児童労働撲滅を目指す政労使の取組み

カテゴリー:労働法・働くルール労使関係

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  • 国別労働トピック:2003年10月

タイにおいて、児童労働撲滅のための政労使三者の協力と教育促進のための1日ワークショップが開催された。今回のワークショップでは、タイの児童労働の実態と原因を探り、今後問題の解決に向けて政労使三者に加え、NGOや市民が一丸となって協力し合う重要性が改めて確認された。

社会背景

教育は、ディーセント・ワーク(人間らしい仕事)を導くうえで重要な役割を果たす。しかしタイでは、特に農村部において、経済的困難から必要な基礎教育を受けることのできない子どもたちが多い。タイの法律では、12歳以下すべての子どもたちは無料で学校教育を受ける権利が保障されている。しかし実際には、制服代や文具代などの関連費用が発生し、貧困家庭にとって大きな負担となる。同時に子どもを重要な家計収入の担い手と考える認識の問題もある。そのため、多くの子どもたちが基礎教育を受けるという権利さえ奪われてしまっているのである。

政府の取組み

タイ労働省はILOと協力して、工場内に学校を設置し、労働者教育(児童、成人、性別を問わず)を促進するというパイロットプロジェクトを、2002年12月よりスタートさせた。労働省は、経営者に対し、基礎教育を受ける機会に恵まれなかった従業員のための教育施設を与えることを奨励しており、従業員は教育により知識を増やし、会社の生産性へのさらなる貢献が可能であると説明している。現在タイにおける労働力人口は、約3,200万人だが、その中で義務教育レベル以下か全く教育を受けていない労働者は少なくない。

労働組合の取り組み

労働組合側は、児童労働の問題は、主に政府の監視の目の行き届かない小規模なインフォーマルセクターで起こっていることを指摘したい。例えば、タイの地方には児童労働を行っている労働搾取工場が多く存在し、これらの工場の入り口は固く閉ざされていて外からは見ることができなかったり、廃屋や倉庫の様相を呈していたりする。しかし実際にはそこで多くの子どもたちが働いている。現在バンコクの最低賃金は169バーツ(海外労働時報2003年3月号参照)であるが、労働搾取工場の労働者は、成人でも最低賃金以下の賃金、児童労働者はさらに低い賃金しか支払われていない。工場内教育というのは望ましい政策であるが、労働組合側か見ると十分ではなく、この規模以上の従業員を育てるための労働者開発政策が進むことを希望する。さらに、まず政府が貧困を減らせなければ、児童労働問題は存在し続けるし、現状で最低限できるのは児童労働者のよりよい質の労働、健全な労働安全衛生、教育、訓練の提供等である。

経営の取り組み

タイ経営者連盟(ECOT)では、2001年度より2年間プロジェクトとしてILO-IPEC(児童労働撲滅国際計画)の協力の下、子どもたちのスキル育成支援、ECOT傘下企業の協力による徒弟制度プログラム、非行少年センターの更正プログラム等、様々な活動を実施してきた。ECOTがこれらのプロジェクトを通じて得た経験や教訓は、児童労働撲滅にとって最善の対処法は、政府、経営者団体、労働組合の三者の協力による取組み、同時に研究機関や教師、NGO、マスコミ、一般市民などのあらゆるソーシャル・パートナーとの取り組みということである。また、ECOTによって遂行された児童労働プロジェクトの結果が示しているように、経営者は、児童労働撲滅のために重要な役割や活動を行うことができることをECOTは強調している。

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