若者の就職難と企業の人材確保

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2005年1月

長引く景気の低迷により、雇用情勢は来年さらに悪化するとの見通しが国内シンクタンクにより示された。特に若年失業は最大の懸案の一つだが、改善の兆しはみられない。その背景には求職と求人のミスマッチが指摘されている。応募者は中小企業を避けて大手企業に集中するが、企業側からみれば求める人材の確保は必ずしも容易ではないようだ。

政府統計によれば若者の失業率は7.2%(2004年11月現在)で、全体の3.3%の2倍を超えている。年明けには9%に達するとの分析もある。若年失業者数は35,5万人、失業者全体の46%を占めるが、「非経済活動人口」すなわち就職試験を絶え間なく受け続けている者や求職活動を断念した者を含めると、現実には90万人を超えているとの見方もある。

求人の大半を占める中小企業の職場は、高学歴の若者達により「3D」(日本でいう3K)として忌避され、その結果欠員が生じている。労働部の調査では、300人未満の企業の人員不足率は2.9%、不足数は16万8000人に上っている。一方大企業の求人には応募者が集中し、倍率が数百倍を超えることもある。

大手企業の人材確保方法

多数の応募者の中から優秀な人材を選抜するため、大手企業のなかには採用面接に独自の方法を用いているところもある。朝鮮日報(web版・2004年11月18日付け)が紹介するユニークな採用面接の例は、簡単には答えられないような質問を浴びせかけるという「ストレス面接」(LG火災)、15分間で自分の夢を込めた芸術作品をつくる(ウリ銀行)、男はサッカー、女はドッジボールをさせて根性と協調性をみる(産業銀行)などだ。

企業が求める人材を確保するために、応募を待つのではなく自ら育成に取り組む例もある。大企業と大学が協力した人材育成プログラムが、いくつかの大学で導入されている。例えばLG電子が高麗大と連携して平成17年度から導入する「注文型修士教育課程」は、LG側が教育課程を設計するとともに、同課程への進学者の選抜、学費と生活費の支援を行い、修了者をLGに採用するというものだ。このほかLGイノテック、サムスン電子、韓進重工業も、同種の人材育成に乗り出している。企業の地方工場での人材を採用するため、地方大学との協力がより活発だという。

職業専門校の人気上昇

一方若者の間では就職難を背景に、職業教育の専門学校の人気が急速に高まっている。ソウル市教育庁によると、職業専門校の2005年度の入学志願倍率は1.07倍で、1997年以来初めて1倍を超えた。教育庁は人気上昇の理由として学科の改編、産業需要に合った教育プログラム、大学進学機会の拡大をあげている。しかしそれだけではなく、昨年の職業専門校学生の就職率が89.6%という高率だったことも大きく影響しているだろう。労働部によれば、普通高校から職業専門校に転校したり、普通高校に在学しながら産業情報学校や公共職業訓練所などに通う生徒が増えているという。

こうした動きは若者の職業能力を底上げするうえで有効だが、失業問題の解決のために真に求められているのは雇用創出だろう。しかし韓国銀行が発表した「2005年の経済見通し」によれば、経済成長率は昨年の4.7%から低下して4%にとどまる。しかも一定の成長率が維持されても、それは引き続き「雇用なき成長」となることが危惧されている。

参考

  • The Korea Times(web版)(2004年12月13日付け)
  • NNA Business Mail

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