SBC社の労使交渉、ようやく決着

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  • 国別労働トピック:2004年7月

通信大手SBC社の労使は6月27日、新たな労働協約について暫定合意した。経営側は約10万人を擁するCWA(全米通信労組)、1万1500人を組織するIBEW(全米友愛電機労組)と同時並行の形で2月から交渉。雇用確保と従業員の医療保険負担分の増加が焦点となり交渉が難航し、CWAは21年ぶりにストライキを実施した。その結果、暫定合意は組合側の要求を大幅に取り入れた内容となっている。

SBC社における労使交渉の経緯

SBC社は、ボライゾン社に次ぐ全米第2位の大手通信会社で、2003年度の売上高は410億ドルにのぼる。しかし最近、市内電話部門からの収益が減少し、同社の成長業務であるインターネット部門・携帯電話部門・コールセンター部門などをオフショアリング(海外への業務移転)して、人権費の削減を図っていた。また、年々従業員の医療保険の企業負担額が急増して財政を圧迫していることから、従業員負担分の引き上げを求めていた。

これに対し、CWAは、オフショアリングの結果、過去3年間に2万9000人がレイオフされたと批判した上で、現在勤務している10万人の従業員の雇用保障を向こう5年間の新たな労働協約に組み込むことを求めていた。またCWA、IBEWともに従業員の医療保険負担分の引き上げに加えて、給与水準や年金制度などをめぐっても、会社側と激しく対立していた。

CWAのストライキ

CWAは、今年2月からSBC社と新しい労働協約締結のための労使交渉をすすめていたが、交渉が難航し、21年ぶりのストライキを実施した。CWAは、ライバル会社との競争力低下を考慮し、事前に5月21から24日までの限定ストライキであることを宣言していたが、経営側が要求を拒否した場合、ストライキの継続を警告していた。しかし最終的に5月25日に暫定合意したため、継続ストライキは実施されなかった。

当初、このストライキにより、SBC社がサービスを提供している13州で相当の影響が出るものと予想されていたが、経営側はストライキに備えて事前に管理職、契約社員、退職社員ら4万人を手配していたため、ストライキ中のサービス提供にそれほど大きな混乱は生じなかった。

CWA暫定合意の内容

ストライキの結果、SBC社とCWAは、5月25日に5年間の協約締結に向けた暫定合意した。労働組合の要求が大幅に認められた内容となっている。具体的には、従業員への一時金支払い、基本給の2.3%の引き上げ、年金支給額の引き上げ、医療保険料の企業負担分の維持、南西部及び中西部でレイオフされた数百人の社員の再雇用、現在オフショアリングしている一部の業務に関して契約終了後国内に再度戻すといったことなどが盛り込まれている。ただし医療保険に関しては、毎月の医療保険負担の増加はないが、処方薬や診察料などの従業員負担分は増加する。なお、CWA側が最大の争点としていた10万人の雇用保障については、現在の従業員についてのみ5年間保障される。

IBEWはストライキを回避

同じくSBC社のイリノイ州とインディアナ州の技術者・顧客サービス・販売部門を組織しているIBEW(全米友愛電機労組)の組合員1万1500人は、CWAが正式合意に向けた批准作業をすすめる中、ストライキから約1ヵ月を経た6月27日に5年間の新たな労働協約の暫定合意に達した。新たな労働協約の内容について、IBEW側は組合員の正式な批准を終えた後に公表するとしている。

雇用保障と医療保険料負担をめぐる労使紛争が増加

ここ数年米国では、各産業における企業間の競争が激しさを増している。また、医療保険関連支出も急増している。その結果、オフショアリングやレイオフを実施して人件費のコストを削減するとともに、企業が従業員に提供する医療保険サービスについても、保険料の労使の負担率の変更を求める企業が急増している。

今後、SBC社のケースのように雇用保障と医療保険料をめぐる労使紛争が増すことが予想される。

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