補充養老年金としての企業年金の積極展開への期待

カテゴリー:高齢者雇用労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年9月

WTO(世界貿易機構)に加盟して以来、各分野の法律の整備を進めており、今年に入ってから労働と社会保障の分野でも相次いで見直しが行われている。

そういった中で、2004年5月1日から、「企業年金試行弁法」「企業年金基金試行弁法」が施行されている。企業年金は、従来中国の社会保障体系の中で、労働法と国務院が制定する「企業職員のための養老年金に関する法律」を根拠法として、養老保険を補完するものとして位置付けられ、ごく一部の企業が任意に自主的に取り入れていた。(海外労働情報2003年12月参照)

ここ数年来、高齢者人口の増加と人口の都市化などにより、国の基本養老年金制度は、厳しい状況におかれている。また、WTO加盟による国際化の一層の進展は、年金基金の運用管理への外資企業の参入を可能にしている。そういった背景から、政府は、企業年金を老後の生活保障のための第ニの柱として企業年金を重要視し、1.優秀人材確保のための有利な経営戦略2.企業収益の労働者還元のための税制上有利な方法3.労働者の意欲向上のための効果的な戦略――として検討を重ね、まず東北三省で試験的に導入されていたものを、全国的に展開するため、「企業年金試行弁法」として独立法を制定した。また、「企業年金基金試行弁法」を制定し、企業年金の資金運用に当たり、公正な第三者機関がそれを管理することを厳格に定めた。これは、今回の法制定における特徴といえる。

労働・社会保障部令第20号「企業年金試行弁法」

企業年金は、企業とその従業員が自由意思で確立する補充養老保険である。今回制定された「企業年金試行法」によると、企業年金を確立できる企業は、1.法により基本養老年金に加入し、費用納付義務を果たしていること、2.相応の経済負担能力を備えていること、3.団体協議体制を確立していること――という条件を満たすことが要求される。また、企業が企業年金を実施する場合、企業、労働組合あるいは従業員代表大会との協議を経て決定され、企業年金計画の作成が義務付けられる。企業年金計画には次の内容が盛り込まれることが要求される。

  1. 参加者の範囲
  2. 資金徴収方式
  3. 従業員の企業年金個人口座の管理方式
  4. 基金管理方式
  5. 計算方式と支払い方式
  6. 企業年金を支給するための条件
  7. 組織管理と監督方式
  8. 資金納付を中止するための条件
  9. 双方が約束したその他の事項

新しい企業年金は、銀行、信託会社、基金、証券会社、保険会社などを通じて、市場での投資運営収益を配分して個人口座に積み立てる一種の長期積立資金である。企業年金を採用する企業は、国営か私営かなど企業形態に応じて、国か地方レベルの労働社会保障行政に企業年金計画を予め提出する義務を負う。企業年金の積み立ては、企業と従業員から必要な資金が徴収される。その場合、企業が納付する費用は、その企業の前年度の従業員賃金総額の12分の1以下で、さらに、企業と従業員個人の納付費用の総額については、その企業の前年度の従業員賃金総額の6分の1以下とすることと規定されている。積み立てられた年金は、職員の退職時に一時金か定期的に支払われる年金として受け取ることが出来る。

企業年金の運営は、企業と3分の1以上の従業員代表および外部専門家の参加による企業年金理事会を設立して行われる。企業年金理事会は他の業務を行ってはならず、企業年金事務の管理に専念しなければならないと厳格に機能が定められている。

企業年金の契約履行や企業年金計画の制定などをめぐり争議が発生した場合には、当事者は仲裁・訴訟を提起することができる。

労働・社会保障部令第23号「企業年金基金管理弁法」

今回の制度発足にあたっては、企業年金各当事者の合法権益の保護と企業年金基金管理の規範化を図るため、労働法、信託法、契約法、証券投資基金法などの法律と国務院規定を根拠として、改めて「企業年金基金管理弁法」が制定された。実際の現場で投資の範囲が多種に及ぶこと、また企業年金の管理についても、銀行、保険、証券会社など多様な分野に影響が及ぶことなどが予想されることから、管理主体を含めたそれぞれの機能と役割分担を、合理的に、明確にすることを目的に法律は制定された。「企業年金基金管理施行弁法」は、10章69条により構成され、企業年金基金の受託管理、口座管理、委託管理、投資管理のための詳細な手続き、すなわち、1.年金基金管理の原則と年金基金財産の範囲、2.受託人の条件と責務、3.口座管理人の条件と責務、4.委託管理人の条件と責務、5.投資管理人の条件と責務、6.仲介サービスについて、7.企業年金基金投資について、8.企業年金基金投資の収益分配と費用について、9.情報公開について、10.労働保障部門が実施する監督監査について――などを、具体的に規定している。

円滑な運営のための提言

政府は、企業年金を定着させるため、いくつかの提言を出すとともに、制度が円滑に定着するよう、報告会やプレスへのコメント発表などを積極的に行っている。政府の呼びかけの内容は、年金プランの作成にあたり、協議の原則、透明性を厳守すること、意見の取り入れを積極的に行うこと、少数者の利益に偏ることないようにすることを呼びかけるとともに、リスクを保障する安全な投資のための計画をつくり、相互監査制度、情報開示制度、監査監督制度の設置を行うことを呼びかけているのが、その内容である。

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