国営航空機製造会社ディルカンダラ・インドネシア(PTDI)社解雇問題:続報

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  • 国別労働トピック:2004年5月

長らく問題となっていた国営航空機製造会社ディルガンダラ・インドネシア(PTDI)社の従業員解雇問題に関して、1月下旬に中央労働委員会(P4P)の判決が、2月下旬にはジャカルタ州高裁の判決が下され、両者の判決は逆の立場を取ることとなった。

中央労働委員会(P4P)の判決

1月29日付けのP4Pの判決文によると、PTDIの全従業員9350人のうち、6651人を解雇し、PTDIは解雇者に対して2003年労働・移住大臣通達第13号156条の規定にある解雇・退職手当て等の額の2倍を支給し、更に2003年の年次休暇と住宅手当、賞与、2003年7月から支給が停止している給与の支払いが命じられた。

解雇者は2月9日から3月5日までに同社内での手続きを行い、勤続年数に応じて800万ルピアから1億6000万ルピアが支払われる予定。

しかしPTDI労組のアリエフ代表は、同社の経営悪化は、同社の経営側の不透明な経営や汚職、非効率な生産計画によるもので、従業員に責任はなく、このような形で大量解雇が認められたことは大いに不満であり、最高裁に上訴する構えであることを明らかにした。

一方、ヤコブ労・移相はこの判決に対して、大量解雇は避けられない問題であり、重要なのは解雇者に対して十分な手当てを支給することであるとして、今回のP4Pの判決内容にほぼ同意するコメントを発表している。

バンドン地方裁の判決

一方、2月18日に出されたバンドン地方裁判所の判決では、PTDI労組の主張に有利な判決となった。この判決では、同社の6000人以上という大量の解雇がバンドン地域に社会的・経済的に大きな影響を与えることが予想される状況で、2003年8月に行われた解雇に関する協議が、通例の5人の経営代表者からなる協議の場で決められたのではなく、2名が欠席した3人の代表者による協議で決定した点が問題であり、したがってこの解雇は違法である、というものであった。

さらに判決文では、同社経営側に、経営的危機を解決するための合同再生機構を設立し、その設立メンバーにはインドネシア銀行再生機構(IBRA)と労組、国営企業担当国務大臣などを参加させることを命じている。

とはいえ、現実的に既に債務危機に陥っている同社においては、解雇が無効となった場合でも、従業員を再雇用する余裕はないと見られている。

従業員の不満が爆発、警察官と衝突の場面も

P4P、地方裁の判決が発表された後の2月24日、PTDIに解雇された数千人の従業員が、バンドンの同社工場前にて再雇用を求めたデモを行い、400人の警官ともみ合いの衝突となった。地方裁の判決によって解雇が違法であり、解雇者の再雇用が望ましいとされながらも、経済的な状況から再雇用が行われていない状況に対して、解雇者の怒りが爆発した形となった。

ジャカルタ高裁で逆転判決

最終的に2月25日、ジャカルタ州高裁において、PTDIの解雇が違法であり、同社の経営側は解雇者を再雇用し、未払いの給与を従業員に支払うことを命じる、逆転判決が下された。

PTDI労組のハディノ副代表は、8ヶ月間闘ってきた苦労が報われ、法律が労働者のためにあることを始めて実感できた、とコメントしている。一方で、PTDIの経営側は最高裁に持ち込むことを明らかにしている。

この判決後、PTDIに解雇され、その解雇を認めた従業員1300人のうち237人が解雇手当を受け取ったことをエドウィン社長が明らかにした。同社長は、この問題を先に判決の出たP4Pの結果をもとに5月までに解決し、企業の再建計画に本格的に着手していきたいとコメントしている。また、同社は既に解雇手当に充てるための資金6650万米ドルをIBRAから受け取っている。

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