ドイツで失業者数500万人突破-ハルツ第Ⅳ法施行が影響

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2005年3月

ドイツの05年1月の失業者数が、心理的なハードルとされていた500万人を突破した。失業者は対前月比57万3000人増の503万7000人、失業率は前月より1.1ポイント上昇し12.1%を記録。500万人超の水準は、直接的に比較できないものの、世界恐慌の影響を受けた1930年代前半の水準で、第二次大戦後では最高の数字だ。報道はセンセーショナルに響いたが、実際には、昨年以来専門家が繰り返し指摘してきたように、これまで生活保護に相当する「社会扶助」を受けていた人の一部が失業者に算入されたことが主な原因であり、今後は「ハルツ改革」と呼ばれる労働市場改革の推移と実際の失業データが、現行の労働市場政策を評価するカギとなる。

失業者の東西の内訳は、西独地域が326万6000人(失業率9.9%)、東独地域で177万1000人(失業率20.5%)で、人口の少ない東独地域の失業率が西独地域の約2倍に達している。東独地域では、すべての州の失業率が、メクレンブルク・フォアポンメルン州の23.5%からテューリンゲン州の19%までの範囲内に収まっている。西独地域では、北部で押しなべて失業率が高く(ブレーメン17.5%、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州12.7%、ニーダーザクセン州12.1%など)、南部ではバーデン・ヴュルテンベルク州6.9%、バイエルン州8.9%と相対的に低い。このような地域格差の傾向に、とくに変化は見られない。

「失業給付Ⅱ」受給者が増加要因

連邦雇用機関(BA)は前月比で増加した57万3000人のうち、34万6000人相当が、冬場に失業が高まる季節要因による上昇だったと分析している。また、失業者として新たに登録された失業給付Ⅱ受給者が22万2000人にのぼったと説明している。

この新たなカテゴリーの登録者は、「ハルツ第Ⅳ法」(失業給付期間を過ぎた後に支給されていた「失業扶助」と生活保護に相当する「社会扶助」を「失業給付Ⅱ」に一本化)が1月1日に施行されたことによって生じた。かつての制度では、失業給付(新制度では「失業給付Ⅰ」となった)の期間を終えた長期失業者は、期間の制限のない「失業扶助」を受け取り、「社会扶助」は「失業扶助」とは関連づけされずに存在していた。1月からは、就業能力があり資産査定をパスした人が失業給付Ⅱを受け取る。資産が少なく就業もできない人は、「社会扶助」を引き継ぐ「社会給付」の対象者となる。

今回の失業統計発表後、シュレーダー首相、クレメント経済労働相らは労働市場改革の続行を強調。これに対し、野党側からは、CSU(キリスト教社会同盟)党首のシュトイバー氏(バイエルン州首相)やFDP(自由民主党)のヴェスターヴェレ党首らが、政権の「失政」に対する批判の声をあげた。「高失業」は2月20日に行われたシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙の争点の一つとなったが、選挙を前にZDF(第二国営放送)が実施したアンケートによると、同州の雇用創出を期待できる政党として、5年前には与党SPD(社会民主党)が38%、野党CDU(キリスト教民主同盟)が29%という回答を得ていたのが、現時点ではSPDが21%に落ち込み、CDUは36%に上昇している。このように、労働市場改革の成否については、厳しい目が向けられる状況が続きそうだ。

ハルツ第Ⅳ法の施行後の運用状況についても、さまざまな問題が指摘されている。これまでの社会扶助対象者に対して、失業給付Ⅱと社会給付のいずれの対象者とするかについての判断が、担当する社会福祉事務所によって正確になされず、失業者のカウントが増えてしまう懸念が出ている。その影響で2月の失業者数が550万人に達する可能性も取り沙汰されている。また、ヴァイゼ連邦雇用機関長官が「55歳以上の資格をもたない東独地域の失業者は、ほとんど職の紹介を受けられないだろう」と発言したと報道されたことを受け、同氏が今後高齢者に対する取り組みを進めると弁明するなど、高齢者の取り扱いも問題となっている。

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