ドイツの百貨店グループ「カールシュタット・クヴェレ」の事業再編

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年11月

ドイツ・エッセン市を本拠とし、欧州最大級の百貨店・通販チェーンをもつカールシュタット・クヴェレ社(売上高153億ユーロ(注1)、従業員約10万人)は、業績悪化に伴い9月27日に大規模なリストラクチャリング(事業再編)計画を打ち出した。同計画はドイツ国内の181店舗中、規模の小さい(8000平方メートル以下)77店舗を整理・売却するという厳しいもので、雇用面への影響が懸念された。同社従業員を組織するver.di(ヴェルディ、統一サービス産業労組)と同社中央事業所委員会は、雇用確保を最優先に会社側と交渉を進め、10月14日、29時間に及ぶ協議を経て、従業員側が賃金・手当面での一部削減を受け入れるのと引き換えに、会社側が向こう3年間雇用を保証することで合意が成立した。今後見込まれている5500人の職場ポスト削減については、企業内異動、アウトプレースメントなどを含めて雇用確保に努めるとしている。

カールシュタットはドイツ最大規模の百貨店チェーンで、70~80年代に急成長をとげた。99年には通信販売会社のクヴェレ社と合併し、欧州最大級の流通グループとなっていた。しかしドイツ国内の景気低迷、ディスカウントショップの台頭など消費傾向の変化などで経営が悪化、今年度上半期(1~6月)には、前年同期比6%の売上げ減少、3億4600万ユーロの損失を計上していた。各都市の繁華街に位置するカールシュタットの店舗は、地域経済や消費者の利便性と強く関わっており、この面での影響も懸念された。

今回の労使合意により、従業員は向こう3年間の雇用保証を得る代わりに、05~07年に予定されている賃上げを放棄することになった。ただし、業績が回復し株主に対する配当が復活された段階で、賃上げを再び実現するとしている。労働協約で定められた賃金水準を超える企業独自の上乗せ分は削除されるほか、休暇手当を商品券で支給するなどの措置が取られる。

経営側が打ち出していた小規模店舗の廃止・売却問題に関しては、対象となっていた77店舗のうち、10店舗は存続を見込めないとされ、残り67店舗について、「カールシュタットの名で営業を続ける限りにおいて」2007年末までの存続が保証されるとしている。経営陣は、この間にこれらの店舗の売却の可能性などを探るとみられる。これら支店の再編にあたっては、経営側は従業員の解雇ではなく、「受入れ可能な職場ポスト」の提案などを軸に、企業外派遣や企業を超えた転籍なども含めて雇用継続を図る。あらゆる手段を用いても雇用継続が不可能な場合に、はじめて解雇を検討するという。

ドイツでは、自動車会社のオペル(ドイツ国内従業員数3万2000人)で、親会社の米GM(ゼネラルモータース)が10月中旬に打ち出した1万人の雇用削減をめぐり、労使紛争が生じている。労働協約改定交渉中のVW(フォルクスワーゲン)でも経営側が人員整理の可能性に言及するなど、雇用をめぐる論争が激しさを増している。

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