労働保障監察条例(全文)

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2005年1月

第一章 総則

第一条
労働和社会保障(以下は労働保障という)の法律、法規と規則を実施し貫徹させ、労働保障監察業務の規範化を図り、労働者の合法的権益を守るために、労働法と関係法律にしたがい、本条例を制定する。
第二条
企業と個人経営者(以下は事業主という)は労働保障監察を行う際に、本条例を適用する。 職業斡旋機構、職業技能訓練機構と職業技能鑑定機構に対して労働保障監察を行う際に、本条例に依拠して行われる。
第三条
国務院労働保障行政部門は全国の労働保障監察業務を管轄する。県級以上の地方各級の人民政府労働保障行政部門はその行政区域内の労働保障監察業務を管轄する。
県級以上の各級人民政府の関係部門は各自の職責に依拠し、労働保障行政部門の労働保障監察業務をサポートし補助する。
第四条
県級、区をもつ市級人民政府の労働保障行政部門は監察法律を実施する条件に符合した組織に労働保障監察の実施を委託することができる。
労働保障行政部門と委託を受けて労働保障監察を実施する組織の中の労働保障監察員は相応の審査或いは試験によって採用されるべきである。
労働保障監察証明書は、国務院労働保障行政部門の監督下で交付される。
第五条
県級以上の地方各級人民政府は労働保障監察業務を強化すべきである。労働保障監察が必要とする経費は当該レベルの財政予算の中に設ける。
第六条
事業主は労働保障法律、法規と規則を遵守し、労働保障監察に協力すべきである。
第七条
各級工会(労働組合)は法に依拠し、労働者の合法権益を維持保護し、事業主の労働保障法律、法規と規則の遵守状況を監督すべきである。
労働保障行政部門は労働保障監察業務の中で工会(労働組合)の意見と建議の聴取に努めるべきである。
第八条
労働保障監察は公正、公開、効率、庶民に利する原則を守るべきである。
労働保障監察の実施には、教育と処罰を結び、社会監督を受けるべきである。
第九条
いかなる組織あるいは個人も労働保障法律、法規或いは規則を違反する行為に対して、労働保障行政部門に通報する権利を有する。
労働者は事業主が自らの労働保障の合法権益を侵害したと思う場合、労働保障行政部門に提訴する権利を有する。
労働保障行政部門は通報をする人の秘密を保持すべきであり、通報事実が正しい場合、重大な労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為の取締に主要な手がかりと証拠を提供した通報人に奨励を与えるべきである。

第二章 労働保障監察の職責

第十条
労働保障行政部門は労働保障監察を実施し、以下の職責を履行する。
  1. 労働保障法律、法規と規則を宣伝し、事業主の貫徹と実行を督促する。
  2. 事業主の労働保障法律、法規和規則の遵守状況を検査する。
  3. 労働保障法律、法規と規則の違反行為の通報と提訴を受理する。
  4. 法に依拠し労働保障法律、法規と規則の違反行為を是正し取り締る。
第十一条
労働保障行政部門は下記の事項に対して労働保障監察を実施する。
  1. 事業主の内部労働保障規則制度の制定状況。
  2. 事業主と労働者が締結する労働契約の状況。
  3. 事業主の児童労働者使用禁止規則の遵守状況。
  4. 事業主の女性労働者や未成年労働者の特殊労働に対する保護規定の遵守状況。
  5. 事業主の業務時間と休憩休暇規定の遵守状況。
  6. 事業主の労働者賃金の支給と最低賃金基準の実施状況。
  7. 事業主の各種の社会保険の加入と社会保険費納付の状況。
  8. 職業斡旋機構、職業技能訓練機構と職業技能審査鑑定機構の職業斡旋、職業技能訓練と職業技能審査鑑定に対する国家規定の遵守状況。
  9. 法律、法規が規定したその他の労働保障監察事項。
第十二条
労働保障監察員が法に依拠し労働保障監察職責を履行する場合、法律の保護を受ける。
労働保障監察員は職務に忠実であり、公平に法律を執行し、勤勉清廉であり、秘密を保持すべきである。
いかなる組織あるいは個人も労働保障監察員の法律や規律違反行為に対して、労働保障行政部門あるいは関係機関に通報、提訴する権利を有する。

第三章 労働保障監察の実施

第十三条
事業主の労働保障監察は、事業主が使用する労働者の所在地の県級あるいは区を設ける市級の労働保障行政部門に管轄される。
上級労働保障行政部門は業務需要にもとづき、下級労働保障行政部門が管轄する案件を取り調べ処理することができる。労働保障行政部門は労働保障監察管轄に対して争議を発生したことに対して、共同の上級労働保障行政部門に報告し指定管轄を要請する。
省、自治区、直轄市人民政府は労働保障監察の管轄の具体方法を制定することができる。
第十四条
労働保障監察の事業主に対する日常の巡視検査、審査は、要求にしたがい届けられた書面の資料および通報や提訴を受けるなどの形式によって行われる。
労働保障行政部門が事業主には労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為があり、調査と処理が必要と思った場合、即時に立案すべきである。
労働保障行政部門あるいは委託を受けて労働保障監察を実施する組織は通報、提訴のメールボックスや電話を設置すべきである。
労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為によって引き起こされた団体事件に対して、労働保障行政部門は緊急対応予備方案にしたがい、迅速に関係部門と共同で処理すべきである。
第十五条
労働保障行政部門は労働保障監察を実施し、下記の調査、検査措置をとる権利を有する。
  1. 事業主の労働場所に立ち入り検査をする。
  2. 調査、検査事項について関係人員に取り調べる。
  3. 事業主が調査、検査事項の関連書類を提示し、解釈と説明を行うことを要求する、必要のときに調査取調書を出すこともできる。
  4. 記録、録音、録画、撮影あるいは複製などの方式によって関係状況と資料を収集する。
  5. 会計事務所に事業主の賃金支給、社会保険費納付の状況に審査することを委託する。
  6. 法律、法規が規定した労働保障行政部門がとることのできるその他の調査、検査措置。
    労働保障行政部門は事実が明確で、証拠が確定しており、その場で処理できる労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為に対してその場で是正する権利を有する。
第十六条
労働保障監察員は調査や検査を行う際に、2人以上でなければならず、労働保障の標識をつけ、労働保障監察証明書を提示すべきである。
労働保障監察員が行う労働保障監察事項は本人あるいはその親族とは直接利害関係がある場合、回避すべきである。
第十七条
労働保障行政部門が労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為に対して調査を行う場合、立案の日から60の業務日以内に完成すべきである。状況が複雑であり、労働保障行政部門の責任者に許可を受けた場合、さらに30の業務日を延長することができる。
第十八条
労働保障行政部門は労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為に対して、調査、検査の結果を踏まえて、以下処理を行う。
  1. 法に依拠して行政処罰を受けるべきものに対しては、法に依拠して行政処罰決定を下す。
  2. 改正すべきだが改正しないものには、法に依拠して改正を命令しあるいは相応の行政処理决定を下す。
  3. 情状が軽微かつ改正したものに対しては立案を取り消す。
    労働保障監察事項に属しない違法案件を発見した場合、即時に関係部門に移送し処理を行う。犯罪の容疑がある場合、法に依拠して司法機関に移送すべきである。
第十九条
労働保障行政部門が労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為に対して行政処罰あるいは行政処理を决定する前、事業主の陳述、弁明を聴取すべきである。行政処罰あるいは行政処理决定を行う場合、事業主に法に依拠して行政再議を申請しあるいは行政訴訟を提起する権利を享有することを告知すべきである。
第二十条
労働保障法律、法規あるいは規則を違反した行為で、2年以内に労働保障行政部門に発見されたことがなく、通報、提訴されたこともなかった場合、労働保障行政部門はさらに取り調べたり処罰したりはしない。
前項で規定した期限は、労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為が発生した日から計算する。労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為が連続あるいは継続状態にあるものは、違反行為が終了した日から計算する。
第二十一条
事業主が労働保障法律、法規あるいは規則を違反し、労働者に損害を与えた場合、法に依拠して賠償責任を引き受ける。労働者と事業主が賠償について争議が発生した場合、国家の労働争議処理の関連規定に依拠して処理を行う。
労働争議処理手順を通じて解决すべき事項あるいはすでに労働争議処理手順にしたがい懲戒、仲裁を申請しあるいはすでに訴訟を提起した事項に対して、労働保障行政部門は提訴した人に労働争議処理あるいは訴訟の手順にしたがい処理することを告知すべきである。
第二十二条
労働保障行政部門は事業主の労働保障法律と誠実信頼を遵守するファイルを構築すべきである。事業主が重大な労働保障法律、法規あるいは規則の違反行為があった場合、関連労働保障行政部門によって社会に公布する。

第四章 法律責任

第二十三条
事業主が下記の違反行為の一つがあった場合、労働保障行政部門によって改正を命令し、労働者一人あたり1000元以上5000元以下の基準にしたがって計算し、罰金を行う。
  1. 女性労働者に鉱山や地下労働、国家が規定した第四級肉体労働強度の労働あるいはその他の禁止される労働に配置すること。
  2. 月経期間中の女性労働者に高所、低温、冷水作業あるいは国家が規定した第三級肉体労働強度の労働に配置すること。
  3. 妊娠期間中の女性労働者に国家が規定した第三級肉体労働強度の労働あるいは妊娠期間に禁止される労働に配置すること。
  4. 妊娠7カ月以上の女性労働者に夜勤労働を配置しあるいはその業務時間を延長すること。
  5. 女性労働者の生育休暇が90日以下にすること。
  6. 1歳未満の赤子の哺乳期間にある女性労働者に、国家が規定した第三級肉体労働強度の労働あるいは哺乳期に禁忌されるその他の労働に配置し、およびその業務時間を延長しあるいは夜勤労働を配置すること。
  7. 未成年労働者に鉱山地下、有毒有害、国家が規定した第四級肉体労働強度の労働あるいはその他の禁止される労働に配置すること。
  8. 未成年労働者に対して定期的に健康検査を行わないこと。
第二十四条
事業主が労働者と労働関係を確立する際に法に依拠して労働契約を締結しない場合は、労働保障行政部門によって改正を命令する。
第二十五条
事業主が労働保障法律、法規あるいは規則を違反して労働者業務時間を延長した場合、労働保障行政部門が警告し、期限内に改正する命令を与え、侵害を受けた労働者一人あたり100元以上500元以下の基準で計算し、罰金を処することができる。
第二十六条
事業主が下記の違反行為の一つがあった場合、労働保障行政部門からそれぞれ期限内に労働者の賃金報酬、労働者賃金が当該地域の最低賃金基準を下回る差額の部分あるいは労働契約解除への経済補償の支給を命令し、期限を越えて支給しない場合、支給すべき金額の50%以上1倍以下の基準で計算し、労働者に賠償金の追加支給を事業主に命令する。
  1. 労働者の賃金をピンハネしあるいは理由がなく労働者賃金報酬を滞納すること。
  2. 労働者への賃金支給は当該地域の最低賃金基準を下回ること。
  3. 労働契約を解除したときは法に依拠して労働者に経済補償を与えないこと。
第二十七条
事業主が社会保険を扱う機関に納付すべき社会保険費の数額を申告するとき、賃金総額あるいは労働者人数を隠蔽した場合、労働保障行政部門によって改正を命じ、隠蔽した賃金額の1倍以上3倍以下の罰金を処する。
社会保険待遇を騙し取り、あるいは社会保険基金支出を騙し取る場合、労働保障行政部門によって返還することを命じ、騙し取った金額の1倍以上3倍以下の罰金を処する。犯罪をなす場合、法に依拠して刑事責任を追究する。
第二十八条
職業斡旋機構、職業技能訓練機構あるいは職業技能審査鑑定機関は国家の職業斡旋、職業技能訓練あるいは職業技能審査鑑定に関する規定を違反した場合、労働保障行政部門によって改正を命令し、違法所得を没収し、1万元以上5万元以下の罰金を処する。情状が厳重な場合、許可証を取り消す。
労働保障行政部門の許可を得ずに、職業斡旋、職業技能訓練あるいは職業技能審査検定を行う組織あるいは個人は、労働保障行政部門、工商行政管理部門によって国家の無免許経営処罰取締の関連規定にしたがい処罰し取締を実施する。
第二十九条
事業主が『中華人民共和国工会(労働組合)法』に関して、下記の違反行為の一つを有する場合、労働保障行政部門によって改正を命じる。
  1. 労働者が法に依拠して工会(労働組合)に参加あるいは組織することを妨害し、あるいは上級工会(労働組合)が労働者の工会(労働組合)設立を手助け指導することを妨害した場合。
  2. 正当な理由がなく、法に依拠して職責を履行する工会(労働組合)のスタッフを職場から移動させ、攻撃報復を行った場合。
  3. 労働者が工会(労働組合)活動に参加することでその労働契約を解除した場合。
  4. 工会(労働組合)スタッフが法に依拠して職責を履行することで労働契約を解除した場合。
第三十条
下記の違反行為の一つがあった場合、労働保障行政部門によって改正を命じる。第(一)項、第(二)項あるいは第(三)項が規定した違反行為があった場合、2000元以上2万元以下の罰金を処する。
  1. 理由がなく労働保障行政部門が本条例の規定に依拠して労働保障監察を実施することを拒み、妨害した場合。
  2. 労働保障行政部門の要求にしたがって書面資料を提出せず、事実真相を隠蔽し、偽証を提出しあるいは証拠を隠匿、壊滅した場合。
  3. 労働保障行政部門の改正命令を受けても改正を拒み、あるいは労働保障行政部門の行政処理决定の履行を拒んだ場合。
  4. 通報人、提訴人を攻撃し報復すること。
    前条の規定を違反し、治安管理違反行為を構成した場合、公安機関によって法に依拠して治安管理処罰を与える。犯罪に当たる場合、法に依拠して刑事責任を追究する。
第三十一条
労働保障監察員が職権を乱用し、職務をおろそかにし、私情にとられて不正を行い、あるいは職責履行の過程の中で知った商業秘密を漏洩した場合、法に依拠して行政処分を与える。犯罪に当たる場合、法に依拠して刑事責任を追究する。
労働保障行政部門と労働保障監察員が法律を違反して職権を行使し、事業主あるいは労働者の合法権益を侵害した場合、法に依拠して賠償責任を引き受ける。
第三十二条
本条例が規定した労働保障監察事項、法律、その他の行政法規が処罰に対して他に規定がある場合、その規定にしたがう。

第五章 付則

第三十三条
営業免許がないあるいは法に依拠して営業免許が取り消されたにもかかわらず、労働者を使用する行為がある者に対して、労働保障行政部門が本条例に依拠して労働保障監察を執行し、即時に工商行政管理部門に通報し取締を実施する。
第三十四条
国家機関、事業単位、社会団体が労働保障法律、法規和規則の執行状況に関しては、 労働保障行政部門がその職責にもとづき、本条例に依拠して労働保障監察を実施する。
第三十五条
労働安全衛生の監督検査は、衛生部門、安全生産監督管理部門、特殊設備安全監督管理部門などの関係部門が関係法律、行政法規の規定に依拠して執行される。
第三十六条
本条例は2004年12月1日から執行される。

(国際研究部 仮訳)

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