2003年の賃金動向

カテゴリー:労働条件・就業環境統計

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  • 国別労働トピック:2004年4月

国務院人事部の調査によると、2003年の労働者の賃金に、次のような変化が現れた。

1.新卒労働者の賃金の減額

2003年に新規採用した大卒等の労働者の賃金水準は前年より大幅に低下し、大卒の年間の平均総賃金は2万5000元~3万元、修士卒は4万元~4万8000元だった。

また、企業形態と業種の相違による大卒の初任給格差が拡大した。例えば、上海では、いくつかの多国籍企業が新規採用した大卒労働者に支給した年間の平均総賃金は4万5000元、修士卒は6万6000元に達し、国有企業、私営企業などの賃金水準より明らかに高かった。また、ハイテク技術を習得した新卒者に高賃金が支払われる傾向が強く、ハイテク技術を取得できる関連学部卒の年間の平均総賃金が3万元、修士が5万4000元、博士が7万8000元、といずれも平均水準より高かった。

2.過去10年間の年平均伸び率は9.2%

過去10年、中国の労働者の平均賃金は年平均14.8%増加し、物価上昇要素を差し引けば、年平均9.2%伸びた。

1990年代から、企業の賃金制度において次の改革が実施され、その結果、貨幣で支払われる賃金が大幅に上昇した。

  1. 賃上げと経済効率を結びつける制度の確立

    市場経済化に適した賃金協議制度の整備が進められ、2002年現在、賃金の団体協議を行う企業は3万余社に達した。企業の賃金配分は、単に計画経済体制化を引き継いだ行政による決定方式から市場経済下での労使の協議制への移行が進んだ。

  2. ポスト賃金制の採用

    現代的な企業経営に適応するため、ポストによって賃金が決まる「ポスト賃金制」を主とする利益配分制度の改革を導入した企業が3万社に達し、ポストと企業への貢献によって個々の労働者の賃金水準を確定する制度が確立されつつある。

  3. 経営者の高収入化

    経営者の収入が、責任、業績、リスクと連動する収入制度が徐々に設立され、年俸制およびストックオプション制度などが導入され始めている。

  4. 最低賃金保障制度の実施と標準賃金の公開制度

    全国で、300に上る地区には最低賃金保障制度が確立され、雇用失業情勢等の変化に応じて最低賃金額が調整されている。全国では29に上る地区で標準賃金公開制度が確立され、118の都市で労働力市場における標準賃金の公開制度が確立されている。

3.非公有制企業の労働者の賃金

市場経済化が進み、非公有制企業が急増している。浙江省東陽市を例に地方の非公有制企業において、賃金協議制がどのように進められているか見てみる。

東陽市の153社の非公有制企業の労働者は、「賃金が低すぎるのではないか」、「休日勤務の賃金が低い」などの不満を抱いていた。また、東陽市の非公有企業は労働契約の履行率が比較的低く、それに対する行政の監督が弱かったなどの問題が存在していたため、2000年、労働者賃金の遅配が発生し、正常の生産に影響が出ていた。

このような状況下、東陽市総工会が率先して東陽市の商業集団公司など16社の企業と合同で賃金決定方式の改革を研究し、企業の経営者が独断で決定する方式から企業側と労働組合の代表が協議・決定し、賃金団体協約を締結する方式へ変更した。企業と労働組合が賃金の団体協約を締結し、企業が労働者に支給する月額賃金は協約で最低基準を順守することになった。

具体例としては、東陽市化学製薬有限公司にいる200人の労働者のうち、127人が団体協約の対象にされ、労働者の月額最低賃金は800元と決定された。過去3年、当該公司の労働者の賃金は年平均10%伸びを達成し、東陽市の最低月間賃金基準をはるかに上回った。

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