タイ国内でアウトソーシング増加

カテゴリー:非正規雇用

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  • 国別労働トピック:2003年11月

成長する人材派遣業

労務管理の複雑化が進むなか、企業が人材派遣業者を利用して労務管理の簡単化やコスト削減を図る傾向が見られる。多くの企業では、新規の採用や新入社員への社内教育、退職にまつわる様々な負担を軽減するために、すでに教育された短期契約ベースの派遣労働者の労働力に依存しているのが現状である。

この現象は、タイの近視眼的な労働雇用法の性質に問題があるためであると指摘されている。同法では基本的に硬直的な性質が問題視されており、特に労働時間や、企業の合併後の賃金設定(基本的に合併後も賃金は現状維持が原則)、高すぎる退職金などが企業側から不満な点として挙がっている。

そのため企業側はこれらの問題を解決するために、人材派遣を通じた労働力の外部依存を行っている。企業は、人材派遣会社に希望する労働者数を申請すると、依頼を受けた派遣企業がリーダー格となる派遣社員を決め、正社員と同様の仕事を行うその他大勢の派遣従業員を統率する役割を担わせる。リーダー役の派遣社員はいわば依頼主の経営者の代理としての役割を果たす。

依頼主は、大勢の派遣社員の福利厚生や社員教育などの心配をする必要もなく、一括して派遣業者に支払いを行うだけで労働力を確保することができる。派遣業者は、依頼主から派遣従業員分の給与額とその額の10~12%を手数料として受け取り、利益を得ている。

このようなシステムを導入することにより、依頼主である企業は労務費の大幅な削減を図ることが可能となり、人件費を抑えた分で、実力を持った正社員に対して適切な報酬を支払うことが可能になる。

弱まる労組の力

しかし労働者側からの視点で見た場合、問題点も浮上する。下請け企業(人材派遣会社)から派遣された労働者は組合に加盟できないため、企業内の労組は正社員の減少とともに規模を縮小せざるをえなくなる。タイの組織率は2.5%ともともと低いため、人材派遣業への依存は、組織率をさらに低下させる恐れがある。

また、組織化が進んでいない子会社の工場労働者を外注(派遣化)することにより、工場(または企業)の正社員数を減らし、労組の力を弱め、発言権が弱い持ち株会社へ転化する、そして最終的に閉鎖に持ち込む、といった方法がとられる危険性もある。

人材派遣業だけでなく、作業を在宅勤務化(内職化)する方法も進められている。在宅勤務者は、従業員ではなく独立した作業員であるため、労働法や社会保障法の範疇外にあり、企業は社会保障のコストを削減することができる。

近年タイでは、多国籍企業を含めた人材派遣業者の数が急増しており、上記のような問題点が今後顕在化するのではないかと専門家は見ている。

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