教員給与引き上げに関するデモ
2003年10月29日、全国から集まった約3000人の教員が、給与引き上げを求め国会議事堂周辺を行進した。先に文部省が閣議に提出した教職員の昇給案が高すぎるとの理由で、成立が見送られたため、デモに至った。
教職員昇給案の内容
今回の案では、若年または経験の少ない教員の給与体系を底上げすることが柱に教員の低い給与水準を是正することが中心となった。デモ当日は、全国から約3000人の教員が6万人分の教員署名を携え、国会議事堂周辺を行進した。教員たちは初任給の大幅な引き上げと、給与の上限の規制を緩めるよう訴えた。
タイにおける教員資格の取得システムは日本と異なり、教員免許は4年制大学卒か、またはラチャパットと呼ばれる教員養成大学(2年制)卒の学生に受験資格が与えられ、試験合格後、月額6360バーツという相対的に低い給与の訓練期間(4年間)を経て、正式な教員となる。
今回の昇給案では、訓練期間を5年に延長し、訓練期間の給与を7780バーツに、またベテラン教員の給与も上限を5万7190バーツまで引き上げること、そして職能手当として5600~1万3000バーツ、各種手当を3500~1万3000バーツ支給すること、などが盛り込まれていた。
昇給案見送りの最大の理由は、昇給額が高すぎるという点で、初任給の適切額は7000バーツ程度であろうと関係者は述べている。
教員給与の低さ
タイの場合、公立学校の教員は国家公務員であり、公務員法に基づいた給与水準が適用される。2002年の新卒初任給である6360バーツ(注1)は、民間の企業などと比べて低い水準となっている。参考までに2001年某日系企業の大卒新卒者の初任給は1万7000バーツ、初任給を含めた全従業員の平均月額賃金は、全体平均が6971バーツ(バンコクは9700バーツ)、製造業は5906バーツ(同7092バーツ)、国営企業は2万2000バーツ(同額)、建設業が8200バーツ(同1万2000バーツ)、サービス業が9000バーツ(同1万バーツ)となっている(労働社会福祉、Year)
政府の反応
この法案が見送られた後のインタビューでチャチュロン副首相は、「教員の給与は(年功序列的に)自動的に上昇していくべきではなく、評価制度に基づいてなされるべきである」と述べている。
タクシン首相はこの問題について、教員の給与が一般的な公務員よりも高いことは望ましいが、教育行政にかかわる公務員は、その他公務員と同水準であるべきだろうとの見解を示し、教員給与の引き上げそのものには合意の意向を示している。
一方、シリコーン教育副大臣は、以前から長い間議論となっていた昇給の問題を、再び先送りにしたことに不満の意を表している。
注
- 1バーツ=2.73円(※みずほ銀行ウェブサイト
2003年12月22日現在)
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