ジナ・フォーム社の労働争議が決着

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年10月

長い間労働争議が続き、国内外から注目を集めていたジナ・フォーム・ブラ社(香港資本)と企業内組合であるジナ・リレーション従業員組合が、2003年7月9日に労働協約の最終合意に達し、ようやく問題解決の運びとなった。調停役を務めてきた労働省とタイ経営者連盟(ECOT)の関係者らはひとまず胸をなで下ろしている。 

労使争議の解決に長い間尽力してきたECOTのシリワン・ロムチャットング事務局長は、今回の争議は、個人レベルの誤解、使用者側と組合側という組織レベルの誤解といったいくつかの誤解から生じたものだと説明している。そして、不信感やコミュニケーション・ギャップ、言語の壁、混乱・不満・怒りに対する不十分な対処といった諸要因によって、争議が悪化していったという。この深刻な状況を打破するために、ジナ・フォーム社はすぐにこの問題を政府・使用者団体側へ相談することによって事態の解決を図った。ECOTの話し合い重視の仲介方針は、加盟企業から高い評価を得ており、これまでも労使紛争などの問題を穏便に解決してきた実績がある。また、事務局長は、今回の解決はジナ・フォーム社の労働争議を解決したばかりではなく、タイに投資を行っている海外の投資家や企業からの信頼を高めた点でも重要だと述べている。

集団交渉で達した合意内容

争議の解決に際し、ジナ・フォーム社とスラッチ労働組合代表の連名で、以下の共同声明が出された。

  1. 年収、毎月の食事手当、毎月の住宅補助、精勤手当(給与としては計上されない追加的手当)を、2年間で50バーツ引き上げること。
  2. 経営側は労組に対して透明で適切な対応をとり、現行の労働法を厳密に守り、労組の活動に対して友好的な政策を維持することを誓約する。労組幹部は組合活動のために60日間は無給で休暇を取得することができる。
  3. 経営側が労組幹部5人を解雇するために提訴していた労働裁判所への訴訟を取り下げること。
  4. 経営側は、労働裁判所が組合員38人の復職を命じた判決に対する控訴を取り下げ、労働関係委員会の指示に従うこと。

争議解決後も残る問題

バンケン県にあるジナ・フォーム社は現在、1400人以上の従業員を雇用している(その大半は女性)。しかし今回の労働紛争で、同社は現在、顧客からの注文が全くない状態で、業務の一時停止を余儀なくされている。1400人の従業員は、業務停止中も労働保護法第75条に基づき、一定期間月給の50%が支給されるが、労組は、経営側が実は受注があるにもかかわらず業務を停止しているのではという疑惑を持ち、月給の全額支給が可能かどうか労働調査官に調査を依頼している。労組は、経営側が材料をタイの別の衣料工場に送っていると考えている。労働調査官は、労組にその証拠を提示するように求めているが、現在までのところ証拠は提示できていない。

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