中華総工会、第14回全国代表大会を開催

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中華総工会は、2003年9月22日、第14回全国代表大会を開催した。大会では、過去5年間の活動内容を総括するとともに、今後5年間の重点事業方針を決定した。

王兆国会長は、胡錦涛総書記が情報公開の促進を指導しているのを受け、財務内容の大枠を公開した。この結果、今後、中華総工会の財務内容を従来より明確に把握できるようになりつつある。

1.過去5年間の総括

(1) 事業内容

重点事業の内容や評価について以下のとおり略説する。

  1. 政策立案過程への参与

    近年、中華総工会が、共産党との「親密な関係」をあまりに重要視したがために、工会会員(組合員)からは、体制寄りという批判が多く上がっていた。このため、中華総工会は、中国共産党との強い信頼関係が、労働者に対してプラスに働くように、「源頭参与」という、政策立案過程への参加を重要視することにより、従来批判を浴びた、「官製の組合」、「末端労働者に冷たい組合」という批判をかわす方向に打って出た。各級の総工会は、各級政府の重要政策決定、事業計画などに積極的に参加し、労働者に有利な政策が作成されるよう努力し、この戦略は労働者に一定の評価を得た。

  2. 労使関係の調整

    総工会は、労使関係の調整において、労働者代表大会制度、所属単位(注1)の業務内容公開制度、労働者監事制度などを通じて、労働者の経営への参加を主張してきた。

    また、労使平等協議制度、集団労働契約制度、労働争議処理制度、工会労働法律監督制度を通じて、工会が、労働者を代表していることを社会的に印象づけた。

  3. 内容のある労働者保護事業の実施

    下崗労働者のための最低生活保障事業と再就職先斡旋事業、並びに、一般労働者のための養老保険制度、医療保険制度、失業保険制度、労働災害保険制度に対する政府の立案過程に参与した。また、赤字・倒産企業における未払い賃金問題の解決に重点的に取り組んできた。単独又は他の組織と共同で、生活苦の労働者を対象とした救済センター、職業紹介機関、技能研修機関を設立した。このうち、再就職先の紹介事業は、かなりの成果が上がったとみられる。生活困難な労働者に対する電話ホットライン制度は、春節期間中(注2)も実施された。労働者互助合作保険制度は、労働者を貧困から救済するものとして好評だった。

    また、特別に生活の苦しい労働者に対し、工会が金銭、物品の援助を実施する「送温工程」と呼ばれるプロジェクトがほぼ制度化され、総工会のイメージアップに効果を上げた。

  4. 新会員の開拓

    この5年間で、総会員数は、9000万人から1億3400万人に増加した。これは、郷鎮企業、外資系企業などに対する組織化を強力に推し進めた結果といえる。

(2) 財務内容

今回、中華総工会は、財務内容の大枠を公開し、社会的に注目を浴びた。

  1. 全総工会本級の収支基本状況

    1998年から2002年までの全総工会本級(中華総工会を指す。)の収入は、22億7719万7000元だった。このうち、各級(産業部門別の総工会及び各省別総工を指す。)の工会が全総工会本級に納入した資金は22億2611万4000元、事業収入が121万3000元、投資収益が1407万9000元、その他の収入が3579万1000元だった。

    支出状況は、全総工会本級の総支出が、22億6965万3000元で、このうち各級の工会に対する補助事業金が12億2773万5000元で、総支出の54.1%を占めた。この補助事業金の内訳は、運営補助金が6億9112万1000元、特定事業補助金が4億796万1000元、その他の補助金(注3)が1億2865万3000元だった。そのほかには、全総工会本級直属企業への支出が2億1374万4000元だった。全総工会本級の本部経費は8億2817万4000元で、総支出の36.5%を占め、内訳は、機関運営費(会議費を含む)が2億3162万4000元、渉外費4372万4000元、特定事業費7755万4000元、特定資金支出3億4940万3000元、その他の支出が1億2586万9000元だった。

    貸出事業を見てみると、5年間に、全総工会本級が各級工会に貸し出した総額は4億6373万元、各級工会からの償還金額は4億9941万4000元だった。

    5年間に、国家財政部門、政府財政部門から交付された補助金総額は4億4024万9000元だった。内訳は、全国総工会組織直属の事業単位に対する養老保険費が9486万2000元、退職労働者のための療養・福祉費が2億2794万元、中国工運学院改修費及び留学生楼建設費4638万元、労働模範大会と「送温工程」関連の費用が2993万元、全国総工会楼建設・改修費用2210万元、全国総工会の直属事業単位住宅修理・改築、家賃補助費が421万9000元、住宅建設積立補助金が453万6000元、住宅購入補助金が125万元、公費医療補助金が446万8000元、副食補助金が96万4000元であった。

    工会の収入源を見てみると、会費収入が63%を占めた。5年間で、年平均5.9%の伸びを達成した。会費収入金額が増加した背景には、次のような要因があるとみられている。

    • 各地方総工会だけでなく、共産党や政府も、会費の未払い単位に対し、工会法の規定を順守し支払うよう指導した。
    • 各地方総工会は、財政、銀行、税務部門に働きかけ、各単位の予算に工会経費を算入させるとともに、納税過程で会費の支払い状況を把握できるようにした。
    • 工会会費を未納又は拒絶している単位に対し、模範労働者、メーデーでの労働者への各褒章や、模範労働者の住居取得などの申請を拒絶するなど、従来より強い態度をとった。
    • 基礎工会が、社団法人資格を申請する時に、会費を納入していることを必須条件とした。
  2. 財務内容公開の背景

    今回、中華総工会が財務内容を公開できるまでに制度化したのは、独自の政策判断というより、1990年代末期の江朱体制における、各単位に対する財務制度改革への指導に基づいたものである。中華総工会は、1999年より「工会予算管理方法」、「工会会計制度」、「基礎工会経費使用管理方法」、「工会事業単位財務制度」、「工会事業単位会計制度」などの制度面の規範化を進め、会計制度を整備した。

    また、市場経済化が進むにつれて、総工会自身も、スーパーマーケットなどの小売業、マンションなどの不動産業を手がけるようになり、財務・会計制度に対する意識が高まったことも影響している。

2.今後5年間の事業計画

今後の5年間の事業展開について見てみると、次のような事業は、引き続き実施される。

  1. 国有企業の下崗労働者、失業者などへの生活保護と再就職の斡旋事業。
  2. 労働者の高額医療費の支払いに対する互助制度の創設(注4)。特に、国有企業の退職下崗労働者対する保護政策。
  3. 会員数の増加を目指し、新興企業、外資系企業などにおける工会の組織化。
  4. 会計・監査業務の規範化と公開制度の促進。
  5. 独自事業の展開による会費・政府補助金への高度依存財務体質からの脱却。

このなかで、工会の組織化の拡大、会員数の確保は、現在の政治的影響力を保持するうえでも、良好な財務内容を維持するうえでも極めて重要な問題である。1990年代、国有企業がリストラを進めるなかで、中華総工会は会員数の減少問題に悩まされた。今後も、経営不振の国有企業の閉鎖、人員削減は進むと予想される。新興企業や外資系企業の経営者や労働者は、工会による組織化を嫌う傾向がある。

工会の組織化の拡大、会員数の確保において、地方の郷鎮企業と都市への出稼ぎ労働者の組織化が重要になると予想されている。このことには、1978年から2000年にかけて、都市数が193から663に、鎮数(注5)は2173から2万312に増加しているという社会的背景がある。農村から都市に移住した農民労働者は、全国に9400万人存在し、今後、毎年500万人前後増加すると推計されている。こうした労働者は、徐々に労働者としての権利の主張と権益保護に対する関心を強めてきている。中華総工会は、比較的就労条件や労働環境が悪く現状に不満を抱いているこうした労働者を保護することにより、会員の増加を図るのではないかと予想されている。

都市就業人口

出所:労働社会保障部

  1. 日本の地方の小規模都市あるいは町に当たる

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