好調なタイ経済とバンコク最低賃金の引き上げ

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  • 国別労働トピック:2003年11月

バンコクの最低賃金審議委員会は、9月8日、バンコクの最低賃金を現行の169バーツから171バーツ(1日8時間労働に対する賃金額)へ2バーツ引き上げることに合意した。この決定は、中央最低賃金委員会へ上申され、審議を待つ。中央最低賃金委員会の改定決定は、労働省の布告の官報告示後に実施となる予定である。

タイでは、2003年1月1日に大規模な最低賃金の引き上げが行われ、バンコクもそれまでの165バーツから169バーツに最低賃金が引き上げられたばかりである。最近では、8月20日の中央最低賃金委員会で、実施には至らなかったものの46の地方の最低賃金審議委員会から、1~5バーツ程度の最低賃金引き上げ案が提出されるなど最低賃金引き上げへの動きが活発化している(その他の28の地方は、海外投資の低下を懸念したため、最低賃金の引き上げの提案はしていない)。

今回注目されている首都バンコクの最低賃金引き上げ合意の背景には、タイ経済の順調な発展と景気の安定回復がある。

7月31日には、タイ中央銀行が返済計画から2年の前倒しでIMFからの122億9600万ドルの借金を完済し、タクシン首相は、マスコミを通じてタイ経済の立ち直りとIMFからの自立を強調した。

また9月15日には、国家経済社会開発局(NESDB)が、2003年第2四半期(4-6月)のGDP成長率を、市場の予想をはるかに上回る前年同期比5.8%と発表している(表1)。懸念されていたSARSの影響がホテルや観光部門など限定的であったことから2003年の成長率見通しは、これまでの前年比プラス4.5~5.5%から5.8~6.2%

表1
  2003年
第1期(1~3月)
第2期(4~6月) 上半期
<生産部門>
農業 6.5 4.1 5.4
非農業 6.7 5.9 6.3
製造業 11.2 11.0 11.1
 電気・ガス・水道 5.2 5.6 5.4
建設 -6.3 0.6 -2.8
卸売・小売業 4.6 3.9 4.3
運輸・保管・通信 6.9 1.2 4.1
ホテル・レストラン -2.6 -13.9 -7.9
金融仲介 6.9 11.8 9.4
その他 2.9 3.6 3.2
<支出部門>
個人消費支出 6.5 6 6.3
政府消費支出 -5.8 4.6 -0.7
投資 6.7 8.6 7.7
民間 18.7 16.2 17.5
政府 -20.1 -8.5 -14.2
輸出 12.0 2.0 6.9
14.3 9.4 11.8
サービス 3.4 -29.9 -12.7
輸入 12.2 0.7 6.2
13.7 3.3 8.2
サービス 5.1 -12.7 -0.4
国内総生産(GDP) 6.7 5.8 6.2

に上方修正された。

バンコクの最低賃金の引き上げは、以上のような好調な経済発展が背景となって合意されたが、タイの国内通商局(Internal Trade Department) はこの最低賃金の上昇が、価格の値上げや急激なインフレーションにつながらないよう、警戒を続けている。

今後、中央最低賃金委員会でバンコクの引き上げが正式に認められれば、他の首都圏にある県も追随してくる可能性が高い。

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