若年失業率が史上最悪の14.4%を記録
ILO(国際労働機関)は、8月11日に発表した若年者の世界雇用情勢報告で、03年の全世界の若年(15~24歳)失業率が、過去最悪の14.4%(約8800万人)に達したと報告した(図)。世界の労働力人口(15~64歳)全体に占める若年層の割合は25%だが、失業人口では47%と約半数を占める。若年層の失業人口の推移をみると、過去10年(93年~03年)で26.8%増加している。地域別では、中東及び北アフリカ(25.6%)、サハラ以南アフリカ(21%)、移行経済諸国(18.6%)の若年失業率が最も高く、先進諸国(13.4%)、東アジア(7%)で低い。このうち、過去10年間に若年失業率が低下したのは先進諸国のみで、全体的に上昇傾向にある。
一方、雇用は確保しているものの、1日1米ドルの貧困ライン以下の生活を強いられる若年就業者は、1億3000万人で、世界全体(5億5000万人)の4分の1を占める。こうした若年貧困層は、インフォーマル部門を中心に、長時間労働、低賃金、非典型労働といった劣悪な労働条件を強いられ、ライフサイクルの各段階で貧困の悪循環に晒される可能性が高い。途上国のみならず先進国でも、高失業率を背景に若年層の貧困が拡大しており、短期雇用や非典型労働に従事する傾向が加速化している。
報告書は若年層の失業増加の理由として、1)学校から就業へのスムーズな移行過程の整備が不十分であること、2)世界的な不況による企業の採用手控え、3)若年層の離職率の上昇、4)進学率の上昇――などを挙げたうえで、「若年層への良好な雇用機会が限られていることが、若年層の家族への依存度を高め、非合法活動の上昇につながっている」と指摘。学校から就業への移行過程で、早期に良好な職業生活のスタートを切った若年労働者は、後になって長期失業に陥らない傾向が強い。また、失業を理由とする途上国の高学歴層の頭脳流失が、途上国の開発にもたらすマイナス影響にも言及。UNDP(国連開発計画)の報告によると、2001年にヨーロッパ諸国もしくはアメリカに移住したアラブ諸国の大卒者は、45万人以上に及んでいる。
ILOの推計では、若年層の失業率が半減すれば、世界全体で国内総生産(GDP)が少なくとも2.2米兆ドル(注1)(2003年時点の世界のGDP総額の約4%相当)増加する。このためILOは、若年者の就業困難の解消を緊急事態と受け止め、若年雇用への関与を強化している。グローバルレベルでも、コフィ・アナン国連事務総長の発案により、国連、世界銀行、ILOの連携で、「若年雇用ネットワーク」を設置。既にインドネシア、ブラジル等10カ国で若年雇用対策を含む国家行動計画を策定したほか、政策ガイドブックの開発や、技術支援・政策助言を実施している。
若年失業者数(千人) | 若年失業率(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
1993 | 2003 | % | 1993 | 2003 | % | |
世界 | 69542 | 88195 | 26.8 | 11.7 | 14.4 | 23.1 |
先進諸国 | 10441 | 8609 | -17.6 | 15.4 | 13.4 | -13.0 |
移行経済諸国 | 4399 | 5051 | 14.8 | 14.9 | 18.6 | 24.8 |
東アジア | 9288 | 11292 | 21.6 | 4.8 | 7.0 | 45.8 |
東南アジア | 4894 | 9989 | 104.1 | 8.8 | 16.4 | 86.4 |
南アジア | 13921 | 16963 | 21.8 | 12.8 | 13.9 | 8.6 |
ラテンアメリカ及びカリブ諸国 | 6568 | 9473 | 44.2 | 12.4 | 16.6 | 33.9 |
中東及び北アフリカ | 5962 | 8172 | 37.1 | 25.7 | 25.6 | -0.4 |
サハラ以南アフリカ | 14068 | 18646 | 32.5 | 21.9 | 21.0 | -4.1 |
出所:GET Model 2004
注
- 1米ドル=110.13円(※みずほ銀行ウェブサイト
2004年10月4日現在)
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