収入低下で所得格差が縮小

カテゴリー:雇用・失業問題労働条件・就業環境統計

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  • 国別労働トピック:2004年11月

ブラジル地理統計資料院(IBGE)が、2004年9月29日に集計を終った2003年度ランダム調査によると、10歳以上の就労者の実質所得低下が、1996年以来続いており、特に高額所得者の収入がより落ち込んだ結果、低額所得者との所得格差が小さくなってきたことが判った。就労者の平均実質収入は、次の表のとおりで、1986年を頂点に低下を続け、1996年に回復兆候をみたが、それ以降また下降を続けている。この調査は全国13万3000世帯、38万4800人を対象にして行った。

就労者(10歳以上)の平均実質収入の推移

図:就労者(10歳以上)の平均実質収入の推移

出所:ブラジル地理統計資料院(IBGE)

労働党政権が誕生した2003年には、前年比で平均実質収入が7.4%低下し、1990年の19%低下に次ぐ大幅な低下となった。特に2003年は、低額所得者よりも、高額所得者の収入が大きく低下したために、就労者全体の所得格差を縮小する効果を生んでいる。就労者数を収入レベル別に、半分に分けると、低額所得者は2003年に4.2%の実質収入低下となったが、残る半分の高い収入を得ているグループは8.1%の低下となっている。過去10年間の変化を見るために、1993年と2003年の就労者数を収入別に10%づつ分けた分析によると、次の表のようになっている。なお1993年の実質平均収入は642レアル(約214ドル)、2003年は692レアル(約231ドル)(注1)となっている。

資料院では、過去6年間の就労者の平均収入低下の理由について、政府財政再建を目標とする緊縮財政の採用、インフレ再発防止政策、外債縮小努力により経済活動が低迷したことをあげ、これら政策の影響が、失業増加と収入低下となって、就労者に負担を強いたと分析している。特に2003年1月1日に就任した労働党政権は、大統領選挙にからんで2002年後半から、ブラジルの将来に対する国際的信用問題が発生したために、これを正常化しようと、緊縮財政を採用して、国際社会に対し、政府財政再建に取り組む姿勢を見せた。それ以外に危機を突破する手段はなかったと見る向きが多いのも事実だが、その政策結果が、2003年の労働市場にもマイナスとなって表れていることは否めない。

2003年に10歳以上の経済活動人口は1.9%増加しながら、就労人口は1.4%(1071万人)増加に留まり、必要な雇用を作れなかった。このために、1992年の公式平均失業率9.2%は、2003年に9.7%へ増加した。労働党政権は任期4年のうちに1000万人の新規雇用を創出すると公約している。2003年は失業増加のために、人口に占める就労人口は、前年の56.7%が2003年は55.4%に下がっており、労働市場は少なくとも2003年まで、好転の兆しを見せていない。

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