台湾における労使紛争及び紛争解決

カテゴリー:労働法・働くルール労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年11月

産業構造の急激な変化、ハイテク産業の好況、従来の労働集約型産業の衰退又は海外投資、外国人労働者の流入などを受けて、台湾産業における労使関係は、新たな課題に直面している。

ここ数年来、台湾では、国内外の景気低迷による経済社会情勢の悪化によって、労使紛争は増加し、倒産に追い込まれた企業も出ている。しかし、2003年の労使紛争発生件数は2524件減の9869件で、初めて10000件を下回っており、2002年と比較して2524件減少している。また、紛争当事者も25031人で20.37%、72489人が減少している。

行政院労工委員会(CLA)の統計によると、労使紛争の主な原因は、労働協約、賃金、労働災害、退職、外国人労働者、労働保険、管理、福利厚生、年末賞与、労働時間があげられる。その内訳は、前年(2002年)と比較して、労働協約紛争が21.65%減の5252件、賃金紛争が22.14%減の4026件、労働災害紛争が10.3%増の785件、退職紛争が26.42%減の429件、外国人労働者紛争が13.51%減の288件、労働保険紛争が25.89%減の272件、管理紛争が56.42%減の112件、福利厚生紛争が46.15%減の98件、年末賞与紛争が43.04%減の45件、労働時間紛争が48.86%減の90件であった。

労働災害紛争については、2000年に850件という過去最高の紛争発生件数を記録して以来、その後3年にわたり減少していたが、前年より増加していることは注目に値する。この特殊な現象は、現行の制度もしくは戦略の見直しを図る必要性を示すものである。

さらに同統計によれば、2002年と比較して、2003年に発生した労働組合紛争は50%減の4件となっている。労働組合法、団体交渉法及び労使紛争解決法を含むいわゆる労働3法については、立法院で改正手続を進めているとはいえ、2002年の労働組合組織率38.44%を維持する労働組合制度の運用改善が進んでいることを示すものである。

再び労働協約をめぐる紛争に目を向けると、主な争点は、労働者に対する退職金支払に焦点を当てた会社・工場閉鎖又は操業規模の縮小に関するものである。賃金をめぐる紛争の主な争点も給料未払いにあった。さらに同統計によれば、労使紛争は人口が少ない地域ではなく、主に人口密集地域で発生している。特に、台北市と人口の多い地域に集中している。

紛争解決方法を見ると、紛争の約46%は正式な仲裁を通じて解決されており、約11%が融和的方法によって解決されている。その合計が57%であることから、労使双方の合意によって解決された紛争が過半数を占めていることになる。

現行の「労働争議解決法」によれば、労使間の調停を処理するための仲裁・調停手段は、紛争を解決する上で最も実際的で現在も多用されているものとして、法で認められた裁判外紛争処理しか残されていない状況にある。統計によれば、1999年から2003年にかけて、労使双方の合意によって解決した紛争は7700件であるが、調停手段を利用して解決した紛争は1665件にとどまっている。

2003年には、地方及び市当局の仲裁・調停チームが処理した民間企業の労使紛争は5965件、行政機関が処理した労使紛争は4651件であった。

そのような状況を受けて、CLAは、労使双方の合意によって紛争を解決する多角的な手段を確立し、労使紛争の発生件数を減らし、労使双方の合意による紛争解決件数を増加させるために、仲裁・調停チームの人材を労使関係に活用する予定である。

労使紛争の解決を目的とする調停制度を効果的に活用するために、CLAは、調停機関に対する追加資金を本年度予算に計上する予定である。その資金の目的は、調停の質の向上を図り、労使双方による自発的な紛争解決を促すことにある。

統計によれば、台湾の労使紛争の大半は調停を通じて解決されている。その要因は、労使紛争の多くが権利に伴うわずかな金額を争点としていることに加え、そのような労使紛争に適した法的調停制度の効率性と弾力性にある。調停成功率の向上を目指し、CLAは、調停制度の効果を最大限に発揮させるために、非政府機関に対する追加資金を臨時計上する計画も予定している。

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