国営航空機製造社、国鉄など、経営悪化で人員・賃金削減

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  • 国別労働トピック:2003年10月

ハビビ元大統領が代表を務めていた国営航空機製造会社ディルカンダ・インドネシア社は、資金難を理由に全従業員9670人のうち2000人の人員を削減する方針。工場も一時閉鎖し、生産を停止している。また、国営鉄道車両会社INKAも、財務悪化により従業員賃金を最大35%削減することを明らかにしている。

国営企業の経営難

西ジャワ州バンドンに本社を置く国営航空機製造会社ディルカンダ・インドネシア(DI)社は、7月11日、慢性的な資金難により全従業員9,670人の6カ月の一時解雇を発表した。同社は2003年1月より業績が急速に悪化し、工場の閉鎖は避けられないとしている。

同社の労務費(従業員の月給、交通費、水・電気・電話・食事手当など)は毎月350億ルピア(注1)に上っており、工場閉鎖で労務費を節約する狙い。

このような困難な状況のため、同社は政府からの財政支援を期待しているが、国営企業担当国務大臣は難色を示しているという。また、政府支援の条件として銀行再編庁(BPPN)が挙げているのは、政府の同社株式譲渡で管轄が財務省となることである。財務省側は、2003年度上半期の財政状況を考慮しながら検討を進めていくとコメントしている。

労組の主張

同社の労組は、経営側の決定がエドウィン社長の独断の決定であり、そのほかの経営陣にも伝えられていなかったことから「無効」であるとして、7月14日、工場前にて4000人動員のデモを実施。また一時解雇の間は給与支給だけでなく、食事手当なども支給することも要求していた。そのため途中、国軍兵が出動する事態となった。

その後州議会と経営側との協議、およびヤコブ労相が調停役となった労使間協議によって、7月16日には工場の一時再稼動が伝えられ、労組のデモは収まった。しかし労組側は、9000人の従業員に精神的苦痛を与えたとしてエドウィン社長を訴える方針であると述べている。

労相とハビビ元大統領のコメント

今回の、経営側が工場の一時停止を決定したことに関して、ヤコブ労相は、新労働法における労働者保護の観点から、(今回の工場停止のような)決定は、まず労使間で話し合いを行ってからなされるべきであったとし、経営側の行動が違法である可能性もあると述べている。

DI社の前社長を務めたハビビ元大統領(ドイツ在住)はSCTVとのインタビューにおいて、航空機製造業はまだ必要な産業であり、EUや北米、ブラジルやアジアに販路はあるとコメントした。そして同社の株式の売却については、資金難を打破するためには必要と話している。

国営鉄道会社も経営危機

一方、国営鉄道会社であるインダストリ・クレタ・アピ(INKA)のローズ社長は7月22日、長引く財政悪化のため2003年上半期に120億ルピアの純損失が見込まれていることから、従業員賃金10~34%を削減する案を盛り込んだ業務効率化計画を明らかにした。賃金カットの対象は全従業員、削減率は役員が34%、中堅社員が15~30%、作業員が10%となる見込み。また、就業時間を午前7~12時までの6時間に短縮することでコストを削減する方針だ。このような効率化計画は2003年6月から実施されていたが、目立った効果が見られていなかったという。

現在INKAの負債額は540億ルピアに上っており、返済期限を過ぎて、銀行側からの督促を受けていると伝えられている。経営悪化の理由として、乗車率の低下(40%程度)が挙げられている。

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