海外出稼ぎ労働者への事前研修再開

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:外国人労働者人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2003年9月

国内の高い失業率を反映して、増加する海外出稼ぎ就労者に対して労働・移住省は6月19日、2年前から廃止されていた海外渡航事前研修制度(PAP)が再開することを決定した。これは海外出稼ぎ対策の見直し方策の一環として行われる。

再開されるも1日のみの研修

労働・移住省の海外就労者派遣・育成局長によると、事前研修制度は以前にも存在していたが、2001年ワヒド政権下においてコストの増加や研修を行う団体の資金使途不明などの問題から、制度が廃止され現在に至っていた。研修の再開は、2003年第380号労・移大臣通達により明記されている。

増加する国内失業率と貧困問題などから、海外出稼ぎ労働者の数は増加の一途にある。2002~3年にかけては、マレーシアでのインドネシア出稼ぎ労働者の就労禁止令(詳細は本誌2002年4月号を参照)及び、イラク戦争、SARSなどの諸要因により、出稼ぎ渡航を自粛する傾向が見られたが、諸問題が沈静化したため、今後の労働者の流出も増加すると見込まれている。

研修は、1日8時間のコースとなっており、現地語での簡単な挨拶と共に、就労先での賭博・麻薬の禁止、現地でのトラブル解決方法などをアドバイスするということだ。

海外斡旋業者、政府に労働者保護を求める

また、民間の海外斡旋業者らは6月上旬から、ヤコブ労相に対して、海外出稼ぎ労働者への保護機関を設置するよう求めている。以前から、同様の機関の設置が各方面から望まれていたが、現実化にはいたっておらず、特に労働者からの不満は高かった。斡旋業者らは、アジア最大の出稼ぎ労働者の供給地であるフィリピンの事例から、渡航前の研修や、労働者保護機関の設置などを手本にするべきであると主張している。

この訴えを重く見たヤコブ労相は、保護機関の設置に同意し、設置に向けて準備を行っていくことを表明している。

出稼ぎ労働者、専門性が求められる

従来インドネシアからの出稼ぎ労働者の就労業種は、建設業、庭師、メイドなど技能を特に必要としない単純労働が殆どであった。しかし、近年の中東地方からの医療従事者、特に看護士への需要が高まっているため、インドネシアからもここ3年で約千名程度の看護士(殆どが女性)が出稼ぎ労働に従事している。出稼ぎ先の看護士の給与は国内の約5倍程度であり、高額な斡旋量を差し引いても、労働者にとっては魅力的な職業となっているようだ。多くの看護士は2年契約で中東、特にクウェートへの出稼ぎが多い。

ヤコブ労相は、EU諸国や中東からの医療従事者への高い需要を認識しているものの、インドネシア人の技術が十分でないという問題点もあるため、今後は医療従事者を含む、ITや金融といった専門家の育成制度への準備を進めていることを明らかにしている。

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