市場経済化促進のための2004年度政府政策方針

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年5月

2004年3月、11日間にわたり開催された第10回全国人民代表大会では、2004年度政府の政策基本方針が示された。今回の会期では、経済のグローバル化を背景として、諸外国からの関心の高い外貨政策、経済政策についての議論のほか、環境問題、台湾問題などもあわせて議論された。

さらに、昨年の共産党大会での決議をうけ、人権の尊重、私有財産の保護を含む14の項目について、82年制定憲法の5年ぶり4回目の改正が決定された。労働と関係のあると思われる主な改正点としては、1.国家指導指針として江沢民前国家主席の「三つの代表」重要思想を追加(序文)、2.土地の徴集・収用に対する補償を追加(10条),3.「(国家は)非公有制経済の発展を励まし、支持する」と追加(11条)、4.合法的な私有財産の不可侵と徴集・収用への補償を明記(13条)、5.「経済発展レベルにふさわしい社会保障制度の確立」を追加(14条)、6.「国家は人権を尊重し、保障する」を追加(33条)などである。

会期中に開催された財政経済委員会では、「2003年の国民経済・社会発展計画の実行状況」「2004年の国民経済・社会の発展計画草案」の審査結果が報告されたが、そこでの報告から、就業問題を含む労働分野の課題が、今後の経済成長のための重要なファクターであることが伺える。

この報告では、国内機構改革や地域開発プロジェクトの順調な推進などを背景に、経済の自主的成長能力が高まりつつあることが指摘されている。そういった中で、就業機会も増えており、都市部で859万人の就業と440万人の下崗(いわゆるリストラ労働者)の再就職に成功し、失業率を当初目標値より低い4.3%に抑えることに成功している。養老、医療、失業、労働災害などの社会保険の適用範囲も確実に拡大している、と報告された。

一方、今後の課題としては、1.農村での収入増のための促進策、出稼ぎ者への給与未払い問題、2.雇用,社会保障問題の深刻化、3.地方における無計画な投資や建設の水準の低さ、4.労災や労働安全に関すること、5.環境問題の深刻化、農村医療システム、義務教育体制の不備などが指摘される。

2004年は、「第10回5ヵ年計画」 実現のための重要な年として位置付けられるが、政策目標として、次のことが挙げられている。すなわち、1.経済成長率を7%前後とすること、2.都市部の新規就業者数を900万人、都市部登録失業率 を4.7%とすること、3.住民消費者価格総水準の上昇率を3%前後とすること、4.対外貿易の輸出入総額の伸び率を8%とすることなどである。

その実現に向け、政府はさらに、経済、財政など広い分野にわたる活動目標を定めている。活動目標とは、要約すると、1.農民の収入の増加と食料生産能力の向上、2.国債投資の有効な役割の確保、3.工業構造の調整と最適化による経済成長の維持、4.積極的な就業政策による雇用機会の確保と消費の拡大、生活の改善促進、5.安定した金融政策の実施、6.地域開発、地域間相互補完による共同発展の模索、7.対外貿易の安定と外資運用の質的向上、8.経済・社会と人口、資源及び生態環境との相互間調和の推進、9.科学、教育の強化と社会事業の推進、などである。

労働社会保障部は、会期中に記者会見を行い、就業概況と政策について説明を行った後、マスコミからの質問に答えた。そこでは、主に失業と社会保障の問題に関心が集中し、失業率4.7%の目標達成のための具体的な政策、政府が目指す社会保障体系、特に都市民と農民の社会保障体系の違いなどについて説明が行われたほか、都市化で土地を失った農民の生活保障をはじめとした農民の社会保障について政策の方向が説明された。

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