EUの雇用・社会問題・機会均等政策

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  • 国別労働トピック:2005年12月

バローゾ欧州委員会が発足して11月22日で丸1年が経過したのを機に、ヴラジミール・シュピドラ雇用・社会問題・機会均等委員は、担当分野の政策のこの1年を振り返るとともに将来の計画について発表した。

雇用・社会問題・機会均等分野の成果

欧州委員会が10月に発表した年金のポータブル化に関する指令案は、企業年金に影響を及ぼし、法定年金と同様の柔軟性を与える試みである。指令案は、EU労働者および加盟国の経済と労働市場の双方を支援するよう設計されている。年金のポータブル化はまた加盟国間の移動の問題であり、労働者が新しい技術を身につけるために転職することやグローバル化した職場環境に適応することを容易にする。

リストラクチャリングに関する欧州委員会の春の報告書は、欧州社会基金の次期期間(2007~2013年)において、雇用の増大、経済的・社会的結束強化のための資金と政策の連携を提案した。報告書は、1)労働者と企業の適応能力の向上、2)雇用へのアクセス、失業の予防、職業生活の延長、労働市場への参加の促進、3)障害者の職場における統合の促進による社会的包含の強化および差別との闘い、4)雇用および結束の分野における改革のためのパートナーシップの促進――の4つの重要分野に焦点を当てている。報告書はまた、グローバル化による変化で最も悪影響を受ける人々を支援するために、「グローバル化調整基金」の創設を提案した。

10月末のEU非公式首脳会議は、欧州の現代化に貢献する共通の価値観として、EUの「社会的側面」に焦点を当てた。「グローバル化調整基金」を具体化するとともに、連帯のための構造基金、とりわけ社会基金の重要性を確認した。多くの加盟国・地域が、労働者と企業により魅力的な市場、就業率の向上、質の高い教育などのEUの目標を達成するためには、基金による支援が極めて重要であるとしている。また、EUが直面する最大の挑戦の1つに人口動態の変化を挙げた。これから2030年までの間に、2100万人の労働者、すなわち労働力人口の7%が減少する。2011年には生産年齢人口(15~64歳)が急激に減少し、65歳以上人口が顕著に増加する。人口動態に関する最近のグリーン・ペーパーは、この問題を優先課題とし、まもなく発表する報告書で建設的な提案を行うとしている。

欧州委員会は、ジェンダー問題に関する情報提供の強化を目的としたジェンダー平等研究所の創設を提案した。民間部門における男女の賃金格差は17%であり、女性の非労働力率は男性よりも高く16%となっている。リスボン戦略の女性の就業率目標を達成する上で、これらの統計数値の改善がきわめて重要となっている。傾向と動機付けに関するデータが依然として不足しており、同研究所がEU政策の青写真の検討に貢献することが期待される。

将来の計画

非労働力人口が9200万人のEUにおいては、非労働力の活用が差し迫った問題となっており、非労働力の活性化に関する報告書が年内に発表される予定である。EUの報告書「欧州の雇用(2005年)」は、非労働力人口の14%(1300万人)が就職を希望していると指摘する。欧州の労働力人口が減少に転じようとする現在、この未開発の巨大な潜在的労働力が重要視されている。

労働時間指令の改正案に関しては進展がなく、2005年6月、前議長国ルクセンブルグは、指令案を常任代表委員会に差し戻した。欧州委員会は、現議長国イギリスが12月末までに、妥協案の検討を促進するよう期待している。

欧州委員会は、2006年5月以降のEU新規加盟国労働者の移動の自由に関する経過措置について検討するため、加盟国の代表が参加する高級グループを組織した。同グループは、2006年2月までに現状を評価した報告書を取りまとめる。加盟国は、4月までに次期(2006年5月~2009年4月)の移行措置について欧州委員会に通知する。経過措置の決定権は基本的に加盟国が握っている。最新の統計では、現在も制限措置を採用していない3加盟国(イギリス、アイルランド、スウェーデン)は損害を被ってはいないという結果が示された。スウェーデンへの労働力の流入は予想されたよりも少なく、2004年5月から12月の間に、新規加盟国労働者による労働力人口の増加はわずか0.07%であった。イギリスにおいては、2004年5月から2005年6月の間に承認された福祉手当申請者の数はわずか50人程度にとどまり、昨年夏以来、職を求めて東欧諸国から来た配管工の数も95人に過ぎなかった。労働者の移動の自由は、EUの4つの自由のうちの1つであり、すべての人々によって享受されなければならない。いくつかの加盟国は、移行措置の廃止を示唆しているがドイツ、オーストリアなど熱心ではない。EUは2006年を「労働者の移動性」年に指定している。

EUは、2007年を「すべての人々のための平等」年に指定した。現行の差別禁止法はEUにおいて期待された効果を発揮していないと懸念されている。ドイツとルクセンブルグは、最近の2つの差別禁止指令を国内法に全く取り入れていない。欧州委員会はほぼすべての加盟国の法制を検証し、すべての加盟国において問題を発見した。特定の加盟国に対しては、誤った法制の履行を是正するための法的措置を現在検討している。

出所

  • 欧州委員会ホームページ

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