就労サービス業者に関する新許可手続

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1.序

2003年10月23日省令52号(2004年3月3日官報掲載、以下「2003年省令」とする)は、2003年9月10日委任立法276号〔雇用および労働市場に関する委任の実施〕4条、5条および6条を実現するため、同委任立法で「就業サービス業者(Agenzie per il lavoro)」として新たに定義された主体による労働者供給、仲介、人材サーチ・人選、再就職支援に関する活動遂行のための許可手続について定めている。同委任立法の実効性は、ビアジ改革による労働市場の再構築にとって極めて重要であるが、これを確保するには、もう1つ別の省令を交付して、同委任立法5条1以降c)で定められた制度を実施する必要がある。この省令は、国、州およびトレント・ボルツァーノ自治県間常設委員会と合意を経て、業者の従業員の職業能力や、職業的側面や活動拠点に関して備えるべき最小限の機構についての規制を定める予定である。

この省令と2003年省令の施行は同時になる予定であるが、2003年省令を取り急ぎ公布したこと(2003年12月22日に労働社会政策大臣によって署名された)は、労働市場改革の時期を遅らせないようにするため、そして、定款の変更(旧制度では、活動遂行には、この種の活動を唯一の団体の目的としていることが必要であったが、これが削除されるため)や許可手続に必要な書類の準備にかかる時間を就業サービス業者に与えるためと説明されている。旧法による許可制度からの中断を避けるための調整規定(2003年省令11条)が置かれているが、これは、派遣労働業者の許可手続の決定に多くの時間を必要としていた1997年6月24日法律196号〔雇用促進法〕2条の経験から、労働市場改革を急ぐことが模索されているためである。

第2の省令が承認されれば、統一委員会の時期に応じて、旧制度に基づく許可ないし認可により活動中の業者は、許可に関する措置の施行から60日以内に、就業サービス業者として営業資格取得を求めることになろう。前記の期間が経過した場合には、旧許可および旧認可は取り消されることになる。

2.就業サービス業者名簿

まず、2003年省令は、労働社会政策省の下に、就業サービス業者名簿を置くと定めている。同省令1条では、名簿の作成に関して情報処理システムの利用が定められている(後述)。名簿は職業指導・職業訓練・就職総局が管轄する。同局は、関係者の求めに応じて、登録申請書および所定の文書の配布および名簿への登録証明書の交付についても権限をもつ。

そのほか、同省令は、2003年委任立法276号の定めに従い、就労サービス業者を5つの部門に分けて、名簿を再編している。第1部門は、いわゆる一般労働者供給業者(有期および無期のあらゆる労働者供給形態について資格を有する)、第2部門は、いわゆる専門労働者供給業者(2003年委任立法276号20条3項a)ないしh)にいう無期の労働者供給特別活動のうち1つだけを遂行する資格を有する)、第3部門は仲介業者、第4部門は人材サーチ・人選業者、そして、第5部門は再就職支援業者である。2003年委任立法276号が、これら5つの部門に該当する活動類型について定めている。

さらに、第3、4、5部門については、州レベルでさらに細分化され(2003年委任立法276号10条の定めるように、労働市場の管理に関する国と州との権限の分担に応じてなされる)、専ら州レベルで営業する予定の業者は、この類型化に応じて登録の申請をしなければならない。

このように、名簿を設置し、許可制度を統一することで、立法者は、非効率で雑然としていた旧制度下の労働市場の規制を再編しようとしている。実際、これまでは、いくつもの名簿や登録制度が混在しており、また、業務を遂行資格の取得に対する行政手続も複雑であった。とくに、派遣労働供給会社が所定の名簿へ登録していたのに対し(1997年法律196号21条および1997年9月3日省令1条)、仲介、人材サーチ・人選および再就職支援活動の遂行資格を有する主体は、特定のリストへ登録が要求されるなど(1997年委任立法469号10条および2001年4月18日省令7条)、必ずしも合理的とはいえないシステムがとられていた。また、資格取得のための行政手続も、遂行する活動ごとに異なる手続を踏む必要があった。たとえば、派遣労働者供給業者に関する手続と仲介業に関しては、許可手続が適用されたのに対し、人材サーチ・人選活動や再就職支援活動を遂行する主体については、認可手続がとられていた。いまや、この種の活動にも許可制度が適用されることになったため、こうした複雑な制度は廃止されることになったわけである。今後、認可の概念は、業者に対し、州で労働サービスを提供するための適性があること、そして、労働市場のサービス網(とくに労働の受給を適合させるサービス)に積極的に参加できることを認めるための手続に関して用いられることになっている(2002年12月19日委任立法297号〔労働の需給の合致促進に関する修正規定〕)。

2003年委任立法276号が規定するように、2003年省令は、第1部門に登録する業者が、第3、4、5部門にも自動的に登録されると定めている。つまり、一般労働者供給業者は、仲介活動、人材サーチ・人選活動および再就職支援活動を遂行する許可を自動的に与えられる。同様に、第3部門に登録される仲介業者は、第4、5部門に自動登録されるため、人材サーチ・人選活動および再就職支援活動を同時に遂行できることになる。この自動登録手続は、業者の有する複数機能性を具体化したもので、従前の規制になかった新しいシステムの1つである。あらゆる就労サービス業者に求められていた、「この種の活動のみを団体の目的とする」という要件が廃止されたのと同様、この新システムも、求職労働者の労働市場への組入れを量および質の点で改善するという観点から採用された措置である。

団体の目的に関する要件が廃止されたことにより、業者は、複数の活動も遂行できるようになった。したがって、たとえば、情報処理分野でのコンサルトや補助サービス(イントラネットおよびエクストラネット網、インターネットサイト、情報処理システムの企画および管理、アプリケーションソフトの作成、データ処理等)に関する無期の労働者供給活動について許可を受けた専門的な業者が、請負契約を通じて同様の活動を遂行することも起こりうるわけである。しかし、この逆は認められない。なぜなら、省庁による許可を受けない労働者供給活動は立法で禁止されているためである。

仲介活動、人材サーチ・人選活動および再就職支援活動については、州も活動遂行の許可を与えることができる。ただし、その許可は、国の法律で定められた要件が存在することを事前に確認した上で交付され、またその効力も管轄地域内に限られる。この種の許可が交付されると、業者は、第3、4、5部門に設けられた所定の州下部部門に関する名簿に登録されることになる。こうした下部部門は、統一委員会での合意が達成された後に、許可手続に州が完全に関わる形で設置されることになる(ただし労働者供給は除く)。

3.名簿の処理のコンピュータ化

就労サービス業者の名簿を作成するにあたり、手続の効率向上および透明化ならびに関係官庁の実効性強化の要請に応えるため、行政手続の簡素化がとくに重視された。最も重要なのは、就労サービス業者として市場で業務を営もうとする民間業者が、関係資料に対し容易にアクセスできるようにすることである。インターネットを通じて直接参照できる名簿が設置されたことにより、どの業者が許可を得て営業しているのか、あるいは違法な活動をしているのかを簡単に知ることができるため、情報へのアクセスを用意にし、情報を最大限に普及させることができる。この点に鑑みれば、インターネットの利用は、利用者の要請に応える方法として最も適切であるように思われる。この種の情報に直接アクセスできることは、利用者にとっての保護、そして、とくに許可を得ていない仲介者による乱用や搾取のリスクに晒されうる労働者にとっても間接的な保護になる。

そのほか、名簿の処理のコンピュータ化に関して重要な点としては、許可を与える行政側が情報を均等に普及する方法や、名簿の迅速な更新によってその実効性を付与することである。

従来から用いられてきた方法で名簿が設置されたならば、おそらく、名簿の認証機能をより確実に保証することができたであろう。ただし、こうした方法は、他の解決策に比べ簡潔性という点で劣り、また情報の透明性および普及という点では、オンラインリストの方がより容易であろう。

全てのケースにおいて法的確実性を確保するため、各業者に関するすべての資料、すなわち、許可申請のために提出された文書や審査書、そして許可措置は、冊子として保存されることになっている。重要な法的状況の保護のために利害を有する者は全て、関係局に対する書面申請によって、この冊子を閲覧することが可能である。

4.手続

許可の交付に関する手続の確定および就労サービス業者名簿への登録は、1997年法律196号2条にいう派遣労働者供給業者のための許可交付という既存の手続に即して行われる。就労サービス業者名簿への登録申請があると、労働社会政策省は、仮許可の交付に必要な法的要件および財政的要件(2003年委任立法276号4、5、6条)の存在を評価しなければならない。行政手続の期間は最高60日であるが、この期間を無為に徒過した場合は、許可申請が受理されたとみなされる。この点は、従来と異なる重要な改正点である。実際、行政手続を簡素化しより確実なものにするという目的のために、立法者は、許可交付のための行政手続に関して、黙示の合意原則を導入したわけである。

同様に、仮許可の交付から2年が過ぎた場合には、当該有資格業者は、無期の許可交付を申請することができる。必要な要件の存在および拠出金納付に関する法規を遵守していることを確認する間、すなわち、無期の許可の交付または交付拒否までは、仮許可が効力を有する。この場合も、申請から無為に90日を徒過すると、申請が受理されたとみなされることになっており、黙示の合意原則が採用されている。

就労サービス業者名簿への登録および許可の交付手続きは、各業者の申請の提出により開始される。申請は、労働社会政策省により作成された所定の書式に基づいて行い、書類のほか、サポート用としての電子文書(この中に、2003年省令4条で定める文書全てを記録する)を添付して書留郵便として送付する。

この文書には、2003年省令5条にいう「分析書」が含まれなければならない。業者は、この分析書によって、許可を受けようとする活動遂行に適した職業上および構造上の組織を供えていることを証明する。これは、労働者供給活動および仲介活動に関しては、業者の地域的な活動範囲を評価できるように、分析書において、支社について記載しなければならない。これらの活動については、少なくとも4州に支社を有することが要求され、また、同省令で要求されている物理的・構造的性質を有することを宣言しなければならない。さらに、文書中では、従業員に関する最低要件を評価するために、業者が利用する「職員」を、本社と支社に分けて示さねばならない。ここでは、従業員の職業能力も併せて記載すべきことになっている。

許可を得た後も、業者は、本社の移動、支社または支部の開設、業務停止および行政から要求されている情報の全てを報告する義務が定められている(2003年省令9条)。

5.許可の要件

前述のように、就労サービス業者名簿の登録に際しては、2003年委任立法276号5条に定める法的・財政的要件の存在が確認される。こうした要件には、許可申請を行う全就労サービス業者に要求される一般要件と、遂行する活動類型に応じて異なる特別要件とがある。このうち、特別要件は、労働者と業者との関係の様態の違いを考慮して定められたものである。たとえば、労働者供給業者の場合は、労働者と業者との間に労働関係が成立するために、求められる要件が厳格である。これに対し、仲介業者、人材サーチ・人選業者および再就職支援業者については、当事者間の関係は、サービス提供の側面に限られているため、要件もより緩やかである。

法的・財政的要件に関しても、2003年委任立法276号は1997年法律196号の規定とほぼ同じ内容を採用している。つまり、団体の形態、事務所および適切な職業能力の具備、マネージメントに関して刑事有罪判決を受けていないという信頼性および誠実性、活動範囲の広さ、そして、拠出金の納付などである。一方、変更されたのは、繰り返しになるが、当該活動を団体の唯一の目的とするという条項の削除である。この要件は、派遣労働制度に関する規制の最も重要な要件であった。

同要件の削除によって、就労サービス業者は様々な活動を同時に遂行できるようになった。実際、2003年委任立法276号自体が、許可を受け就労サービス業者名簿の第1部門に登録した一般労働者供給業者に対し、仲介業者、人材サーチ・人選業者および再就職支援業者のための部門にも自動的に登録されると定め、他の活動の遂行を認めている。同様に、許可を受けた仲介業者は、人材サーチ・人選活動および再就職支援活動についても自動的に資格を付与される。

しかし、一般労働者供給業者であれ、仲介業者であれ、当該活動は、業者の団体としての主要な目的でなければならない(2003年委任立法276号5条2項および4項)。

一方、専門労働者供給業者については状況が異なる。すなわち、名簿の第2部門への登録のために交付された許可は、無期の労働者供給にのみ効力を有する(2003年委任立法276号20条3項a)ないしh))。ただし、専門労働者供給業者は、複数の許可申請を行うことができないわけではない。当該活動を団体の唯一の目的とするという要件が廃止されたことからしても、専門労働者供給業者に限り、無期の労働者供給活動が、業者の唯一の活動でなければならない必要はない。一般労働者供給業者もまた、許可を得た全ての領域において無期の労働者供給を行えることに鑑みると、専門労働者供給業者として申請しようとする業者が、ある分野または隣接する分野を専門とするために同様の選択をなすのも、ごく当然であろう。

名簿登録に関する一般要件のうち、「具体的な利用に適した地域における事務所および適切な職業能力の具備」(2003年委任立法276号5条1項c))については、その範囲および内容を明らかにするために、別個省令が定められることになっている。従業員の職業能力および活動領域の適正について立法者が意図しているのは、他の要件同様、業者の職業能力を確保し、求職中の労働者を詐欺や搾取から守ることである。2004年1月28日の統一委員会の審議で議論されている省令の草案によれば、職業能力は、適切な職業経験や訓練コース、資格を通じて獲得されることになっている。

業者の信頼性および専門性に対する保証となる職業能力の要件のほかに、業者の組織に関する最低要件も定められている。1月28日の省令草案は、労働者供給業者および仲介業者が、当該活動の遂行に関する資格所有者を従業員として本社に4人以上、各支社に2人以上置くこと、そして、4州以上に支社を設置することを定めている。人材サーチ・人選業者および再就職支援業者については、有資格者を本部に2人以上、支部に1人以上配置し、各支部に責任者を1人置かねばならないとしている。

省令草案3条2項は、業者が、各従業員の職務を示した各支社の企業組織図、カリキュラム、そしてこれらを変更した場合にはその変更点を労働社会政策省に対し報告するよう定めている。業者のサービスを利用しようとする人々がこれらの情報を入手しやすいようにするには、業者名簿がオンラインで参照できることが不可欠であろう。

また、法的・財政的要件の特別要件と同様に、組織に関する要件についても、許可を得た業者によって遂行される活動類型によって差異が設けられている。たとえば、労働者供給業者と仲介業者については、人材サーチ・人選業者や再就職支援業者に比べて、より複雑な要件が課されている。

省令草案で定められている要件としては、業者の活動遂行場所の適性に関するものもある。たとえば、事務所の設備、情報処理設備およびデータ通信設備の具備などである。また、設備および営業に関しても、詳細な定めがある。

顧客、労働者および事業主に対する公開性と透明性を確保するために、業者の内部および外部に、許可および名簿登録に関する必要事項を目に見える形で掲示するよう定められている。これは、必要な許可に基づく業務であることがすぐに理解できるようにするためである。同様の理由から、営業時間、職務を示した支社の組織図、従業員の職業能力および支社の責任者も明示しなければならない。

なお、労働コンサルタントは上記の要件が適用されない。労働コンサルタントについては、2003年省令13条2項が、各事務所に仲介業用のスペースを設け、これを利用できなければならないことを定めている。こうしたスペースは、仲介活動以外の活動にも利用できるが、コンサルタントと関係者との間に交わされる契約の「絶対的なプライバシー」は保護されなければならない。

6.団体の主要な目的

一般労働者供給業者および仲介業者に関しては、定款で、許可を受けた活動が、団体の主要な目的であることを記載しなければならない(2003年委任立法276号5条2項f)および同条4項c))。したがって、旧法下ですでに許可ないし認可を受けた業者が、新許可制度の下で無期の許可を得るには、定款の記載を「団体の唯一の目的」から「団体の主要な目的」へと修正する必要がある。

一般労働者供給業者および仲介業者は、いずれもその活動を団体の主要な目的と定めなければならないのではあるが、一般労働者供給業者の場合は、仲介活動の遂行も自動的に許可される(当然、人材サーチ・人選活動、再就職支援活動も)。この場合、労働者供給活動に関して「主たる」許可が与えられ、これが当該業者につき団体の主要な目的となるのに対し、仲介活動は補助的な活動ということになる。

「団体の主要な目的」については、2003年省令が、どのような場合に団体の目的が主要と認められるかを定めている。ここでは、厳密に量的基準が採用されている。つまり、各事業体の経済活動を貨幣金額によって分析したとき、当該業者の活動のうち、許可を受ける活動が全体の50.1%以上を占めていなければならない。

この場合、2003年委任立法276号が定める仮許可の交付について求められている要件と、2003年省令が定める一般労働者供給活動および仲介活動に関する主要性の算定方法とは、区別して考える必要があろう。まず、2003年委任立法276号は、仮許可の交付に関する要件として、許可を受けようとする活動が、団体の主要な目的であることを定款に記載するよう定めている。この点の審査については、当該活動の実質的な主要性について算定することは必要ない。これは、仮許可の交付時点で、当該会社が事業を営んでおらず、実際の事業に基づいて活動の主要性を評価できないためでもある。一方、2003年省令は、団体の目的の主要性評価に関する算定方法を定めている。この手続は、活動開始から2年を経た後、すなわち、無期の許可交付に関する要件の存在を評価するとき、そしてその後2年ごとに実施される。

主要性を判断するために明らかにすべきは、業者レベルでの会計結果であって、支店ではない。つまり、団体の主要な目的となる活動が労働者供給であれば、業者レベルでそれが主要である必要はあるが、支店レベルでは他の活動が主要であることも認められるのである。

7.拒否、停止および取消

許可の拒否および取消に関して、1997年法律196号に欠陥があったことに鑑み、新法ではこの点の克服が目指された。1997年法律196号では、最終的な許可の付与が、「遂行される活動の適切な進行状況」の評価にかかっていたとはいえ、拒否ないし取消の理由は挙げられていなかった。実際、この文言は、非常に包括的であり、一定の理由を明示することが必要であると考えられていた。

このため、2003年省令6条5項は、仮許可をもつが、許可の対象となった活動を遂行していない、あるいは、遂行していても不規則であったり断続的であったりする業者に対し、無期の許可交付を拒否することを明記した。この場合も、労働者の保護という目的が窺われる。実際、許可の対象となった活動を継続的に遂行しない業者は、立法者が確保しようとしている専門性、信頼性および誠実性を保障することが難しいと考えられる。

許可を受けた業者が、2003年委任立法276号、職業紹介に関する規制および労働社会政策省の定める規制の諸義務を遵守していない場合については、許可の停止が定められている。1997年9月3日省令381号でも、同様の規定が定められていたが、2003年省令では、さらに、訓練基金および所得保障基金に対する業者の拠出金納付(2003年委任立法276号12条)、社会保険料および社会扶助拠出金の納付、ならびに、労働者供給業者に適用される全国労働協約の定める諸規定の遵守を監視する権限を労働社会政策省に与えている。そして、同省により不法状態が確認されれば、業者は、60日以内にこれらの不法状態を治癒(ないし弁明)するよう命じられることになっている。業者が、不法状態を治癒しない場合ないし弁明が不十分と考えられる場合には、同省は、当該業者を名簿から削除し、許可を最終的に取消すことになる。この点、労働者供給業者のように、労働者の直接採用を伴う活動の特殊性を考慮して、重大な違反がある場合にも、即座に業者を名簿から削除し、許可を取消すことはせず、業者には、不法状態を治癒するための猶予が与えられるわけである。再犯および法規遵守の拒否の場合にのみ、労働社会政策省は、名簿から業者を削除し、許可を取消すことになる。

8.商取引の禁止

2003年委任立法276号は、許可を商取引の対象とすることを禁止している(4条7項)。2003年省令10条は、この禁止の内容、とくに許可を第3者へ譲渡できないことを詳細に規定し、許可の対象とする活動の一部を第3者に譲渡するために商業契約を利用する(販売活動を含む)ことを禁止している。こうした禁止を明確にする必要性があるのは、派遣労働に関する旧法の下で、代理契約を通じて、許可の対象となる活動の一部を外注化することが可能であったためである。

この問題は、1999年9月29日の閣議でも検討され、業者の団体形態に関して定められた要件を元に、「派遣先企業、派遣元企業および派遣労働者という純粋な3者関係として想定される関係をさらに細分化する要素」を派遣労働者供給組織に持ち込むことができないと述べられていた。これ以前には、1997年11月5日通達141号が、各企業が採用しようとする組織モデルは重要でないと定めていたことからも分かるように、活動の一部を外注化することは可能であったのだが、これでは、私法制度や商業関係を利用して、許可制度の意義が容易に回避される危険性があったわけである。2003年委任立法276号は、これを否定するとともに、派遣元企業の生産サイクルに組み込まれた活動の遂行は、会社の社員であるか否かに関わらず、第3者に委ねることができないことも確認した(もっとも、この点は旧法でも同じ)。

さらに、閣議意見の後、1999年12月24日省令83号が公布され、閣議の定めを再確認されていた。同問題に関し2001年4月3日に出された声明では、労働社会政策省が、「派遣契約を通じた労働を行う」べく、データバンクの設置および運営ならびに人材サーチ・人選を第3者に委ねることができないことを確認している。逆に、契約の促進・実現活動を遂行するために、外部の主体である代理権をもたない業者に仕事を委託することは、合法であるとされている。この種の外注化が可能なのは、求職中の労働者がこうした領域に巻き込まれることがないためである。

この問題を理解するには、イタリアにおいて、使用者と給付の利用者との分離がもともとは禁止されていたことを思い出す必要がある。1997年法律196号は、派遣労働に関する3者関係を認めることで、この禁止の適用除外を設けたのであるが、労働市場の透明性と労働者の保護を同時に確保するには、介在させるのは1主体に限定し、労働関係のさらなる細分化を避けることが必要であると考えられたのである。さらに、閣議の意見によると、許可の対象となる活動を実際に外注化するときには、当該許可が失効するとされていることにも注意しておく必要がある。労働者供給に関する新法(とくに2003年省令)は、この閣議意見や学説の見解を受けいれたことになろう。許可を受けた主体に関して他者を使った労働者供給(したがって、使用者と労務給付利用者との分離)が認められたとはいっても、労働関係の仲介が一般的に禁止されていることには変わりない。つまり、許可を受けた業者の名で行うために、許可の対象となる活動を第3者に仕事として依頼することは、基本的に以前と変わらず違法である。このように、(労働関係の当事者がはっきりしない場合はとくに)乱用や搾取の危険に晒されうる労働者の保護が、主として意図されているわけである。労働者供給業者から委託を受けたエージェントである労働者が他の企業へ派遣される場合のように、間に介在する主体が多くなるほど、労働関係における明確さや透明さが低下する可能性がある。

許可の対象となる活動の一部を第3者に譲渡する商業契約の利用を禁止するという立場からすれば、新法の下でも、上記のような活動の外注化が実施された場合には、許可は失効すると考えるべきである。許可の譲渡禁止を前提とすると、営業譲渡や合併の場合には、既存の許可が失効し、新たに仮許可を申請する必要があるということになる。この場合にも、労働市場での遂行に許可が求められる活動が、関連法により課された要件を遵守して実施されること、そして、その規制を回避することができないようにすることが目的とされているのは明らかである。

9.調整規定

2003年省令の調整規定は、派遣労働、労働の需給の仲介、人材サーチ・人選および再就職支援に関する多くの規制と、これらの活動に関し新法で統一的に定められた規制との移行過程を規制するものである。

1997年法律196号1条に定められた許可を有する派遣労働業者について、2003年省令は、労働者供給活動の遂行に関する無期の許可の交付をすぐに要求できるとしている。この許可は、2003年委任立法276号4、5および6条の要件の存在、派遣労働者訓練基金への拠出金の納付、社会保険および社会扶助の拠出納付ならびに派遣労働者に関する全国労働協約(従前は派遣労働業者に適用されていたが、今後は労働者供給業者に適用される)の遵守を確認した後に、交付されることになろう。1997年委任立法269号に基づき許可を受けていた労働需給仲介業者も同様に、仲介業遂行に関する無期の許可をすぐに申請できる。この場合にも、2003年委任立法276号の定める要件が存在することを事前に審査することになっている。

ただし、2003年省令は、労働者供給活動および仲介活動の遂行に関する無期の許可の取得が、旧法の下ですでに無期の許可を取得していた派遣労働業者および仲介業者によってなされる場合、「委任立法4、5および6条にいう要件が存在すること、ならびに、法律および規則で定められた他の諸義務が履行されていることを審査」したうえで、許可を交付するとしている。ゆえに、無期の許可の申請の際に、業者は、場合によっては、新要件に基づく修正を行う必要が出てくるだろう。逆に、2003年省令11条2項は、社名として「派遣労働供給会社」と表示するという1997年法律196号2条2項a)の義務が失効するのは、新法の下での許可取得後としているので、労働者供給に関する許可取得後に初めて、業者はこの表示を社名から削除できることになる。

この点、業者には、労働者供給に関する許可申請の前に行うべき団体目的の修正と、許可取得後に行うべき社名の変更との、2つの異なる臨時会議を開く必要があるという問題が生じる。しかし、2つの別の臨時会議を開くのが難しい場合は、これらの修正に停止条件をつければいいと思われる。つまり、停止条件を、団体の目的に関しては、労働者供給に関する無期の許可の申請を提出したことにかからせ、社名に関しては、許可の取得にかからせるわけである。条件が成就した場合には、定款を変更すればよい。団体の目的に関する条件は、許可申請の受領により、そして、社名に関する条件は、労働社会政策省による許可交付通知により成就するということになろう。

とくに仲介業者に関しては、活動地域に関する要件(4州以上に支店があること)の充足が重要である。この要件は、旧法下ですでに許可を得ていた仲介業者には厳しい場合もあるだろう。かりに、無期の許可の申請期間(2003年省令の施行日から60日以内)に同要件を満たすことができなければ、業務を継続するための唯一の方法は、仲介業に関する州の許可を申請することであろう。この州の許可を取得するには、(いくつか他に要件があるものの)当該州で活動を遂行していれば足りる。なお、こうした仲介業者が、後に、4州以上での活動という要件を満たしたとしても、その際に申請できるのは仮許可である。

他方で、仲介業者が4州以上での活動という要件を満たしたという事実は、少なくとも、2003年委任立法276号の施行日にはわかる。このため、全国レベルでの活動を続けようとしていた業者が許可を取得すれば、この業者は、この問題に取り組んだということになる。一方、旧法の下で最終的な許可を得ていた業者に対し、無期の許可を直接申請することが認められていることからすると、旧法を遵守しながら過ぎた期間は、無期の許可の交付のための「試験期間」のようなものと考えられていることがわかる。したがって、業者による義務の遵守を評価する機能をもつ仮許可の2年間が免除されるのである。

労働者供給活動の遂行のための無期の許可の交付を待つ間、派遣労働業者には、2003年委任立法276号20条にいう労働者供給活動を遂行することが認められる。

2003年委任立法276号が、労働者供給について、1997年法律196号1条1項にいう業者の一時的な必要性という要件(労働者派遣契約は、派遣元企業が、自己の雇用する1人または複数の労働者を、一時的必要を満たすために、派遣先企業の指揮命令下におく契約と定義されていた)を削除したことに鑑みると、2003年委任立法276号20条4項にいういわゆる重大な理由(2003年省令の施行日から、労働者供給に関する許可を申請した業者については、「供給先企業の通常の活動に関するものであっても、技術的、生産的、組織的または代替的な理由があるときには、有期の労働者供給が認められる」)を主張できることになろう。さらに、1997年法律196号の立場と異なるのは、どういった場合に有期の労働者供給を利用できるかを労働協約が定めるという規定が削除されたことである(ただし、労働協約の失効期限までは有効)。2003年委任立法276号が明記しているように、これを決定できるのは、有期の労働者供給を利用できる一時的必要を有する契約だけである。一方、全国労働協約には、2001年9月6日委任立法368号〔有期労働の枠組合意に関するEU指令の実施〕の規定を遵守した上で有期の労働者供給の利用に関する量的上限を決定することが委ねられている。

仮許可を有する派遣労働業者に関しては、1997年法律196号の仮許可交付日以降は、2003年委任立法276号4条2項にいう労働者供給活動の遂行に関する無期の許可を申請するための期限が適用される。この場合も、派遣労働業者が労働者供給活動に関する無期の許可を取得するにあたっては、旧法下で過ぎた時間が考慮される。旧法に関しても多くの要件を遵守する必要があったのだが、ほとんどは労働者供給に関する要件と類似している。いずれにせよ、これらは、業者の専門性の確保と労働者保護のために課される要件である。

旧法下で許可を取得した派遣労働業者および労働需給仲介業者には、労働者供給活動または労働仲介活動に関する許可申請のために、2003年省令の施行日から60日の期間が認められている。この期間が徒過した場合には、以前の許可は失効する。

1997年委任立法469号10条で認可を申請した人材サーチ・人選業者および再就職支援業者は、当該活動の遂行に必要とされる法的・財政的要件を満たした上で、仮許可を申請しなければならない。これらの業者がすでに旧法下で認可を受けていた場合でも、その活動の遂行を継続するには、就労サービス業者に関する新法に従い仮許可を申請する必要がある。許可申請の期間は、2003年省令の施行日から60日と定められており、この期間を徒過した場合には、以前の認可は失効する。要するに、人材サーチ・人選業者および再就職支援業者については、従前の活動を遂行するには、すべてのケースについて仮許可を申請する必要がある。

10.特別許可制度

2003年省令は、特別許可制度についても明確にした。同省令は、仲介業を遂行する大学および大学財団に対する許可の交付について説明している。全国継続労働取引制度(borsa continua nazionale del lavoro)への相互接続義務と非営利目的の点には変更がないが、これらの主体は許可取得のための手続をとる必要がない。つまり、2003年委任立法276号6条1項にいう主体に交付される許可については、就労サービス業者名簿への登録を伴わず、人材サーチ・人選および再就職支援活動に関する許可ではなく、就労サービス業者名簿第3部門の登録主体に関する許可が拡張される。2003年省令自身、第3部門への登録主体は第4部門および第5部門にも自動的に登録され、人材サーチ・人選活動および再就職支援活動ができると定めているからである。さらに、こうして交付された許可は、大学や大学財団の組合を含む第3者に譲渡できないと定められている。これは、許可の移転または譲渡禁止という一般原則に従ったものである。

2003年委任立法276号6条2項は、市町村、商業会議所、高等学校について、仲介活動が非営利目的で遂行される場合は、同活動に関する許可取得要件を緩和することを定めている。これらの主体に交付される許可についても、譲渡は禁じられている。

また、比較的代表的な使用者組織および労働者組織(2003年委任立法276号6条3項)についても、全国労働協約に署名している場合には、仲介活動に関する許可取得要件が緩和される。一方、地方レベルの使用者組織および労働者組織もまた、州に対し優遇的な許可を申請できる。これにより、名簿の第3部門の下部部門に登録され、許可の交付を受けた州に限り仲介活動を遂行できる。

なお、大学や大学財団と異なり、2003年委任立法276号6条2項および3項の主体は、同法4条に定める通常の手続に従い許可申請を行わなければならない。これらの主体は、仲介業者に関する名簿第3部門に登録されることになる。

労働コンサルタントについては、2003年委任立法276号6条4項が、所定の財団または法人格を備えたその他の主体を介した場合にのみ仲介活動を遂行できるとしている。また、仲介活動を個人的に行うことは禁止されている。財団または労働コンサルタントの全国組合によって設立された法的主体についても、通常の許可申請を行わなければならないと定められている。ただし、許可取得要件は緩和されている。名簿登録は第3部門である。2003年省令は、さらに、許可活動領域における労働コンサルタントの位置付けとその業務内容について定めている。つまり、仲介活動の許可を得た財団等は、個々の労働コンサルタントに対し、当該財団等の名で仲介活動に必要な全ての措置を遂行することを委任できる。この場合にも、就労サービス業者について一般に定められているように、組織や運営に関する要件が定められている。

さらに、労働コンサルタント職業組合の全国会議には、各労働コンサルタントが法律を遵守しながら仲介活動を遂行しているかを監督する役割が与えられている。ここでも、乱用が生じるのを避けつつ労働者を保護するという目的が現れている。

11.許可の補完

2003年委任立法276号により、名簿の第3部門に登録される仲介業者が第4部門および第5部門にも自動的に登録され、人材サーチ・人選活動および再就職支援活動を行うとされた反面、第4および第5部門の許可を受けた業者は、取得した許可の補完を申請することで、仲介業にも活動領域を拡大することが認められた。ただし、仲介業の遂行に必要な技術的、財政的および職業的要件を満たすことが必要である。仲介業については、それが団体の主要な目的であることが要求されているので、許可の補完が認められた場合には、当該業者は、仲介業を同業者の主要な活動にしなければならない。

12.まとめ

新しい労働市場規制に関しては、立法者が、旧法下に存在した制度の分裂を克服し、統一性を確保するため、単一の許可制度を定めることで、この問題を再構成・合理化しようとしていることに主点を置くことができる。こうした制度の分裂状態は、労働市場における様々な活動をするための資格について多様な制度が存在していたこと(とくに、許可制度と認可制度とが分けられていたこと)や、派遣労働会社名簿やその他の活動類型に関するリストとが別個に存在していたことから生じたものであった。

労働市場改革により労働者供給が合法化されたとはいえ、これが完全に自由化されたわけではない。つまり、労働者供給活動は、いまだ許可制度に基づいて遂行しうるだけである。完全な自由化がなされず、許可制度が維持されたことは、労働市場で活動しうる業者を選択できるようにするためである。実際、許可の取得に際して求められる要件は、とくに、業者の信頼性、専門性および支払能力を評価するためのものが多い。したがって、当該業者を利用しようとする主体、つまり求職中の労働者に対する大きな保護となっているわけである。他方で、組織に関する規定の存在は、労働市場の組織化のためのものであるが、同時に、市場の透明性を高めることも目的としている。労働市場の透明性を確保するための方法、したがって、情報を最大限に流通させる(この場合とくに、労働ポストの空きおよび求職中の労働者に関する情報)ための方法としては、全国継続労働取引制度がある。この制度は、まさに、全国レベルで労働の需給を適合させる場となるものであり、こうした需給の合致の質および量を高め、より効果的ななものにすることを目的としている。このために、労働市場で活動する全ての業者に全国継続労働取引制度に相互接続することが要件として課されることになる。これによって、求職中の労働者および企業に関する情報を全国継続労働取引制度に通知させ、同制度が追求する効果を最大限にしようとしているのである。ただし、この要件は、すぐには課されない。というのも、ネットワークを構築する必要があるわけだが、このためには、情報の相互接続および入手について業者が義務を遵守することが極めて重要であり、業者に対する完全な監督が要求されるからである。労働市場で活動する業者を監督は、許可制度により確保されているほか、許可の対象となっている活動の報告を許可主体に限ることで担保している(2003年委任立法276号9条)。したがって、たとえば許可なく仲介活動を遂行するインターネットサイトなどによって生じる乱用は排除されることになる。

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