急がれる少子化への政策対応

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  • 国別労働トピック:2004年11月

内政部が最近発表した「国内統計月報」によると、台湾における人口1000人当たりの出生率は、年々減少を続けて、少子化対策が喫緊の課題となっている。昨年(2003年)ついに過去最低を更新した後もさらに減少を続け、今年の6月末には1000人当たり9.74人を記録した。これは世界的に低い出生率であることから、政府当局は将来の人材開発や教育政策に強い懸念を示している。

特に台湾には150校以上の大学が存在するため、私立大学の学長を中心とするこれらの高等教育機関のリーダーは、将来の生徒数減少に不安を抱いている。

国民健康局(BHP)では、低下し続ける出生率に対する措置として、主管当局である内政部が出生率向上の詳細な方法をまだ示していない中で、出生促進のための諸政策を計画中である。

地元の新聞によるとBHPの局長は行政院(内閣)での最近の定例会議の中で、子供をもつという考え方の奨励やより多くの子供をもつことができる環境作りのために、衛生署が今後3年間で8400万台湾元を促進政策に充当する計画であると報告した。この計画には、病院内の医療関係者が関係当事者を支持し、上記の考えを普及するよう協力を求めている。

この政策では、20才から30才までの若い独身男女の結婚を奨励することを第一に考えている。現在の出生率低下の問題は、男女の結婚年齢が遅くなり、多くの人が生涯独身を選択する風潮によるものであるとBHPは見なしている。しかしながら、実際この風潮が強まったのは教育期間の延長、職場での競争激化、台湾社会の若者にとって生活の負担が増えたこと等の客観的要因に起因することも指摘される。さらに、もうひとつの理由として、現代のように知識経済が進むことで、教育と雇用の面での男女平等がうまく確立し、多くの女性が容易に高い地位と給料を維持できるようになったことがあげられる。すなわち、台湾では、これにより女性がますます裕福になり、多忙になり、男性に依存しなくなった結果、結婚に対しより慎重になったのである。概して若い世代は明らかに個人主義になり、家族の絆よりも自分の生き方により関心を払うようになったと指摘できる。従って、政府機関が出生率向上計画や促進政策を講じる際には、晩婚や生涯独身を通す男女が増えている実態の要因を一層しっかりと把握し抑制していくことが重要である。

台湾の出生率減少への対策は、多くの先進国が既に採用したように、夫婦に対し早期により多くの子供をもつよう奨励することが需要である。

少子化は、近年の「子供のいない共働き夫婦」(DINKS)の流行によるものとBHPはみているため、当局は若い世代に対し「女性は第一子を30才まで、第二子を35才までに出産するのが良い。」と勧めている。この出産を奨励する年令は、シンガポールをはじめとする他の国と比較すると5年遅い。しかし、実際DINKSと称される考え方は一要因にすぎない。前述した理由により遅く結婚した後は、夫婦が第一子と第二子をもつ年令に全く影響を与えないと思われる。一般的に台湾では、特に晩婚の場合、結婚後すぐに子供をもつことは、夫婦、親、祖父母をはじめとする家族の中で非常に重視されている。従って、若者が早期に子供をもつことが容易な環境作りを行い、整備することが重要である。

子供の数は、出生率減少により、国内統計月報によると2004年6月現在、一世帯あたりの平均家族数が3.18人となった。すなわち、これは一組の夫婦の子供の平均数が2人を上回らないことを意味する。このことは必然的に人口減少をもたらし、人的資源、ひいては国全体の労働力に影響を及ぼす。

内政部が示した家族計画のスローガンは、「子供二人はちょうどいいが、子供一人も少なくはない。」から「子供二人はちょうどいいが、子供三人は多すぎない」に変更された。

しかし、台湾政府は、先進諸国が行っているような、独身者の結婚を促すための高額な住宅助成金、新生児に対する現金給付、乳児養護助成金、働く母親のための税金還付、育児休業の延長(例えば12週)、働く両親のための休暇の増加などの詳細な出生率向上政策を打ち出しているわけではない。

台湾が世界的に極めて低い出生率であることを考慮すると、政府が出生率向上促進をスローガンの宣伝活動のみに依存しているのは明らかに十分とはいえない。

体系的な出生率をあげるための全体計画を一日も速く立案し、この全体計画に基づき効果的であり詳細な出生率向上政策が着実に実施されることが期待される。宣伝活動の推進は、その第一ステップである。

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