的話題が主な焦点としてマスコミで取り上げられたが、経済社会政策についても課題解決と具体的実施政策、その措置への積極的取り組み方針が議論され確認されている。特に、2005年は「第10次5カ年計画(2001年~2005年)」の最終年にもあたるため、トウショウヘイが唱え、現在中国の経済社会発展のバックボーンとなっている「3つの代表」の実現と中国経済社会の持続的発展可能性が問われる年であるといえる。

2004年の中国は、国内総生産が13兆6515億元に達し、経済成長率も9.5%という高い数字を記録することができた。WTO加盟後、外資の誘致導入も順調に進展し、改革開放以降の構造調整の課題であった国有企業の下崗(リストラ)労働者の再就職の問題にも積極的に取り組み、新規就職を含め都市では980万人が新規に就職を実現し、都市登録失業率も4.2 %と当初目標の4.8%を大きく下回ることができた。

このような実績を背景に、政府は2005年度においても、政府による経済のマクロコントロールの下で社会主義市場経済における経済システムの調整をさらに進め、次の「第11次5カ年計画」の策定を意識しながら、経済成長を達成するための戦略を強化していく方針を明らかにしている。すなわち、経済構造の調整を早急に進め、農業、教育・科学技術・文化・医療、社会保障、インフラ整備、環境保全等を強化していくとともに、近年の民間投資の拡大を背景とした社会全体の投資規模拡大傾向やインフレ圧力に十分注意を注ぎ、財政においては、積極拡張型から適正を意識した穏健財政へ転換を行うことが強調された。貧困扶助対策など経済社会事業の脆弱部分の強化にも配慮していく方針である。

具体的政策目標としては、環境資源の需要と供給関係に配慮しながらも、国民総生産を8%前後とすること、農業税の減額措置や消費物価水準の4%台の安定をはかること、貧困対策として地方政府への財政援助を強化することをなど経済の持続可能な発展を意識した政策方針が採択された。また、労働関連分野では、失業者の再就職支援や労働市場の整備、安全な職場の確保の方針が示されている。

中央政府の発表によると、今大会では、下記の具体的項目が合意された。

  1. 都市での労働力の新規増加見込み、1100万人の退役、除隊軍人や高校、大学卒業生等の求職者および1300万人の失業者と下崗労働者の存在など都市部労働者数の増加圧力を考慮しながらも、900万人の都市での新規就業を実現し、失業率を4.6%に抑えるなど積極的就業政策の実施を国全体と達成していく。
  2. 石油価格の値上がり、土地問題など生産関係分野における改革、人件費コストの高騰など消費物価の上昇を懸念させる要因のあるなかにもかかわらず、その水準を4%に抑える。
  3. 国際収支のバランスを図る。
  4. 中央財政赤字は3000億元であるが、前年比で198億元減らす。また、長期国債の発行は、前年比300億元減らした800億元とし、経常建設投資額を100億元ふやす。
  5. 農業税の減額をはかり、全国的規模で592におよぶ地方での貧困対策を強化する。牧畜業に対しては税を全面的に廃止する。農業での廃止は2006年を目指す。
  6. 財政困難な県への補助を目的に中央財政を150億元増額する。
  7. 再就職支援のため、109億元を中央財政が予算措置する。これは、前年比で26億元の増額である。
  8. さらに国務院は、国有石炭鉱石業での安全技術の改善と地方の安全生産設備建設のため、30億元を予算化することを決定した。

また、懸案の「三農問題」について、温家宝首相は「農村の現代化無くしては全国的な現代化を達成できない」という考えのもと、1)農村改革、2)農村生産力の整備強化、3)農村での教育、科学技術普及のための社会事業、4)直接選挙の実施など民主化の推進など四つの項目を重点活動として政府は取り組む方針であることを記者会見の席上で明らかにしている。

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