中国共産党第16期中央委員会第3回全体会議、失業問題と社会保障制度に対する政策強化を決定

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  • 国別労働トピック:2004年1月

2003年10月11日から14日まで、中国共産党第16期中央委員会第3回全体会議(三中全会)が、開催された。「就業機会の拡大」を経済発展における重要問題と位置づけ、労働市場の整備、起業の促進などが決定された。また、市場経済の発展に伴う労働収入の格差の拡大問題に関しては、合理的な収益分配制度の確立、社会保障制度の拡充が討議された。

なお、今回の決定には、今後、外資系企業の人件費に影響を与える可能性のある政策決定も若干見られた。

決定内容

失業問題と社会保障に関する主な決定内容は以下のとおりである。

  1. 就業政策の改革

    三中全会は、労働市場において、供給過剰の状況が慢性化し、失業問題が深刻化している現状を重要視し、就業機会の拡大を経済発展における重要問題と位置づけた。

    これを実行するために、今後の産業政策において、次のような労働政策を推し進めることを決定した。

    • 労働者を多く雇用できる、労働集約型の産業育成を重要視する。
    • 企業規模においては、中小企業の育成に重点を置く。
    • 経営形態においては、非公有制(注1)の企業の育成を重視する。
    • 就業形式においては、非常勤の雇用形式を多く採用する。
    • 労働者が、労働市場で有利に就職活動ができるよう、職業教育と技能訓練を重視する。
    • 供給過剰の労働市場であっても、使用者側に対して、労働者の合法的権益を順守するよう指導する。
  2. 企業収益分配制度の改革

    労働量・貢献度に基づいて報酬を分配することを原則とし、収益の分配秩序を整理し規範化する。特に、収益の分配において、収入格差が拡大している問題を解決する。

    共に豊かになることを目標にし、中等の収入の労働者の比率を拡大し、低収入層の収入水準を向上させ、過分に高い収入を得ている者に対しては調整し、非合法に収入を得ている者は取り締まる。

  3. 社会保障制度の拡充

    経済発展に呼応した社会保障制度体系を構築するよう次の点を重要課題とした。

1.各制度に対する政策

(基礎養老保険制度)

老齢年金掛金の労使双方からの徴収を徹底し、基金の積み立てを図り、その整備は次のように進める。

  • 基礎養老年金制度は、まず、都市部は市級、農村部は鎮級の行政単位で、労使の加入を促進する。
  • 市級の統一基金制度を完全なものにする。
  • 省級政府により基礎養老保険調整基金を設立し、徐々に省級の統一基金制度を確立する。
  • 条件的に許せば将来全国統一基金制度を実施する。

失業保険制度

失業保険金制度をいっそう健全化し、国有企業の下崗労働者の基礎生活保障を失業保険と並行して実施する。

医療保険制度

医療保険制度と医薬品流通体制の改革を並行して進める。

最低生活保障

都市住民の最低生活保障制度を改善し、合理的な保障水準を設定する。

養老、失業、医療保険制度の加入者数

出所:労働社会保障部

2.総合的改革

総合的なものとしては、次のような決定をしている。

  • 党と政府職員、事業単位(注2)の各種社会保障制度の改革を推進する。
  • 各種社会保障制度の掛金徴収を強化し、加入率も高める。
  • 各種保険制度の基金管理を厳格化し、安全運用を実施する。
  • 企業の補助保険制度を実施する。
  • 農村の老後保障は、家庭を主とし、地域による互助、政府による救済制度を結合させて実施する。条件が合う農村は、最低生活保障制度を実施する。

今回の決定に対する分析

今回の決定の特徴をまとめてみると次のような点が挙げられる。

  • 一般労働者のなかには、党と政府が社会主義国家という看板を掲げているにもかかわらず、労働者の収入格差が急速に拡大していることに対し不満を抱いている者も多い。しかしながら、この問題の是正に対して、従来通りの見解が繰り返されたものの、一歩進んだ明確な政策決定はなされていない。
  • 下崗労働者、失業者、新規労働者、出稼ぎ労働者の参入による労働市場の供給過剰対策の重点を、中小企業の育成と労働者自身の起業に置いている。
  • 社会保障の諸制度の中で、運営に問題があり労働者からの不満が高まっている医療保険制度の解決策として企業による補助保険制度を提案している。これは、労働者の高額医療費に対する企業自身による補償制度の創設を意味し、今後、外資系企業は、労働者の医療費の支払いに関して、負担増を強いられることが予想される。

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