欧州委員会、職場における機会均等キャンペーンを展開

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年9月

欧州委員会は、2003年7月に人種・民族均等指令が、同12月に一般雇用均等指令が施行されるのを受けて、これら指令の内容や関連情報を広く提供する活動を開始した。
その一環として、欧州委員会はこのキャンペーンのためのウェッブサイトを作り、合わせて加盟国で実施された差別に関する調査結果を公表した。

キャンペーンの背景と内容

人種・民族均等指令は、雇用や教育訓練、商品・サービスの供給等における人種や民族を理由とする差別を禁止するものである。加盟国は、2003年7月19日までに同指令を遵守するために必要な措置をとらねばならない。さらに、差別の犠牲者に対し実用的かつ独立した支援・指導を行う機関を創設することも求められている。
一般雇用均等指令は、雇用と教育訓練分野での宗教や信条、障害、年齢、性的志向を理由とする差別を禁止するものである。加盟国は、2003年12月2日までに必要な国内法の改正・整備を行わねばならない。

この2つの指令については、新規加盟国に対しても加盟までに国内法の整備が義務づけられている。

このように2003年末までに2つの指令が相次いで施行されるため、欧州委員会はその実効性を高める目的で情報提供キャンペーンを開始したのである。

今回のキャンペーンは、「For Diversity . Against Discrimination」をキャッチフレーズに5年間にわたり展開される予定で、1年目の2003年は主に職場における差別に焦点を当て実施される。キャンペーンのためのウェッブサイト(http://www.stop-discrimination.info)では、指令の内容や差別に関する調査結果などの情報が提供されている。またEUと加盟各国レベルではソーシャル・パートナーやNGOからなる助言グループが設置され、これらを通じ各種セミナーやイベントが行われる予定である。

差別に関する調査結果

今回のキャンペーンの一環として実施されたEurobarometerによる差別に関する調査結果も、併せて公表されている。調査は加盟15カ国で実施され、職場や教育現場等での人種・民族、宗教・信条、障害、年齢、性的志向を理由とした差別の経験の有無や差別に対する姿勢などを問うものとなっている。

調査結果によると、回答者のうち実際に差別を経験した者の割合は非常に低かったが、差別を目撃した者の割合は高くなっている。すなわち、人種・民族を理由とする差別を目撃した者の割合は22%、学習障害・精神疾患が12%、身体障害が11%、宗教・信条が9%、年齢が6%、性的志向が6%となっている。

次に差別や嫌がらせを受けた場合の自らの権利を知っているかとの問いについては、3分の1強の回答者が知っていると答えた一方で、約半数の者が知らないと回答した。差別を受けた場合に苦情を申し立てると回答した者は全体の7割に達し、このうちの約80%が口頭により、37%が文書により苦情を申し立てると答え、そして22%が裁判に持ち込むとしている。

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