外資の懸念払拭を狙い、労使紛争解決支援組織を設立

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2003年9月

インドネシア経営者協会(Apindo)のソフィヤン会長は、インドネシアにおける労使紛争問題を緩和するための労使二者フォーラムを設立することを明らかにした。インドネシアの労使にまつわる悪いイメージを払拭し、外国直接投資を呼び込むことが狙いのようだ。

労使関係を円満に

同会長は、この二者フォーラムを「労使紛争への政府介入を最小限にし、双方からの意見を聞くことによって、問題を迅速に解決するような機関としたい」と述べている。

二者フォーラムでは、幹部をバンク・リッポーのモフタル理事やインド・フードのエバ社長といった大手企業の経営者に指名し、外国人投資家にも参加を呼びかける方針だ。

ソフィヤン会長は、労使紛争の多発というイメージを払拭し、外資系企業にアピールするだけでなく、もう一つの外資導入の阻害要因となっている「退職金に関する2000年第150号大臣令」を改正することにも力を尽くしていくことを明らかにした。

労使紛争解決法案、大幅な見直しの方針で労使が合意

労使紛争を速やかに解決する方策として打ち出された労使紛争経穴法案は、2003年4月にも成立が見込まれていたが、いまだに成立の目処は立っていない。6月末の労働・人口問題担当の国会第7委員会における労使の協議では、法案の全面的な見直しが労使での合意に達し、成立は更に延期する見込みである。今回の協議では、法案の内容に法的な基準を満たしていない点があり、司法専門家から指摘を受けているため、再度見直しを行うことが決定した。

従来労使紛争が起きた場合には、地方及び中央労使紛争解決委員会(それぞれP4D、P4P)を仲介させ、解決を目指してきたが、同法案では紛争処理はすべて新設される労働裁判所を介して行われることになっている。

外国資本の動き

近年の最低賃金の急激な上昇と、労使紛争多発のイメージから、外資系企業が生産を中国やベトナムに移転してしまうのではないかという経営界の懸念は大きい。日系企業で撤退を表明したのは、ソニーのオーディオ部門(2000年4月に大規模な労使紛争が発生。移転の原因は東南アジア域内の生産統合とされている。詳細は本誌2003年2月号参照)がある。日本からの直接投資の動きは下表の通りである。

また、同社は先に述べた既婚女性従業員への家族手当(児童手当など)の支給も行っていないという。

他にも、繊維・縫製産業に多い韓国系企業の数社が移転を計画していることが明らかとなっている(大韓貿易投資振興公社(KOTRA)幹部への6月2日付けジャカルタポストのインタビューより)。 韓国からインドネシアへの外国直接投資(FDI)は全体で8位、2002年には約3億7000万米ドルとなっている。韓国系企業はインドネシア国内に約230社、雇用者数は50万人と言われている。

中小企業に外資の下請け奨励

外国資本が減少する状況下において、外資系企業の雇用力はインドネシアにとって重要な意味を持っている。中小企業を支援する商工省のシトンプル局長は、同省が外資系企業からの下請けを奨励する制度を新たに設置することを表明した。インドネシア国内で外資系企業の下請けを行っている事業体は、労働集約的な部門の繊維・縫製・アパレル・玩具・製靴などの分野に多い。近年、同分野では外資の撤退及び下請け受注の打ち切りが相次いでおり、商工省が外資系企業と地元企業の調整役を行うことにより、受注減を食い止めて、雇用を確保していく方針だ。

表:インドネシアへの海外直接投資額(認可プロジェクト)(単位:10億ルピア)
Year JAPAN TOTAL %
1996 7,655 29,809 25.7
1997 5,416 33,128 16.3
1998 882 13,559 6.5
1999 644 10,892 5.9
2000 1,962 15,284 12.8
2001 759 8,981 8.5
2002 510 9,745 5.2

出展:Bank Indonesia

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